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2023-01-29

ヒスイカズラ

 写真はヒスイカズラ Strongylodon macrobotrys です。 葉は3小葉です。 大阪市の「咲くやこの花館」によると、例年3月と4月下旬に咲くが、1月の開花は珍しいとのことです。 自生地はフィリッピンですが、森林の伐採などで自生のものは全滅寸前とのことです。

 じっくり見ればたしかにマメ科の花ですが、大きな総状花序や花の色からは、マメ科のつる植物とは思えません。

 ガクの歯は幅広く鈍頭です。 属名はギリシア語の strongylos(丸い)と odoys(歯)に由来し、ガクの形態にちなんでいます。
 コウモリ媒花で、オオコウモリが蜜を求めて竜骨弁につかまると、その重さで隠れていた雄しべと雌しべが現れてオオコウモリの頭に触れるしくみのようです。 これも共進化の例でしょう。

(2023.1.20. 咲くやこの花館)

2022-04-07

コケはなぜ美味しくないのか

 最近のコケブームで、コケを五感で楽しもうとする人も増えてきた。 講演会などでも「食べられるコケは無いのですか?」などと質問をされることも多くなった。 しかし、コケ(蘚苔類)は美味しくないどころか、たいへんまずい。 私の知る限り唯一の例外として、オオジャゴケは香りがよくて比較的大きいので、食べられるような調理方法が工夫されているが、加熱すれば香りは無くなるし、どうにか食べられる程度で、決しておいしいとは言えない。

2月上旬のオオジャゴケ

 美味しくない理由として、食害を防ぐためだとよく言われている。 小さな体で生長もゆっくりしているコケは、体内に美味しくない物質を蓄えることで身を守っているというわけだ。 しかしこの説は、進化的に考えると矛盾しているように思う
 陸上の植物は緑藻の一種から進化した。 コケはこの最初の陸上植物に近いものとされているが、その頃の陸上には動物はいなかった。 消費者である動物は、生産者である植物が存在しないと存在できない。
 食べる者がいないのに食害を防ぐ必要は無い。 物質を体内で合成するにはそれなりのエネルギーが必要となる。 エネルギーを浪費して無駄な物質を作る生物が生存競争で生き残れるだろうか。
 植物が最初に陸上に出現したのは約5億年前と考えられるが、陸上に適した生き方をいろいろ模索する中で、比較的早期に蘚苔類と維管束植物に分かれたと考えられている。 それから現在に至るまで、蘚苔類と維管束植物は、それぞれ独自の進化の道筋をたどった。
 生産者が行う生産は光合成による。 光合成に必要なものは二酸化炭素と水と光である。 大きな流れとして、維管束植物は維管束を通して水を上まで持ち上げることが可能になり、他の植物より上に葉を広げて有利に光合成をしようと、体を大きくする方向に進化した。
 生産者である植物が陸上に出現した後に上陸した消費者は何を餌とするだろうか。 餌とするものは、たくさんあって容易に得られるものの方が良い。 どんどん食べてどんどん生長し、どんどん子孫を残す種が栄える。 そして現在の地球上で最もたくさんの葉を茂らせている植物は被子植物である。
 進化の過程で、昆虫などはにおいや触感などで食べる植物が遺伝的にプログラミングされた。 そして我々は「味覚」という食べ物を選択する“道具”を手に入れた。 たくさん食べるには、食べる意欲も必要となる。 身の回りにたくさんあり、栄養となる植物に「美味しい」という感覚を持つことができるように進化した動物は生存上有利になるだろう。
 蘚苔類も独自の進化の道筋で、被子植物とは異なった物質を持つようになった。 その物質とは、陸上の強い紫外線の害を防ぐ物質、寒期に細胞内に氷の結晶ができないようにする物質、乾燥を防ぐ物質、光合成産物を貯蔵する役割をする物質など、蘚苔類の生活に必要な物質である。 そして、これらの物質は我々に「美味しい」という感覚を生じさせる物質とは異なっていた、ただそれだけのことではないだろうか。

