2020-01-30

キツネノオゴケ?

 川に沿った遊歩道の斜面に、オオトラノオゴケに似て、少し小さく感じたコケがありました。 念のため少し持ち帰ってそのままにしていたのですが、乾いた状態で改めて観察してみると、茎が細く長く伸び、全体が柔らかく、オオトラノオゴケとは異なるようです。 葉はオオトラノオゴケより少し細い印象がありますが、共通の特徴がたくさん認められます。
 オオトラノオゴケに近い仲間だと見当をつけて図鑑を調べたところ、検索表ではキツネノオゴケに落ちそうですが、種の解説を読むと、いろいろ違いが出てきます。 しかし他にぴたりと一致する種をみつけることはできませんでしたので、とりあえずキツネノオゴケ Thamnobryum alopecurum として公開し、間違っているようであれば、そのご指摘を待ちたいと思います。 なお、生育地ではオオトラノオゴケだろうと思っていましたので、育っている様子は撮っていません。


 上の写真全体が1本の細い茎でつながっています。 下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。


 茎には鱗片葉がついています。 鱗片葉は葉をそのまま小さくしたような形です。


 葉の長さは2~3.5mmです。


 上は葉を腹面から撮っています。 葉は中央が凹み、葉先付近には大きな歯があります。


 上は葉先付近を背面から撮っています。 中肋は背面に歯をつけています(上の赤い〇で囲った所)。


 上は葉の中央部付近の葉身細胞です。

(2019.12.28. 岡山県井原市)

2020-01-27

ハチヂレゴケ



 上はハチヂレゴケ Ptychomitrium dentatum でしょう。 岩上にありました。 上の写真は12月28日の撮影で、ほとんどの蒴は帽を被っています。 これを採集したまま放置して1ヶ月後に観察しようとしたところ・・・


 ほとんどの帽は外れていて蒴歯が見えていました。 帽がついている蒴も、壺が痩せて帽はブカブカで今にも取れそうになっていました(上の写真)。


 上は蒴柄基部の様子を見るために手前の葉を除去して撮っています。 2枚目の写真は同じ所から胞子体が2本出ています。 本種の胞子体は同じ所から1~3本出るようです。 蒴柄は赤褐色で、長さは2mmほどです。
 チヂレゴケのところやコバノヒダゴケのところなどに書いたように、Ptychomitrium(チヂレゴケ属)は雌雄同株(異苞)で、雄花序は胞子体の基部近くから生じた小さな枝の先につきます。 上の写真でも胞子体の基部の鞘の近くに何かありそうなので、その部分を拡大すると・・・


 雄花序は胞子体基部の鞘の下部から生じているようです。


 上は蓋(左)と帽(右)です。 蓋は帽の中にくっついていたのを外しました。 平凡社の図鑑には「蓋の嘴は蓋の径とほぼ同長」とありますが、よく似たコバノヒダゴケよりは短いものの、やはり嘴の方が長いようです。


 蒴歯は単列16本で、2深裂しています。


 上は胞子です。


 上部の葉縁には鋸歯があります。


 上は葉先付近の様子です。


 上は葉身細胞です。

(2019.12.28. 岡山県井原市)

◎ ハチヂレゴケはこちらにも載せています。

2020-01-25

コバノヒダゴケ(帽や雄花序を中心に)



 写真はコバノヒダゴケ Ptychomitrium wilsonii でしょう。 胞子の飛散が始まった時期のようで、外れかけの帽のついた蒴や、蒴歯が見えている蒴もあります。 ところが、蓋の見えている蒴がありません。
 2枚目の写真の中央右の蒴は、帽が外れかけていて、帽の切れ目からは蒴歯が見えています。 蓋はどこに?


