2014-07-31

テングノメシガイ


 写真は子嚢菌門チャワンタケ亜門のテングノメシガイの仲間の子実体で、高さは2~3cmほどです。 この仲間は外見的によく似た種類が多く、肉眼での同定は困難です。
 子実体のつくりは、柄の先に扁平な子嚢盤があり、ここに子嚢果( 胞子を形成する器官 )が密に埋まっています。 子実体全体は剛毛で覆われています。


 ところでこの名前、「テング」は「不思議なもの」という意味を含んでの名称でしょうが、「メシガイ」って何か分かりますか? きっとすぐ分かる人も少なくないと思うのですが、少なくとも大阪に住む私の近くでは聞かない言葉です。
 「メシガイ」を漢字で書けば「飯匙」で、これを「いがい」または「いいがい」と読む地方も多いようですが、ご飯をお茶碗に盛る時に使うもので、私の周辺(大阪)では「杓子(しゃもじ)」と呼んでいます。
 このあたりの言葉は地方によって異なっているようで、東北地方(全体かどうかは分かりませんが)では、「しゃもじ」は味噌汁を椀に入れる時に使うもの(大阪では「おたま」)で、ご飯を盛る道具は「ヘラ」と言うんだと聞いたことがあります。

2014-07-30

チチタケに群がるハネカクシの一種


 写真のキノコはチチタケでしょう。 有用な食用菌です。


 元気なチチタケは、ほんの少しの傷でも、そこから乳白色の液体( 以下「乳液」と書きます )を出し、このことが和名の由来になっています。 上の写真は、できるだけそっとキノコを抜いて裏返しにしたつもりですが、それでも赤い矢印の所などに乳液が出ています。 この乳液は時間と共に褐色になります。 上の写真のひだに見られる褐色のしみは、この乳液の乾いたものでしょう。 そして、このしみを作った(=乳液を出させた)張本人は、上の写真のあちこちに見られるハネカクシでしょう。
 この乳液はハネカクシが歩き回るだけでも分泌されているようです(下の写真)。


 上の写真は乳液にピントを合わせましたが、以下、ハネカクシにピントを合わせた写真です。


 よく見ると、このハネカクシはヒダの隙間にたくさん潜んでいました(上の写真)。


 ハネカクシの体長には個体差がありますが、2~3mmほどでした。 このハネカクシはおちゃたてむしさんのところ(こちら)に載せられているものによく似ていますが、そのハネカクシも、やはりキノコ(テングタケ科?)のヒダの間に集団でいます。


 じつはこのチチタケと昨日載せたコトヒラシロテングタケ(こちら)との距離は2mほどです。 それほど近い距離にありながら、コトヒラシロテングタケにはツヤヤドリタマバチばかりが、チチタケにはハネカクシの一種だけが集まっていました。 これをどのように理解すればいいのでしょうか。 虫によるキノコの好みが違うのでしょうか。 それともこれらの虫には同種を呼び寄せる集合フェロモンのようなものがあるのでしょうか。

2014-07-29

コトヒラシロテングタケにツヤヤドリタマバチが産卵


 雑木林で見つけたキノコ、テングタケ科のものだとはすぐ分かるのですが、傘の上のつぼの破片の残り方がその時の環境条件で異なりますし、その他の特徴も不安定で、1本だけ生えていると、種名に自信が持てなくなります。 たぶんコトヒラシロテングタケだと思うのですが・・・。


 上の写真、黒い点は、ゴミもありますが、動きまわっている小さな虫です。



 傘の裏も状況は同じです。 小さな虫は、どうやらほとんどが同種のようです。



 接写してみると、ツヤヤドリタマバチ科の一種のようです。 体長は 1.7mmでした。 なお写真は、黒っぽい蜂が真っ黒にならないように、露出オーバーにして撮っていますので、コトヒラシロテングタケはほとんどまっ白になっています。




