ラベル 36 昆虫6 ハチ目 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 36 昆虫6 ハチ目 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025-08-04

イヌビワとイヌビワコバチ(とイヌビワオナガコバチ)

 Part1からの引っ越しを兼ねて、今の時期に見られるイヌビワとイヌビワオナガコバチとの関係などを、昔撮った写真を使って書いてみました。 

 イヌビワ Ficus erecta は関東以西に自生するイチジクの仲間です。 上は2015年8月7日に富田林市の錦織公園で撮った果嚢(いわゆる“イチジク”)で、黒く熟し、あふれ出た密が垂れていて、その蜜を求めてアミメアリが集まってきています。 この果嚢は、私たちが食べても美味しいものですが、鳥などに食べられ、種子が運ばれます。
 ところが・・・

 上も1枚目と同じ頃に撮った写真ですが(2012年8月11日に堺自然ふれあいの森で撮影)、美味しくなさそうですし、実際鳥も食べません。 果嚢の先が乱れていますが、ここからイヌビワコバチ Blastophaga nipponica という小さな蜂が出てきます。

 イヌビワには雌株と雄株がありますが、多くの種子植物の雌株・雄株とはかなり意味合いが違います。 雌株は種子ができる株で、最初の写真が雌株です。 雄株は種子になる部分がハチに食べられてしまい、種子ができませんが、果嚢の中には雌花も雄花も咲きます。 2枚目の写真が雄株です。

 イチジクは漢字では「無花果」と書きます。これは花を咲かせずに実をつけるように見えることからですが、実際には、花嚢の中に小さな花が咲きます。 これはイチジク属(Ficus)全体に言えることで、イヌビワにもあてはまります。
 イヌビワの雌株の花嚢内でも雄株の花嚢内でも雌花が咲きますが、この雌花の花柱の長さは雌株と雄株で異なっています。
 イヌビワコバチのメスは、イヌビワの花嚢に潜り込み、雌花の柱頭から産卵管を差し込み、子房に卵を産み付け、ふ化した幼虫は子房を食べて成長します。 ところが、イヌビワの雌株に咲く雌花の花柱は長く、イヌビワコバチの産卵管は子房に届きません。 ですから雌株の花嚢ではイチジクコバチが育たず、種子ができます。

 上は高槻市にあるJT生命誌研究館のHPからお借りした図です。 イヌビワの雌株と雄株の雌花の違いが分かりやすく書かれてあるのでお借りしたのですが、図の左のようにイチジク属の植物には雌雄同株も存在します。 この場合は、1つの花嚢の中に2種類の雌花が咲き、種子もできるし、コバチも育ちます。

 イヌビワの雄株は雌花の子房を食べさせてイヌビワコバチを育てているとも言えます。 一般に、花は同種の花粉をメシベにつけてもらわないと意味がありません。 イヌビワコバチはイヌビワの花嚢の中でしか育ちませんから、メスは必ずイヌビワに産卵に向かいます。

 上もJT生命誌研究館のHPからお借りした図で、イチジク属の繁殖システムを示す模式図です。 イヌビワは雌雄異株ですから図の右側です。
 この時期、雄株の花嚢内の出口付近には、たくさんの雄花が咲いています。 雄株の花嚢の中ではイヌビワコバチのメスとオスが成虫になっています。 交尾を終えたメスは花嚢から脱出しますが、その時、花嚢の入口付近に咲いている雄花の花粉が体に付きます。 オスは花嚢の外に出ることなく、短い成虫の暮らしを終えます。
 この時期イヌビワには、雌株にも雄株にも若い花嚢ができています。 花粉を体につけて花嚢を出たイヌビワコバチのメスは、この若い花嚢に潜り込みます。 花嚢に潜り込んだメスは産卵のために若い花嚢内を動き回りますが、その時に体に付いていた花粉がメシベの柱頭に付きます。 そしてメスは産卵しますが、その結果は、雄株の花嚢内ではイヌビワコバチが育つものの、雌株の花嚢内では育つことができず、受粉した雌花には種子ができます。

 最初から2枚目に載せたイヌビワの雄株の花嚢を割ってみました(下の写真)。

 上の写真の丸くみえるのは子房の膨らみですが、その中には種子ができておらず、イヌビワコバチが育っています。 ちょうどそのうちの1つから、イヌビワコバチのメスが子房壁を破って脱出しようとしています。