 じつは蓋は帽の内側にくっついていて、ほとんどの場合、帽と一緒に外れてしまうようです。 上の写真は、左は帽の中から取り出した蓋で、右は蓋をくっつけたままの帽です(帽の裂け目から蓋が少し見えています)。 左端の小粒は花粉です。
 蓋にこんなに長い嘴があるのも、本種の特徴の1つです。


 上は濡らして葉を開かせ、手前の葉を取り除いて撮った写真です。 蒴柄の基部近くに赤褐色のものがたくさん見られます。 下はこの部分を拡大したものです。


 Ptychomitrium(チヂレゴケ属)は雌雄同株(異苞)で、雄花序は胞子体の基部近くから生じた小さな枝の先につきます。 赤褐色のものは雄花序だろうと見当をつけ、確認のためにその一つを取って、顕微鏡で観察したのが下の写真です。


 たくさんの葉に囲まれて、その中に何かありそうなのですが、よく分かりません。 そこで、手前の葉を何枚か取り除いて撮ったのが下の写真です。


 上の写真では、精子を出し終えて枯れたようになっている造精器がたくさん見えています。

 コバノヒダゴケは前にこちらに載せましたので、葉の様子などは省いたのですが、確認のため、再度蒴歯のようすを下に載せておきます。


 蒴歯は3~4裂していて、表面は細かいパピラに覆われています。 あちこちにある球形のものは胞子です。

上は胞子です。

(2019.12.28. 岡山県井原市)

◎ コバノヒダゴケの葉や蒴歯の様子などはこちらに載せています。

2020-01-24

フタバネゼニゴケの雌器托



 写真は雌器托をつけたフタバネゼニゴケ Marchantia paleacea ssp. diptera です。 多くの苔類の子器托は、未授精で胞子体が形成されない場合には発達しないのですが、Marchantia(ゼニゴケ属)は未授精でも雌器托を発達させるという特徴があります。加えて本種は、未受精の場合には雌器托の裂片は2枚だけが発達して、胞子体が形成されている雌器托とは異なる形態になるという特徴があり、和名の「二羽」はその様子からつけられています。
 写真は12月末に撮ったので、雌器托は枯れて褐色になっていますが、雄株が近くに無かったのか(本種は雌雄異株です)、見るかぎり全ての雌器托が二羽になっているようです。


 上は雌器托の表面を拡大したもので、気室や気室孔が確認できます。 この仲間の雌器托は胞子体と間違われる場合があるのですが、この様子を見ると、雌器托は基本的には葉状体と同じつくりであり、胞子体とは別のものであることが分かるでしょう。

(2019.12.28. 岡山県井原市)

◎ フタバネゼニゴケの葉状体腹面の特徴や杯状体についてはこちらに、胞子体形成が進行している雌器托の様子はこちらに載せています。

2020-01-23

蒴をつけたヒメミノゴケ


 たくさんの若い蒴をつけているヒメミノゴケ Macromitrium gymnostomum がありました。 上の写真は湿った状態で葉は開いていますが、ミノゴケのように葉先が腹側に曲がることはありません。


 上は乾いた状態で、葉は著しく巻縮しています。 ほんの少しですが、生長して膨らんだ蒴がありました。 蒴柄は6mmで、平凡社の図鑑では5~8mmとなっています。 以下、この蒴について観察しました。


 帽を外して観察しました(上の写真)。 蓋にも嘴があります。 Macromitrium(ミノゴケ属)の多くの種の帽には長毛が上向きにつくのですが、本種の帽には、縦ひだはありますが、毛はありません。



 蒴歯の様子を観察したいのですが、まだ若い蒴で蓋は外せませんので、帽のついた状態で蒴を縦に二分し、蓋と壺との境付近にピントを合わせて撮ってみました(上の写真)。 上の2枚の写真は、1枚目は蒴の内側から、2枚目は蒴の外側から撮ったものです。
 Macromitrium(ミノゴケ属)の蒴は内蒴歯を欠き、多くの種では16本の外蒴歯があるのですが、本種では外蒴歯も欠いています。