 上の3枚の写真で、このツヤヤドリタマバチの翅脈の様子と、中胸の小楯板の様子が理解していただけると思います。 小楯板には環状の溝を境に盛り上がった部分があり、その中央に水滴型の立体的な模様が見られます。


 横から見ても、名前のとおりツヤがあり、上の写真では体に脚が映りこんでいます。 腹部は扁平な楕円形です。 見ていると・・・


 上の写真のように産卵管を差し込んで産卵し始めました。


 上は産卵を終え、産卵管をしまおうとしているところです。



2014-07-28

ヒラズオオアリ(女王アリ)


 7月16日にみつけた女王アリ、ヒラズオオアリだと思います。 体長は翅を含めずに 6.2mmでした。


 ヒラズオオアリは漢字で書けば「平頭大蟻」でしょう。 働きアリは大型と小型の2型がいて、女王アリと大型の働きアリ=兵アリの頭部前方は切断されたように平らになっています。 なお小型の働きアリの前脚腿節は幅広くなっています。



2014-07-27

オオハチモドキバエ


 タイルの壁にとまっていた双翅目、デガシラバエ科のオオハチモドキバエでしょう。 ネットで調べてみると、このハエをフトハチモドキバエとしているところもあるのですが、「一寸のハエにも五分の大和魂・改」のこちらを見ると、オオハチモドキバエのようです。 生態などはよく分かっていないようです。


※ 同じデガシラバエ科のものとしては、ミツモンハチモドキバエをこちらに載せています。


2014-07-26

デンジソウ


 デンジソウは、漢字で書くと「田字草」で、葉の形が「田」の字に見えるところからです。 かつては水田雑草として普通に見られたようですが、農薬に弱いのか、今では限られた所でしか見ることができなくなってしまいました。
 密度の低いうちは上の写真のように水面に葉を浮かべていますが、密度が高くなると、互いに寄り添って光を求めて上に伸び、下の写真のように、まるで四つ葉ばかりのクローバーのような群落を形成します。


 立派なデンジソウの群落を見つけて、花は・・・と、いくら探しても花はみつかりません。 じつはデンジソウはシダ植物です。 では胞子は・・・と、葉の裏を見ても胞子のうも見つかりません。


 デンジソウは夏緑性です。 秋も深まって葉が少なくなりかけた頃に、上の写真のようなものが見られます。 これはたくさんの胞子のうを入れておく胞子のう果と呼ばれているもので、下はその断面です。
 上の写真も下の写真も、じつは1982年に(もちろんフィルムカメラで)撮ったもので、くっきり感はありませんが・・・。


 胞子のう果の中には、たくさんの胞子のうが見られますが、上の写真のように、大小2種類の胞子のうがあります。
 大胞子のうの中には1個の大胞子が、小胞子のうの中にはたくさんの小胞子が入っています。 私たちがよく見る多くのシダ植物では胞子は1種類ですが、2種類の胞子(大胞子と小胞子)の存在は、植物の進化を考えるうえで重要です。 大胞子は種子の基になる胚のう細胞に、小胞子は花粉の基になる花粉細胞につながります。

2014-07-25

ヤマドリタケモドキに産卵するクロツヤバエ科の一種


 2本の傘が完全にくっついているヤマドリタケモドキがありました。 イグチ科のキノコでは、時々このような状態が見られます。


 幼時のヤマドリタケモドキの孔口は白っぽい菌糸で塞がれています。 また、柄にも管孔にも変色性は見られません。 上の写真は、それらのことを記録しておこうと撮ったもので、柄にも管孔にも傷をつけてあります。 なお、ヤマドリタケモドキはなかなかおいしい食用キノコです。

