2021-11-27

キンモウヤノネゴケ

 


 岩上でキンモウヤノネゴケ Bryhnia trichomitria が大きな群落を作っていました。


 一次茎は這い、そこから立ち上がりぎみに伸びる二次茎は湾曲し、先は尖ります。 茎の途中から新しいシュートを出して生長を続けることで、特徴的な姿になります。

 上の写真には帽のある蒴、蓋のついている蒴と蒴歯の見えている蒴が写っています。 帽には上向きの長毛があります。

 蒴は長さ約2mm、蒴柄は長さ10~13mm、枝の幅は葉を含めて1~2mmです。

 上は蒴柄の基部で、雌苞葉も毛状になっています。 蒴柄は全面にパピラがあります。

 上は茎葉です。 ひどい写真ですが、カメラで撮るには小さすぎ、顕微鏡で撮るには大きすぎ、これくらいの大きさの葉がいちばん困ります。 とにかく、茎葉の長さは 2.5mmほどで、基部は耳状に下延しています。

 上は葉先付近で、中肋は赤い矢印の所まで伸びてきています。 葉縁は全周に細かい歯があります。

 上は葉の基部(片側)です。

 上は葉身細胞です。 長さ 30~45μm、幅 5~8μm、厚壁で、赤い円で示した所などに弱いくびれがあります。

 枝葉は小形です(上の写真)。

(2021.10.7. 長野県 蓼科大滝)

2021-11-26

ヌマゴケ

 上はヌマゴケ Pohlia longicollis だと思います。 水分の多い腐植質の土と呼んでいいような朽木に育っていました。 上の写真に見られる褐色の蒴は、胞子散布の時期を終えて枯れかけていて・・・

 上の写真のように、新しい胞子体が伸びはじめていました。

 上は胞子体をつけていない株です。 葉の長さは 1.5~2mmでした。

 葉は披針形です。


 中肋は葉先に達している葉も葉先の手前で終わっている葉もありました(上の2枚の写真)。 葉の上部には小歯があります。

 葉の基部は茎に延下しています。

 葉身細胞は線状六角形で、長さは 40~75μmです。

 蒴柄の長さは 1.5~2cmです。

 蒴の長さは 3.5mmほどで、頸部より壺の方が少し長くなっています。

 蒴歯は内外2列で、よく発達しています。 内蒴歯には歯突起より短い間毛があります(上の写真)。

 蒴の頸部の下部にはたくさんの気孔が見られました(上の写真)。

(2021.10.7. 北八ヶ岳)

こちらには上より約1カ月早い、本種の蓋のついた蒴などを載せています。


2021-11-25

ミヤマスギゴケ


  前に載せたウカミカマゴケに混じって生えていたミヤマスギゴケ Polytrichastrum alpinum です。 本種にとっては水分が多すぎるのか、あまり適した環境ではないようで・・・

 かなり徒長ぎみです。 本種はしばしば枝分かれするのですが、枝分かれした枝にもあまり葉がついていません。

 上の写真では乾いてきて葉が茎に寄ってきています。 葉は乾いても縮れません。 平凡社の図鑑では本種の葉の長さは6~10mmとなっています。 上の写真では葉の鞘部と茎との境が分かりにくいのですが、鞘部を含めての葉の長さは6~10mmよりはほんの少し短いようです。

 上は葉の横断面です。 薄板の高さは平凡社では5~8細胞高となっていますが、上の写真では4~5細胞高と、やはり少し低めです。

 薄板の端細胞の上縁の細胞壁は細胞内腔と同じくらい厚く、表面にはパピラがあります(上の写真)。

(2021.10.7. 北八ヶ岳)

こちらには蒴をつけたミヤマスギゴケを載せています。

2021-11-24

キシッポゴケ

 岩上に育っていた写真のコケ、以下の観察結果から、キシッポゴケ Arctoa fulvella だと思います。

 若い蒴と古い蒴が共存していました。 葉は長さ3cm前後、蒴柄の長さも3mmほどです。

 葉は幅広い鞘部から細く針状に伸び、中上部はほぼ中肋のみで構成されています。 翼部は明瞭です。 なお、上の写真は葉先まで写っていません。

 上は葉先です。

 葉縁に舷は無く、細かい歯があります。 下は上とほぼ同じ位置の葉の横断面です。

 中肋にガイドセルはありますが、ステライドは不明瞭です。

 翼部の細胞は大きく、矩形です。

 雌苞葉の鞘部は長く、蒴柄を抱いています。 上はまだ若い蒴ですが、帽は平滑で、下端に毛はありません。

 上は古い蒴を斜め上から撮っています。 蒴の径は 0.5mmほど、高さは1mmほどです。 蒴歯16本のうち3本は折れています。 内部にはまだたくさんの胞子が残っているようです。

 蒴歯の先は不規則に裂け、中部には蒴歯の中央に孔があります。 胞子の径は 17~23μmです。

(2021.10.7. 北八ヶ岳)


2021-11-23

ウカミカマゴケ

 水の滴る岩から垂れ下がっているコケ、ウカミカマゴケ Drepanocladus fluitans だと思います。 なお、写真左上に写っているのはミヤマスギゴケです。



 茎は長く伸び、不規則な羽状に分枝しています。

 葉は長さ3~4mm、上の写真のように鎌形に曲がっている葉が多くありました。 中肋は葉の中部~3/4で終わっています。

 翼細胞は分化しています(上の写真)。

 葉縁上部は全縁または目立たない歯があります。

 葉先に仮根がついている葉もありました(上の写真)。

 上は葉身細胞です。

 上は茎の断面です。 写真の左端は葉につながっていて乱れていますが、表皮細胞は分化していません。

(2021.10.7. 北八ヶ岳)

2021-11-22

カモジゴケ

 

 たくさんの蒴をつけたコケ群落、カモジゴケ Dicranum scoparium だと思います。

 上は乾いた状態で、葉は1方向に鎌形に曲がっています。 蒴柄は赤褐色です。

 葉は密について、長さは7~10mm、葉先は細く尖っています。

 茎の上部まで仮根がついています。 上部の(=新しい)仮根は白っぽいのですが、次第に褐色になっていくようです。

 上は葉の上部を背面から見ています。 葉身上部の細胞の様子はこちらに載せていますので、今回は省きます。
 葉身上半部の縁(上の写真ではぼやけています)には歯があります。 葉の上部の中肋には2~4列の鋭歯のある低い薄板があり、上の写真はその薄板にピントを合わせています。
 下は上とほぼ同じ位置の葉の横断面です。

 写真右側の葉身部が斜めになって見難くなっていますが、中肋の薄板が出っ張りとして確認できます。
 葉身部の細胞は1層で表面は平らです。

 上は葉身中部の細胞です。 膜はやや厚く、くびれが見られます。

 上は葉身下部の細胞です。 細胞は長くなり、くびれも多くなっています。
 下は上とほぼ同じ位置の葉の横断面(中肋付近)です。

 中肋背面に薄板はありません。 ガイドセルがあり、ステライドは明瞭です。

 上は葉の基部です。 翼細胞は大きくて褐色です。

 上は蒴です。 帽は僧帽形で、蓋には長い嘴があります。 蒴歯は1列で、蒴歯の先が糸状に細くなっています。 写真の右下では、その糸状の蒴歯の先がくっつきあって突き出ているため、外蒴歯の中央から内蒴歯が出ているように見えています。

 上は蒴歯です。 蒴歯は中部まで2裂し、上半部には小さなパピラがぎっしりとついています。

 上は蒴壁の気孔です(青い円で囲んだ所)。

(2021.10.7. 北八ヶ岳)