 上は子房から出て翅も広がったイヌビワコバチのメスです。

 上はイヌビワコバチのオスです。

 上のようなハチもいました。 これは羽化したばかりのイヌビワオナガコバチ Goniogaster inubiae のメスで、長い産卵管を持っています。 このハチは花嚢から出た後、イヌビワコバチの居そうな新しいイヌビワの花嚢の外側から産卵管を刺し込み、生まれた幼虫はイヌビワコバチの幼虫を食べて成長します。

 上はイヌビワオナガコバチのオスです。 イヌビワコバチのオスと比較すると、頭部が大きく、立派な牙を持っています。 このオスも花嚢内で交尾し、花嚢から外に出ることはありません。

 上は産卵場所を吟味中のイヌビワオナガコバチ(メス)で、3頭います。 2012年7月22日に堺自然ふれあいの森で撮影しました。

2025-08-02

テラニシシリアゲアリ




 上はテラニシシリアゲアリ Crematogaster teranishii でしょう。 1枚目は2014年6月28日にクサカゲロウの仲間の死骸に集まっている所を、2・3枚目は 2013年7月19日に、4枚目は 2015年9月4日に、いずれも堺自然ふれあいの森で撮影しました。
 本州以南で普通に見られる樹上性のアリで、上の写真も全て、樹木の観察用に高い所に設置された木道で撮影しています。 体長は2~4㎜、攻撃的なアリで、威嚇の態勢に入った時には、先がとがった腹部を前方に突き出します。
 同属のハリブトシリアゲアリ(C. matsumurai)とよく似ていますが、本種はより濃い黒色で、前伸腹節にあるトゲが鋭く尖っています(ハリブとシリアゲアリのトゲは短く、つぶれたような形です)。

◎ 本種もアブラムシなどと保護するかわりに甘露を求めるという共生関係をつくります。 こちらにはタケノアブニムシとの関係を、こちらにはオオワラジカイガラムシの幼虫との関係を載せています。

 

2025-08-01

アブラニジモントビコバチ

 下はPart1の2013年1月25日に載せていたものを、大幅に書き換え、こちらに引っ越しさせたものです。 


 上はアブラニジモントビコバチ( Cerapteroceroides fortunatus )だろうと思います。 堺市南区岩室で 2013年1月25日に撮影しました。 体長は1.0mm、翅端までは1.2mmでした。
 本種は高次寄生蜂で、アブラムシに寄生するアブラコバチに寄生します。 体はずんどうでやや扁平、中脚が長くなっているのはトビコバチ科の特徴です。 触角は扁平で、見る角度によって、厚さが全く違って見えます。
 冬に見られるコバチの仲間は、ほとんどが秋に交尾を済ませたメスで、産卵する春まで寒さに耐えているようです。 オスは交尾を終えると死んでしまい、今見られるオスがいたら、それは今が交尾期の種だろうということです。 ですから、この写真のものもメスで、雄は翅の斑紋もなく雌とはだいぶ異なった姿をしているようです。

こちらには長さにして本種より2倍大きいニジモントビコバチを載せています。

 

2025-07-31

ヒメコバチ科 Euplectrus sp. の2種

  下はPart1の2013年1月の20日と27日に載せていたものを、大幅に書き換え、こちらに引っ越しさせたものです。


 上はヒメコバチ科の Euplectrus sp. だと思います。 11月30日に大阪城公園で撮影しました。 体長は2.2mmでした。
 Wikipedia(英語版)によると、Euplectrus属は世界的に広く分布するハチですが、種間の形態的な違いはわずかで、識別には困難が伴う属です。 他の属とは、後脛節の距がとても長いことや、前伸腹節(propodeum)の中央に一本の強い稜があることで区別できるのですが、これは帰宅後に調べたことで、上の写真ではどちらの特徴もよく分かりません。
 Euplectrus属のハチは、チョウ目の幼虫に外部寄生します。 寄生されたイモムシは食餌や活動を続けますが、産卵時に注入された毒液によって成長と脱皮は止まり、ハチの幼虫がサナギになる頃に死んでしまいます。

 下も上と同じEuplectrus属の別種でしょう。 12月21日に堺自然ふれあいの森で撮影しました。 これも体長は2.2mmでした。


 下も一見よく似ていて、たぶんヒメコバチ科でしょうが、背面の様子も違いますし、産卵管が突き出しています。 たぶん別の属でしょう。 体長は 1.7㎜、2013年1月23日に堺市南区岩室で撮影しました。




