2025-09-28

ナガバノシッポゴケ

 写真はナガバノシッポゴケ Paraleucobryum longifolium でしょう。 上は8月下旬に長野県と新潟県の境にある雨飾山でY氏が撮影された写真を、左木山がトリミングしています。 分布は、平凡社では北海道・本州の高山帯となっています。
 この標本を、9月24日のオカモス関西の顕微鏡観察会で、Y氏から分けていただきました。

 平凡社によると、本種の茎の長さは5cmに達し、葉の長さも7~10㎜となっていますが、上の写真のものの茎の長さは約2cm、葉の長さは3~4㎜ですので、本種としては小形です。

 葉はやや幅広い基部から針状に長く伸び、少し鎌形に曲がっています。 中肋は太く、葉の基部で幅の1/2以上あり、中上部では葉身部の大部分を占めています。 翼部の細胞は大きく透明ですが、褐色の場合もあるようです。

 上は葉先付近を背面から撮っています。 

 上は葉先から少し下で、歯が丸まって溝状になっている同じ所をピントをずらして撮り、合成しています。 したがって、溝状になった所から少し腹面が見えていますが、写真の大部分は背面です。 これを見ると、葉の上部の背面には小歯がたくさんあってざらついていることが分かります。

 上は葉先から1/3ほどの所の葉の横断面です。 中肋は3~4細胞層からなり、葉緑体を含んだ細胞は中央と背面に各1列あり、他の細胞はほぼ透明です。
 下は葉の基部から1/4ほどの所の横断面です。 中肋部の基本的な細胞の配列は上と同じですが、葉緑体を含んだ細胞がとても少なくなっています。


2025-09-26

ホシガタチョウチンゴケ

 写真はホシガタチョウチンゴケ Mnium stellare のようです。 8月2日に京都府南丹市美山町で採集されたものを、9月24日のオカモス関西の顕微鏡観察会で分けていただきました。 茎の長さは約2cmあるのですが、葉は小さく、小形です。 基部には多くの仮根があります。
 雌雄異株で、和名は雄花盤の形からだと思います。

 上の左が雄花盤です。 雄花盤の下の茎には小さな葉がついています。

 上は雄花盤のついていない茎とその葉です。

 上は雄花盤の下の茎についていた葉です。 本種は乾燥標本を水に戻すと青緑色に変色することが多いらしいのですが、上の葉も、よく見られる蘚類の葉に比べると、少し青みが強いように思います。

 上は葉先付近です。 本種の葉の上部には単生の歯があります。 単生の歯はMnium(チョウチンゴケ属)としては例外的な存在です。

 上は葉の中央やや下の葉縁です。 葉縁には舷とは言えませんが、細長い細胞があります。 葉身細胞は六角形ですが、葉緑体が中央部に寄り、形が崩れています。 長さも平凡社では 25~35μmとなっていますが、上の写真では 15μm前後しかありません。 採集から2カ月近く経っており、弱ってきているのかもしれません。

 上は茎の横断面です。 中心束がよく発達しているのは Mnium(チョウチンゴケ属)の特徴です。

2025-09-22

変更のおしらせ

 これまで「ヒメスナゴケ?」と題して載せていた記事はチュウゴクネジクチゴケのようです。 書き改めました(こちら)。 

2025-09-20

アカモジホコリ

 地衣類(未同定)に混じって朽木上に育っているのはアカモジホコリ Physarum roseum の子実体だと思います。 子実体の高さは 0.8~1.1㎜、子嚢の径は約 0.5㎜でした。

 持ち帰り、翌日に見ると子嚢が頂から崩れ、胞子が散らばり始めていました(上の写真)。

 子嚢が崩れて内部がみえる子実体を拡大しました(上の写真)。 本種の子実体には軸柱がありません。 赤い小さな粒は石灰節でしょう。
 左下に見える白い糸状のものはカビの菌糸でしょう。 カビがついていたのできれいに取り去ってから撮ったつもりが、残っていたようです。

 上は柄の顕微鏡写真です。 胞子のようなものがたくさん写っていますが、変形菌のなかにはシスト(胞子状細胞)を含む種もありますので、写真のものがシストなのか、胞子がくっついているのかは分かりません。

 上は胞子と連結糸だと思います。

(2025.9.19. 箕面公園)

◎ アカモジホコリはこちらにも載せています。

2025-09-08

キヌタソウ

 小さな白い花をたくさんつけているのはキヌタソウ Galium kinuta でしょう。 アカネ科の多年草です。 本州~九州に分布します。

 葉は4枚が輪生しているように見えますが、じつは対生で、残りの2枚は葉の托葉どうしがくっついたものと理解されています。
 葉は3本の葉脈があります。

 花期は7~9月で、花冠は4裂、まれに5裂し、オシベは4本です(上の写真)。よく見ると柱頭は2つに分かれています。 果実は2個の分果からなります。
 和名は果実の形が砧(きぬた:布を柔らかくするためにたたく道具)に似ているところからと言われていますが、私的には「?」です。

※ 1枚目と3枚目の写真は 2025.8.18.に、2枚目は 2010.7.31.に、いずれも伊吹山での撮影です。