(注意) 上の文章は何の科学的根拠もありません。 単なる思考の遊びです。

2021-05-02

葉を齧られたコツボゴケ

 昨日はいろいろ書きすぎたので、今日は昨日の補足を短めに。 

 上のコツボゴケは、茎頂部が齧り取られて無くなり、葉も中肋と舷を残して齧り取られています。 犯人は不明ですが、虫に取っては中肋や舷がそれなりに食べにくいものであることは分かります。

 コケはほとんど食害されないとよく言われます。 しかし未熟なうちに齧られた跡のある蒴はとてもよく見ますし、食べられた跡のある葉も時々見かけます。

 上はホソバオキナゴケですが、葉先か無くなっています。 刈り取られたように無くなっていますが、周囲の状況からして、草刈り機などによる人為的なものとは考えられません。 シカなどの草食動物がコケを食べることはあるのでしょうか?

 コケはリグニンが無いために高くなれないのですが、高くならないのも食べられることからの防御に役立っているのかもしれません。

2021-05-01

コツボゴケから吸汁するミドリハシリダニ科の一種を見て考えたこと

 上はコツボゴケの上を走り回るミドリハシリダニ科の一種です。 コケテラリウムのガラス越しに撮影しましたので、画像はイマイチですが・・・。 ダニは種類も多く、このダニは植物からの吸汁だけで人に対する危害は心配ありません。
 小さい体のわりには速く動きます。 胴体は黒色に近い深緑色で、肢が赤く、なかなか美しいダニなのですが、夏季には土に潜って休眠しますので、見られるのは春と秋です。 今年もそろそろ見納めです。
 体のつくりについてはこちらに載せています。

 コツボゴケの上をしばらく動き回っていましたが・・・

 上の写真の場所で動かなくなりました。 吸汁しているのでしょう。 口吻を差し込んでいる場所は葉の基部の中肋です。

 生態学的に見るなら、コケも緑色植物であり、地球上に有機物をもたらす生産者です。 消費者はこの有機物を見逃すはずはなく、実際にコケを食料とする生物もいろいろみつかりだしています。 このブログでも最近載せた記事ではクロミツボシアツバがありますし、上のミドリハシリダニもそうです。 しかし生産者も食べられるばかりではたまらず、何らかの防衛策を取るはずです。

 ここで話を大きく飛躍させますが、コケはなぜ小さく単純な体のつくりなのかを改めて考えてみたいと思います。 従来は最初に陸上に上がった緑色植物だからだと考えられてきました。 しかし化石で見られる最初の陸上緑色植物は、クックソニアなどの枝分かれした体を持つ前維管束植物です。
 最近になって、コケの胞子体には枝分かれを抑制する遺伝子が働いていることが分かってきたことをこちらに書きました。 つまりコケは自ら小さく単純化する進化の道筋を歩んだ植物である可能性も出てきました。 もしそのように進化したとするなら、小さく単純化するだけの何らかのメリットがあるはずですが、そのうちの1つとして、被食圧を減じる意味があるのではないでしょうか。

 上の写真の場合、ミドリハシリダニは吸汁する場所を探してウロウロしていました。 1層の細胞からなる葉からは、ミドリハシリダニのような小さな生物でも口吻が突き抜けてしまい、吸汁できないのではないでしょうか。 また、茎には口吻を差し込むことはできるでしょうが、差し込んでも維管束は無く、被害は差し込まれた周辺の細胞に限定されるように思います。 こちらではミドリハシリダニは造精器からの吸汁を狙っているようですし、吸汁可能な場所は意外と限られているのかもしれません。

 従来コケの研究は分類に主眼が置かれ、我々アマチュアも種名を知ることに熱心で、生産者と消費者の関係という視点では、あまり観察されてきませんでした。 しかしコケ植物も生態系の一員であり、このような視点を持ってフィールドで観察すれば、いろいろ楽しい発想が生まれてきます。
 例えは岩にぺったり張り付いている薄い苔類に対しては、口吻を差し込むことも齧り取ることも困難でしょう。 私はスギゴケの仲間の帽にたくさん生えている毛も、環境によっては蒴を齧られることから守るのにおおいに役立っているのではないかと思っています。 触覚に頼る生物には毛を嫌うものがたくさんいるようです。