2025-07-30

Heterospirus sp. (コマユバチ科オナガコマユバチ亜科)

※ Part1の 2012年12月21日からの引っ越し記事です(追記しています)。 



 写真は2012年12月21日に堺自然ふれあいの森で撮影したコマユバチ科の一種で、体長は 2.5mm、翅端までは 3.2mmでした。 しかしそれ以上は分からず、藤江さんに見ていただいたところ、腹部背面や後翅翅脈などが見えないため、なかなか難しいが、顔の形状からはオナガコマユバチ亜科かコマユバチ亜科あたりに絞れ、下口隆起線や後頭隆起線(下記 注)がありそうなところから、おそらくオナガコマユバチ亜科で、Heterospirus属あたりかもしれないとの回答いただきました。

(注)
・ 下口隆起線(Hypostomal carina)
 頭部の後方、口の近くにある隆起線で、大顎の後方の関節部から後頭孔(foramen magnum)に向かって走る線です。口の周囲の構造を補強したり、筋肉の付着点になったりします。
・ 後頭隆起線(Occipital carina)
 頭部の後ろ側にある半円状の隆起線で、頭頂部(vertex)と複眼の後縁、後頭孔の間を囲むように走っています。この線は、頭部の後方の輪郭を形成し、分類学的にも重要な特徴です。


2025-07-29

ハラビロクロバチ科 Leptacis属の一種

 ※ Part1の2013年12月28日からの引っ越し記事です。

 2013年12月25日に堺自然ふれあいの森のヤツデの葉の裏で見つけたスマートな蜂、体長は、体を真っ直ぐにすれば、1.7mmほどになります。 見慣れない姿で、最初は調べる手がかりも思いつかなかったのですが、頭を思いっきり下げている姿や、脚の脛節の端が膨れているところなどから、黒くはありませんがハラビロクロバチ科かもしれないと思い、検索してみると、tukikuiさんのところ(こちら)に似たものが載せられていました。 この記事へのコメントを寄せられたKurobachiさんによれば、この属はたくさんの種を含んでいるそうで、同種かどうかは分かりませんが、同じ属であることは間違いないでしょう。 タマバエ類の幼虫に寄生するそうです。
 撮影を始めるとすぐに動き出したので、家に持ち帰りました。 しばらく冷凍庫に入れて動きを鈍くして撮影するつもりが、細い体には無理だったようで、短時間で絶命してしまいました。 それを横から撮ったのが下の写真です。

 小楯板の先端には1本の鋭い棘があります。 前脚と絡み合っていて分かりにくいのですが、触角は長く、上の写真ではZ状に折りたたまれています。 翅には毛が生えています。

 上の写真では、口のあたりがよく分かりませんし、触角の出ている所ももう少し分かりやすくならないかと思い、ピンセットで絡み合っていた前脚と触角を分け、CombineZP で深度合成してみたのが下です。 レンズは手元にあった28mm広角レンズ( もう少し焦点距離の短いレンズがほしいところですが・・・)を逆向きにし、カメラとの間に接写リング(PK-13)を挟みました。


2025-07-27

パンダアリ

 上は大阪市立自然史博物館で現在開催中の特別展「昆虫MANIAC」で撮影したパンダアリです。 虫ピンの太さからも分かるように、小さな昆虫です。 撮影はガラスに触れないように注意しながら接写し、トリミングしています。
 このパンダアリ、「パンダみたいなアリ? 実はハチ」のキャッチコピーもあって注目されていますが、頭部にこんなに毛があることもおもしろく、少し調べてみました。
 パンダアリの学名は Euspinolia militaris で、南米チリの沿岸部に分布するアリバチ科の1種です。 アリ(アリ科)もハチ(ハチ目)の1グループですが、本種はアリ科ではありませんから、たしかにアリではありません。
 食性は、親は花の蜜や小さな昆虫で、幼虫は親が産卵した地中性のハチの幼虫などに外部寄生します。
 アリバチ科(Mutillidae)のハチは、オスには翅がありますが、メスには翅がありません(だからアリのようにみえます)。 アリバチ科のハチは体に鮮やかな色を持つものや目立つ模様を持つものが多いのですが、護身用に強力な毒針を持っていて、体の色や模様は捕食者に警告する警戒色のようです。 また、体の一部をこすり合わせて高周波音を発し、捕食者を追い払うこともします。
 アリバチ科のハチは全世界に分布しますが、特に熱帯地域で多様性が高く、日本でも九州、沖縄、奄美諸島、屋久島などの南西諸島で多くの種が確認されています。