 ところで、上の写真には双翅目のものらしい白い卵が写っています。 じつは1枚目の写真にも、傘の右端近くに、産卵中のハエが写っています。




 上がそのハエを拡大したもので、クロツヤバエ科の一種( 以下クロツヤバエと書きます )のようです。


 上はヤマドリタケモドキの傘の縁近くで産卵中のクロツヤバエです。 クロツヤバエのメスは、腹端に写真のように槍状に伸びる産卵管を持っています。



 上の2枚の写真は傘の裏で産卵中のところを撮ったものです。 撮りにくい所で写真はボケていますが、この2枚の写真を比較すると、産卵時には産卵管を深くまで差し込んでいるようです。 ということは、上から2枚目の写真の卵はクロツヤバエのものではなさそうですね。


2014-07-24

ミドリセイボウ


 ミドリセイボウはルリジガバチに寄生します。 ミドリセイボウを見たくて、ルリジガバチのたくさんいる所へ行ってみると、1頭のミドリセイボウがいました。


 横から見ると、ミドリセイボウの腹部には赤っぽい紋があります。


 セイボウ類を見分けるポイントの1つに、腹部末端の形状や突起の数があります。 真上から見ると、1枚目の写真のように翅に隠されてしまいますが、上の写真は斜め後ろから撮ったものです。
 上の写真では光の当たり方で左半分が黒っぽくなっていますが、ミドリセイボウの歯状突起は5歯であることが確認できます。

 ルリジガバチについては前に載せています(こちら)が、ミドリセイボウを撮ったのと同じ日に撮ったルリジガバチを1枚だけ下に載せておきます。


2014-07-23

アカガシラサギ

 アカガシラサギの学名は Ardeola bacchus、種小名は、赤ワインのような夏羽の色から、ローマ神話の酒神「バッカス」に由来します。
 英名は Chinese Pond-heron で、中華人民共和国中東部で繁殖し、東南アジアで越冬します。 日本では少数が南西諸島に越冬のために飛来し、各地でも稀に渡りの途中に飛来することがあります。
 神戸市では10年ほど前に4年連続で明石川で越冬のために飛来したようですし、秋田県、熊本県、千葉県でも繁殖例があるようですが、とにかく稀な鳥です。
 その稀な鳥がきれいな夏羽で6月25日から京都に飛来しています。 渡りの途中なら、こんな長期滞在はしないはずですし、1羽しかいませんから、繁殖しているわけでもありません。 いったいどうしたのでしょうか。 とにかく、こんなチャンスはめったにないので、見に行ってきました。
 当日は天気が良すぎて高温で、水面からの水蒸気が多く、ソフトレンズをつけて撮ったような写真ばかりになりましたが・・・。

アカガシラサギのいる風景

ハスとトンボとアカガシラサギ


あくび 長い舌です


羽繕い 羽の白さはさすがに白鷺!?

魚(ブルーギル)をGet!

こんなに大きな魚をよく飲み込めるものです

2014-07-22

キイロイグチ


 ネズなどが混じるコナラを中心とした雑木林を歩いていると、足元に黄色いキノコ。 抜いてみると、傘の上も下も柄も黄色です(下の写真)。


 傘の裏には胞子を作るひだも管孔も見えませんが、よく見るとクモの巣を張ったように黄色い繊維で覆われているようです。 これは、まだ若いキノコで、傘の裏が菌糸で作られた「被膜」に覆われて保護されているのでしょう。
 断面を作ってみると・・・


 予想通り被膜の内側には胞子を作る管孔がありました。 イグチ科のキイロイグチです。 キイロイグチは被膜が発達したキノコなんですね。
 傘の肉は白色~淡黄色ですが、青黒く汚れたようになっています。 これは切った時の傷で肉が青変したもので、これもこのキノコの特徴のひとつです。


 しばらく歩くと上のようなキノコがありました。 これもキイロイグチでしょう。 下はこのキノコの傘の裏側を見たものです。


 上の写真、傘の縁には被膜が残っています。 写真のちょうど中央付近の管孔が青黒くなっていますが、これは管孔も青変することを示すために、爪で引っ掻いた場所です。


 上は古くなったキイロイグチでしょう。 キイロイグチの管孔は古くなると暗褐色に変わります。