 葉は狭披針形で鋭頭、中肋は葉先に達しています(上の写真)。


 上は葉身細胞です。 細胞は小形で長さは 10μmに達せず、多くのパピラがあって暗く、細胞の輪郭ははっきりしません。

(2019.12.28. 岡山県井原市)

こちらでは本種の葉や無性芽について書いています。

2020-01-21

オオハナシゴケ


 写真はオオハナシゴケ Gymnostomum aeruginosum です。 和名を漢字で表すと「大歯無蘚」でしょうし、属名も gymno(裸)+stomum(口)で、どちらも蒴歯が無いところからのようです。 しかし上の写真のような蒴をつけていない状態では、同様な環境に育つニセイシバイゴケやサンカクキヌシッポゴケなど、たくさんの似た小さな蘚類との違いは、私には顕微鏡で観察しないと分かりません。 これらをルーペで、あるいはルーペ無しでも見分けることのできるKさんは、ほんとうにすごい人だなぁと思います。


 乾くと上のように巻縮します。 白い糸状のものについてはサンカクキヌシッポゴケのところで書いています。


 和名に「オオ」とついていて、たしかにハナシゴケ属の中では大きいのでしょうが、葉の長さは 2.5~3mmほどしかありません。


 葉は線状の舌形で、葉縁の反曲は見られず全体が平坦です。 下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。


 上の写真のあたりから葉先にかけての細胞にはパピラがあります。


 上は葉先付近です。 中肋は葉先の下で終わっていて、葉の先端の細胞は他の葉身細胞と同様にパピラがあります。

(2019.12.27. 岡山県西部の石灰岩地帯)

2020-01-20

ホソベリホウオウゴケ


 写真はホソベリホウオウゴケ Fissidens bryoides var. ramosissimus だと教えていただきました。 渓流近くの岩上にありました。 蒴は直立ですが、胞子を飛散させた後で、株はかなり弱っているようです。
 本種はエゾホウオウゴケの変種とされています。 基本種によく似ていて、違いは、基本種が雌雄同株(異苞)であるのに対し、本種は雌雄共立同株か雌雄混立同株ということですが、雄性生殖器官の様子は不明で確かめようがないのですが、基本種の分布は少し北に偏っているようです。



 葉は鋭頭で、上部の方が大きく、上の写真では一番大きな葉の長さは2mmほどです。 蒴は頂生です。


 葉の全周に1~3細胞列の舷があり、葉先で中肋と合流しています。


 上は上翼の葉身細胞です。

(2019.12.28. 岡山県井原市)

2020-01-19

サンカクキヌシッポゴケ


 写真はサンカクキヌシッポゴケ Seligeria austriaca です。 石灰岩地に生育する微小なコケで、上の写真も石灰岩の壁にくっついています。 環境省絶滅危惧Ⅰ類に指定されているのも、この 小ささ=見つけにくさ も関係しているように思います。
 上の写真では透明尖があるようにも見えますが、白く見えるのはほとんどが炭酸カルシウムです。 石灰岩地帯では雨水に溶けた炭酸水素カルシウムが、水の蒸発と共に空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとして残ります。 上の写真はかなり拡大していますので、新しい葉を除いて、細いものまで石灰でまぶしたように白くなっています。


 上は茎の横断面で、三角形をしています。 和名の「サンカク」は、この茎の様子や、この茎につく葉もほぼ3列につくことに由来します。 ただ、葉が3列についている様子は、実体双眼顕微鏡で観察していると何となく分かる場合もあるのですが、葉先は広がりますので、写真ではなかなかうまく表現できません。




 葉の長さは 0.5~0.7mm、葉先は鈍頭です。


 上は葉先近くです。 どこまでが中肋か分かりにくいのですが、中肋が大部分を占めていて、中肋では細胞が重なって見えています。 つまり、中肋上部は2細胞層です。

 (2019.12.27. 岡山県西部の石灰岩地帯)