こちらでも葉が1層の細胞になるように進化した可能性を書いています。

 

2021-01-18

鳥媒花・コウモリ媒花 -カエンボクを中心に-

 昨日(17日)、コケ展の撤去作業に「咲くやこの花館」に行ったついでに温室内をひとまわり。カエンボクがみごとに咲いていました。

 カエンボク Spathodea campanulata は西アフリカ原産の常緑高木で、ジャカランダ、ホウオウボクとあわせ世界三大花木と称され、世界中の熱帯域に街路樹や庭園木などとして、よく植栽もされています。 咲くやこの花館のカエンボクは若木で、まだ 1.5mほどの高さですが、上向きに咲く花を見るのには適した高さでした。

 このような大きな赤い花は、よく見る花としてはハイビスカスがありますが、日本に自生している植物には見当たりません。 このことについて、すこし整理してみました。
 人の目にも目立つ花は、本来は花粉媒介者を呼ぶために咲きます。 日本における代表的な花粉媒介者は昆虫ですが、昆虫の眼は赤い色が見えません。 そのような理由で、日本の自生植物の多くは昆虫に適したサイズの赤色以外の色の花を咲かせます。
 日本自生の赤い花で思い浮かぶのはヤブツバキですが、この花は鳥媒花です。 鳥の硬い嘴が当たっても大丈夫なようにガクはたいへん丈夫にできています。

 上に書いた赤い大きな花を咲かせるハイビスカスはどうでしょうか。
 ハイビスカス(Hibiscus)というのは属名で、多くの種があります。 園芸店などでもよく販売されているハイビスカスはブッソウゲ Hibiscus rosa-sinensis を品種改良したものが多いようで、原種の原産地は不明のようです。

 上は咲くやこの花館で撮った Hibiscus clay (ハイビスカス・クレイ)です。 ハワイのカウアイ島に自生しているハイビスカスですが、絶滅危惧種になっています。
 注目したいのは花の基部で、大きなガク筒ですっぽり保護されています。 やはり鳥媒花なのでしょう。 なお、その下に少し見えているちいさなガク片のようなものは苞です。

 上は Hibiscus insularis(ヒビスクス・インスラリス)です。 やはり咲くやこの花館での撮影です。 オーストラリアの原産地であったノーフォーク島では持ち込まれた家畜によって絶滅し、フィリップ島にわずかに残るだけで、世界で最も貴重な植物のひとつとされています。
 花の基部は、やはり頑丈そうなガク筒によって保護されています。 このようにしてみると、ハイビスカス属の多くも鳥媒花のようです。

 話をカエンボクに戻します。

 上はカエンボクの1つの花に注目し、斜め前から撮った写真です。 花の基部に見える褐色で上向きに反り返った細長いものがガクで、花時にはガクの背面が基部まで割れ、そこから“垂れ下がった腹”を持ったような花が出ています。 この“垂れ下がった腹”には、雨や露に由来する水が溜まると思われます。 ガクに注目すると、ツボミの時はがっちり内部を保護しているでしょうが、花時には鳥の硬い嘴に耐えるつくりになっているとは思えません。 解説板には「コウモリによる送粉に適しています。」と書かれていました(下の写真)。

 コウモリは暗い所を飛び回り虫を捕らえる種ばかりではありません。 暖かい所には昼行性のコウモリもたくさんいます。(こちらには西表島で撮ったヤエヤマオオコウモリの写真を載せています。) 昼行性のコウモリは果実食のものが多いのですが、花の蜜も求めるでしょうし、カエンボクの花に溜まった水はいい吸水源になるでしょう。 昼行性のコウモリは、赤い色も識別できるでしょうし、舌で舐めるコウモリに対しては堅いガクで花の基部を保護する必要は無いのでしょう。