2025-07-22

ハチの系統とルリチュウレンジ

 ハチと聞くと刺されると怖がる人が多いのですが、そのような怖いハチは、ほんの一部のハチです。 

 上は現在大阪市立自然史博物館で開催中の特別展「昆虫MANIAC」で掲示されていたハチの系統図です。 スズメバチやアシナガバチはスズメバチ(スズメバチ科)にまとめられています。
 上の系統図をさらにまとめて大きく見ると、幼虫の餌は、植物の葉や材 → 動きの乏しい虫など(卵や幼虫)への寄生 → 動きのある虫などへの寄生や捕食 → 植物の花粉 というように変化しています。 スズメバチやアシナガバチは動きのある虫などを捕食できるように、また社会生活をするために巣などを守る必要から、産卵管が変化した強力な毒針を持ち攻撃的な側面もありますが、繰り返しますがそんなハチはごく一部です。
 多くのハチは何も恐れることは無いのですが、その1例として、ここでは系統上初期に現れた、ある意味ハチの“原型”であるハバチを、ルリチュウレンジを例に取り上げます。 なお、ルリチュウレンジについては、Part1の2012年8月23日の記事の引っ越しを兼ねています。
 「ハバチ」は「葉蜂」で、幼虫は葉を食べて育ちます。 卵は産卵管を葉に差し込んで産み付けられますので、もちろん産卵管が変化した毒針はありません。
 産卵の様子は【こちら】に載せています。

 上がルリチュウレンジの幼虫です(2010年6月27日撮影)。 ルリチュウレンジの幼虫はツツジ類の葉を食べて育ちます。 葉をもりもり食べて育つという生活が同じところからチョウやガの幼虫と似ていますが、違い(見分けるポイント)は【こちら】に載せています。

 そして上が成虫です(2012年8月16日撮影)。 ハチといえば腰のくびれを連想しがちですが、これは腹部を自由に動かして虫の急所に正確に針を差し込むための形態で、そのような行動をしないハバチなどでは、腰のくびれは見られません。(進化的には腰のくびれができたから、虫の急所に正確に針を差し込めるようになった。)
 なお、本種の本来の色は黒っぽいのですが、上の写真は、金属光沢を伴った瑠璃色を強調するため、ハイキーぎみに撮っています。

 ルリチュウレンジはミフシハバチ科に分類されています。 「ミフシ」というのは、この仲間の触角が3節からできていることによります。 写真で分かるように第3節が第1・2節に比べてとても長くなっているのが特徴です。

 ルリチュウレンジは年に3~4回発生し、成虫は4月~10月頃に見られます。 上に書いたように、幼虫はツツジ類の害虫で、地面に降りて土の中でサナギになります。 越冬は、サナギの状態で過ごします。

2025-07-21

ヒラアシキバチ

 以下は Part1の 2012.9.22.と 2012.11.22.との記事を合わせた引っ越し記事です。

 ハチの進化を見た場合、原始的なハチの幼虫の餌は、葉を食べるハバチの仲間や、材を食べるキバチの仲間など、植物組織です。
 キバチ科は針葉樹を利用するキバチ亜科と広葉樹を利用するヒラアシキバチ亜科に分けられます。 ヒラアシキバチ Tremex longicollis(ヒラアシキバチ亜科)は、卵を枯れたエノキの辺材部に産み付け、幼虫は辺材を食べて育ち、材の中で羽化した成虫は幹に穴を開けて出てきます。


 上がヒラアシキバチです。 アシナガバチやスズメバチなどの狩蜂の顔の獰猛さは感じられず、穏やかな顔に思えました。 そんなヒラアシキバチの産卵に出会いました。


 硬い木に産卵管を差し込むのですから、たいへんなようです。 体を左右にねじりながら、徐々に産卵管を幹に差し込んでいきます(上の写真:2012.9.22.枚岡公園にて撮影)。
 上の2枚の上の写真で、腹部腹面の中央付近から出て木に差し込まれている黒いものが産卵管で、腹部の端から後ろに突き出ているのは、産卵管をしまっておく産卵管鞘です。
 産卵の様子を見ていると、産卵管はゆっくりと錐をもむように差し込まれていきます。 産卵管を差し込んだ所からは白っぽい木屑がこぼれ出ています。

