従来コモチイトゴケ Pylaisiadelpha tenuirostris とされていたコケは町の中でもよく見られる普通種ですが、これとよく似たコケにケカガミゴケ Brotherella yokohamae があります。
この2種のコケは、上に書いた学名では別属になっていますが、これまで同種とする見解や、別種だが同属だとする見解がありました(こちら:蘚苔類研究 8(8),2004)。 例えば平凡社の図鑑の編者である岩槻博士は両者を同種とされていたので、平凡社の図鑑にはケカガミゴケの名前はありません。
盛口満著「コケの謎-ゲッチョ先生、コケを食う」(どうぶつ社)に度々登場するキムラさんに、最近の見解を聞くと、町でよく見かける従来コモチイトゴケとされていたものは Pylaisiadelpha yokohamae で、従来コモチイトゴケの学名とされていた P. tenuirostris は山に多いということです。 前者をケカガミゴケと呼ぶべきなのかはわかりませんが、キムラさんは前者を「町のコモチイトゴケ」、後者を「山のコモチイトゴケ」と呼ばれていました。
両者の形態的な違いについては、Tan & Jia(1999)によると、P. yokohamae の葉はほとんど曲がらず真っ直ぐですが(こちら)、P. tenuirostris の葉の先端部は大きく鎌状に曲がっています。
以下は、2017.10.4.に奈良県の川上村でキムラさんに教えてもらった P. tenuirostris(「山のコモチイトゴケ」)です。
上は樹幹に着生している様子です。
上の写真の上が乾いた状態、下が湿った状態です。 上の写真でも葉の先端部が鎌状に曲がっているのが分かります。
葉は先端部がハイゴケのように曲がっているので、プレパラートはどうしても上のような状態になります。 翼部は明瞭です。
上は翼部の拡大です。
上は葉身細胞です。
【参考文献】
Tan B. C. and Jia Yu, 1999, A preliminary revision of Chinese Sematophyllaceae. J. Hattori Bot. Lab. 86:1-70
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