昨日はウスバゼニゴケ Blasia pusilla の無性芽や無性芽器を中心に書きましたが、今回は葉状体について書くことにします。
ウスバゼニゴケの葉状体は縁が細かく切れ込み、所々に黒っぽい斑点が見られます。 この斑点に見える部分はラン藻(ネンジュモ)が共生している場所であることは前に書きました(こちら)。 下はこの部分の断面です。
上の写真は上が背面で下が腹面です。 ラン藻が共生している場所は、下に膨らんでいます。 断面を作る時にラン藻が広がってしまい、少し分かりづらくなってしまいましたが、よく見ると、ラン藻を共生させる腔所があるようです。
ラン藻は核という構造を持たない細胞からなる原核生物です。 現在の細胞生物学では、光合成できるラン藻の一種が細胞内に取り込まれたのが葉緑体になったと考えられています。 つまりラン藻の大きさは、ほぼ葉緑体の大きさです。 上の写真でも、褐色の粒に見えているラン藻と、緑色の粒に見えている葉緑体は、ほぼ同じ大きさです。
なお、葉状体の断面を作ったついでに書いておくと、系統樹の位置からはウスバゼニゴケの仲間は葉状苔類のうちで最も初期に分岐したと考えられており、気室を持っていません。
上は葉状体を腹面から見ています。 中央の膨らみは徳利型の無性芽器のついている場所で、写真の右側にうっすらと、長く伸びた“徳利の首”が写っています。 濃緑色の部分は上で見たラン藻のある部分です。 薄い緑のいびつな形の膜状のものは腹鱗片だと思います。
下は背面から撮っています。 光を透過させていますので、腹鱗片もうっすらと透けて見えています。 問題は中央の膨らみです。 この膨らみは、上の無性芽器と似ていますが、背面に徳利型の無性芽器はありません。
透けて見える形からは、若い胞子体だろうと思います。 ちなみに、ウスバゼニゴケ科には雄器床や雌器床は無く、造精器は葉状体に散在することが知られています。
この部分の断面を作ってみたのが下です。
やはり若い胞子体のようですね。
(2018.10.3. 金剛山)
0 件のコメント:
コメントを投稿