 当日は何頭かのヒラアシキバチの産卵を見ましたが、そのうちの1頭は羽化したばかりのようで、体には木屑がついていて、まだ飛び立つこともできないようでした。 しばらく見ていると、そのヒラアシキバチが産卵管を幹に差し込みはじめましたが、周囲にはオス(産卵管鞘は無いはずです)らしき姿は見当たりませんでした。 ヒラアシキバチは産雌性単為生殖を行っているとされています。 ところが・・・


 2012年11月10日、ヒラアシキバチが産卵している木で、よく似ているが、頭部が黒く産卵管の無いハチがいました。 気温が低いためか、飛び立つ気配はありません。 オスではないかと思い、持ち帰って撮影したのが上の2枚の写真です。
 後日、大阪市立自然史博物館のM学芸員にこの蜂をお見せしたところ、ヒラアシキバチと同じ属に数種いるが、この時期なのでヒラアシキバチだろうということでした。 ヒラアシキバチの発生する木全体をネットで包むなど、徹底した調査をすると、ごくたまにオスが見つかることがあるが、ごく少数なので、生殖活動には関係していないのではないか、ということでした。 ハチはM学芸員にお渡ししました。

 ところで、ヒラアシキバチが産卵している枯れたエノキには、産卵管が差し込まれたままちぎれた腹部があちこちにたくさん残されています(下の写真)。

 古いものでは産卵管だけが残っている場合もありますが、新しいもののほとんどが、産卵管の位置から後ろが残されています。 たぶん差し込んだ産卵管は簡単には抜けないので、産卵途中で捕食者に襲われたのでしょう。

 このヒラアシキバチが産卵していた枯れたエノキにはミダレアミタケ Cerrena unicolor(下の写真)が生えています。

ミダレアミタケ 2013.6.27.枚岡公園

 ヒラアシキバチの産卵管の付け根には1対の菌嚢(きんのう)があり、その中にはミダレアミタケの胞子が入っています。 菌嚢の近くにはミューカスと呼ばれる粘液の入った袋もあり、ヒラアシキバチの産卵時には、この粘液と菌嚢に貯えた胞子とが混ざり、木に接種されるしくみになっています。 胞子から発芽したミダレアミタケの菌糸は材を分解し、ヒラアシキバチの幼虫が利用しやすくしてくれます。 蜂と菌の共生です。
 このミダレアミタケは、枯木内にいるヒラアシキバチの幼虫に寄生するオナガコバチを紹介したブログ(こちら)の4枚目の写真にも写っています。

2025-07-20

エゾオナガバチとオオホシオナガバチの産卵

 大阪市立自然史博物館で特別展「昆虫MANIAC」展が開催中です(2025年7月12日~9月23日)。 下はその中で展示されているエゾオナガバチの拡大模型です。 

 上の模型の赤い矢印で示した針金状のものは何でしょうか。
 このハチに関しては、ブログの Part1の2012.6.3.の記事にしていましたので、この機会に少し加筆訂正してこちらに引っ越しさせることにしました。 写真は2012.6.2.に大阪の枚岡公園で撮影したものです。

 1枚目の模型の写真と似た上の写真、立ち枯れたエノキの幹に産卵に来ていたエゾオナガバチ Megarhyssa jezoensis てす。 オナガバチの仲間(ヒメバチ科オナガバチ亜科)は長い産卵管を持ち、これを木の幹に差し込み、幹の中で材を食べて育っているキバチの幼虫に卵を産みつける寄生蜂です。
 この木には同じオナガバチの仲間のオオホシオナガバチ M. praecellens も来ていました。 両者は体の大きさも生活の様子もほとんど変わりませんので、以下同様に扱い、その産卵の様子を紹介したいと思います。
 なお、この枯れたエノキではヒラアシキバチが育っていますので、これらオナガバチのターゲットはヒラアシキバチの幼虫の可能性が高いように思います。

 上はオオホシオナガバチで、産卵管を幹に差し込む前の状態です。 触角で幹をトントンと叩くような行動をとっています。 この行動で幹に潜むキバチの幼虫の位置を探っているのだと言われています。 硬い木の幹を触角でたたいてキバチの幼虫の位置が分かるとは驚きですが、ちゃんとキバチの幼虫に寄生できているのですから、位置が分かっているのでしょうね。

オオホシオナガバチ

 産卵管を差し込む位置が決まったら、腹部の端を高く持ち上げ、産卵管の先端を目的の位置にセットします(上の写真)。
 このまま腹部の端をゆっくりと押し下げ、産卵管を幹に挿入していくのですが・・・

