2021-08-03

コエノスナゴケ?

 


 渓流に突き出た岩上にあったシモフリゴケの仲間(旧Racomitrium属)のこのコケは・・・

 新しく出た葉は光沢の無い緑色ですが、すぐに褐色になっていくようです。 葉は密につき、長さは 1.5~2mmです。

 葉は披針形で、中肋は葉頂に達していません。 葉先は尖っています。 葉先の細胞は透明尖にはなっていませんが、パピラはありません。 葉先付近の葉縁は不規則に鋸歯状です。 葉身上部の細胞は正方形~短い長方形です。 葉身細胞には、隔壁上にかぶさるようにこぶ状のパピラがあります。

 葉の基部の中肋は葉身部の縦ひだの間に枕生しています。 葉の基部の葉身細胞は長い矩形で縦壁は波状に肥厚しています。

 上は葉先から1/3ほどの所の葉の横断面で、中肋は薄く、2層のほぼ同形の細胞で構成されており、ガイドセルはありません。 葉縁は2細胞層です。

 平凡社の図鑑にあるRacomitrium属は大きく変化しています(こちら)。 以上の観察結果をいろいろなデータを寄せ集めて検討した結果、コエノスナゴケ Dilutineuron brevisetum ではないかと思います。 しかしこの和名は岩月(2011)の「日本産セン類の和名リスト(Ⅱ)」にはあるのですが、平凡社にも野口にもありません。 分布も分かりませんが、Racomitrium brevisetum のタイプ標本はサハリンですから、秋田県の標高650mにあっても不思議は無いと思います。

(2021.7.8. 秋田県 乳頭温泉郷 標高650m)

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