エゾオナガバチ

 幹に挿入される前の産卵管は、その左右を産卵管鞘とよばれるもので保護されています。 産卵管鞘は幹に入っていきませんから、産卵管が幹に挿入されるにつれて、産卵管鞘は産卵管から離れ、左右に分かれてループ状に取り残されることになります。 最初の模型の赤い矢印は、この産卵管鞘です。
 産卵管を挿入する速度は、硬い材に挿入していくのですから、本当にゆっくりですが、こんな細い産卵管が挿入できるというのは驚きです。
 上の写真で、産卵管はaからd・eを経て幹の中に挿入されています。 もう大部分の産卵管は幹の中にあります。 そして、この産卵管を保護していた産卵管鞘は、aからb・cを経てdで産卵管といっしょになり、eで終っています。 つまり、木の幹の中にある産卵管の長さは、
   (産卵管鞘の長さ=産卵管の長さ)-(差し込まれていない産卵管の長さ)
  =(a-b-c-d-e の長さ)-(a-d-e の長さ)
 ということになります。

こちら(Part1)には産卵行動の見られる時期やオオホシオナガバチのオスなどを載せています。 Part1は閲覧に時間がかかる状態が続いていますので、そのうちこれも引っ越しさせるつもりではいますが、いつになるか分かりませんので、とりあえずお知らせしておきます。

 

2025-07-19

ベッコウクモバチ

 6月下旬、写真のハチが多数飛び交っていました。 なかなかとまってくれませんし、とまっても、カメラを近づけると、すぐに飛び立ってしまいます。 やっと撮ったのが上の写真です。 雰囲気的には羽化したオスがメスを探しているのではないかと思います。

 オスだろうと思い検索してみると、ベッコウクモバチ Cyphononyx fulvognathus がよく似ているようです。 クモ類を狩って幼虫のエサにするハチのようです。 メスは頭部も胸部ももう少し明るく、触角の先も黒くならないようです。

 ナミモンクモバチのメスやキオビクモバチのメスなどよく似た体色の蜂もいますが、これらの蜂との区別点は、ベッコウクモバチの前伸腹節には強い横皺があることです。 しかし、この部分は閉じた翅に隠されていて、よく分かりません。 上の写真の黄色の矢印の横皺がそれだと思うのですが、どうでしょうか。

 ところで、展翅され、きれいに整形されたハチの図鑑を見ると、クモバチ科やアナバチ科など、特定のグループのハチの触角は全てカールしています。 これがこれらの蜂を他の蜂から見分けるポイントだと思っていたのですが、フィールドで見ると、そんな蜂はいません。 どうやら柔軟に曲げることのできる触角が、死後に収縮の強い側に曲げられてしまうようです。

(2013.6.27. 枚岡公園)
※ 上はPart1の 2013.7.11.からの引っ越し記事です。


 

2024-07-19

クヌギハマルタマフシ


 クヌギの葉にたくさんついていた赤い虫こぶ(2024.7.17. 兵庫県西宮市で撮影)、クヌキハマルタマフシという名がつけられています。 長い名前ですが、ふつう虫こぶの名前は、
   植物の名前+作られる場所+虫こぶの形状+「フシ(附子:こぶのこと)」
 というふうにつけられています。 この場合も、「クヌギ(など)の葉に作られる丸く玉のような附子」という意味を持った名前です。
 作ったのはクヌキハマルタマバチ Aphelonyx acutissimae です。 このハチはクヌギの葉に1つずつ産卵し、成虫が卵と共に葉に注入する物質の作用なのか、幼虫が出す物質の作用なのかは知りませんが、とにかく何らかの物質の作用でクヌギの葉の組織が増殖・肥大し、ハチの幼虫を包み込むような虫こぶとなります。 ハチの幼虫は“部屋付き食べ物付きの独身生活”を送ることができるのですが、虫こぶの外から産卵管を刺してこのハチに寄生するハチや同居するハチもいるようです。
 クヌキハマルタマバチは、単性世代(雌だけが存在し、単為生殖を行う世代)と両性世代(雌と雄が存在し、有性生殖を行う世代)を交互に繰り返します。 どちらの世代の幼虫も虫こぶ暮らしをするのですが、虫こぶの形態は違っています。 写真の虫こぶは単性世代が作ったもので、この虫こぶからは、まもなくオスかメスが出てくるはずです。 この雌雄が交尾し産卵してできる虫こぶは、クヌギハナコケタマフシと呼ばれています。