2019-05-22

エゾキンモウゴケ


 写真はエゾキンモウゴケ Ulota japonica のようです。 カラフトキンモウゴケにそっくりですが、帽の毛は少ないようです。 いただいたコケで、樹幹についていたらしいのですが、産地を聞くのを忘れていました。
 写真は4月上旬の状態です。 撮影は済ませていたのですが、いろいろと忙しく、ブログに上げるために整理するのが今日になってしまいました。



 上は乾いた状態で、カラフトキンモウゴケなら葉が著しく捲縮しますが、ゆるく巻いているだけです。


 葉の基部はカラフトキンモウゴケのように広くはなりません(上の写真)。


 葉身細胞は丸みを帯びて厚壁で、パピラがあります(上の写真)。


2019-05-17

リュウキュウミノゴケ


 上はリュウキュウミノゴケ Macromitrium ferriei のようです。 石垣についていました。 帽は取れていますが、同属のミノゴケ同様、帽には上向きの長毛があり、よく似ています。


 上は湿った状態です。 ミノゴケは湿って葉が開いても葉先が腹側に曲がっていますが、本種はほとんど曲がりません。
 茎が長く這い、多くの短い枝を出し、その枝に密に葉をつけている様子は、ミノゴケとほとんど変わりません。


 枝葉は、ミノゴケは舌形ですが、本種は披針形です(上の写真)。 長さはミノゴケとほとんど変わりません。 パピラの多い部分は暗くなっています。


 上は葉身細胞で、長さは10μm以下、3~5個のパビラがあり、細胞の輪郭は分かりにくくなっています。


 上は葉の基部近くの細胞で、パピラは無く、細胞は細長くなっています。

(2019.5.6. 奈良県 吉野山)

2019-05-16

オオミゴケ


 写真は石垣についていたタチヒダゴケ科のオオミゴケ Drummondia sinensis です。 胞子を出して空になった蒴に水が入り込んで美しく見えているのはオマケです。


 あちこちに取れた帽が引っかかっています。 帽は、鐘状ではなく、僧帽状です。

 上の2枚は水に濡れていますが、下は乾いた状態で、葉は枝に接着しています。


 上の写真には帽のついた蒴もありますし、蓋のついている蒴もあります。 蓋には斜めに出る長い嘴があります。 蒴口には短い蒴歯が並んでいます。


 上は群落から一部を取り出したものです。 茎は這い、短い枝をたくさん上方に出しています。


 上は蒴から胞子が出ているところですが、他の蘚類の胞子と比較すると、とても大きな胞子です。 和名の「オオミ」は「大実」で、この胞子のことではないかと思います。


 上は胞子です。 通常、胞子は1細胞ですが、オオミゴケの胞子は多細胞になっていて、長径は 50μm以上もあります。


 枝葉は舌形で葉先は急に鈍く尖り、中肋は太くて葉先近くに達しています(上の写真)。


 葉身細胞は楕円形で厚壁、長さは内径で8~13μmです(上の写真)。

(2019.5.6. 奈良県 吉野山)

2019-04-30

ジングウホウオウゴケ


 コケ観察会で、上のような小さなホウオウゴケをみつけていただき、調べたところ、ジングウホウオウゴケ Fissidens obscurirete でした。 私が見つけたのではありませんので、場所の写真はありませんが、育っていたのは薄暗い谷間の湿った斜面の土上だったとのことです。


 葉の長さは、長いもので1.4mmほどあります。 胞子体は頂生しています。 蒴柄の長さは、平凡社の図鑑では1.5~3mmとなっていますが、上の写真では4mmほどあります。長そうなものを選んだのは事実ですが・・・。


 葉は3~5対のものが多かったのですが、平凡社の図鑑では3~12対となっています。 中肋は透明、明瞭で葉先から短く突出しています。 舷は無いように見えますが・・・


 よく見ると蒴柄近くの葉の腹翼に数列の細胞からなる舷があります。 このままでは葉が重なり合っていて分かりづらいので、葉を1枚剥がして腹翼を中心に撮ったのが下です。


 剥がす時に破れてしまいましたが、腹翼に舷があることは、はっきり分かります。


 上は上翼の葉身細胞で、長さは5~8mm、多くの小さなパピラがあります。

(2019.4.21. 堺自然ふれあいの森)

2019-04-11

チヂミカヤゴケ(雄株)


 太い木の枝に着生していた上の写真のコケ、このような苔類は腹面(基物に接している側)を観察しなければ同定できません。 以下に書く観察の結果はチヂミカヤゴケの雄株のようでした。
 チヂミカヤゴケ Pollera ulophylla は雌雄異株で、雌株はその名のとおりクチャクチャに縮れています(こちらこちら)。 しかし雄株はほとんど縮れません。


 上は腹面からで、腹片にピントを合わせています。 平凡社の図鑑では、チヂミカヤゴケの腹片に関しては、「雌株では舌形で,雄株では三角形,ともに稀に袋状」となっています。 上のように袋状の腹片が続くことは稀なようです。


 上は腹葉ですが、わかりにくいので、赤い線を入れてみたものを下に載せておきます。


 腹葉は茎の2倍ほどの幅で全縁、先端は外曲しています。


 上は葉身細胞です。 油体は小さな楕円体です。

(2019.3.13. 兵庫県三田市)

2019-04-04

蘚苔類の胞子体の足(コツリガネゴケの場合)

 蘚苔類は植物体(=配偶体)と胞子体という2種類の体を持っています。 配偶体は卵と精子による有性生殖によって子孫を作り、胞子体は胞子による無性生殖によって子孫を増やします。 多くの場合、胞子体は配偶体から栄養をもらって寄生的に生活しているため、配偶体の体の一部と誤って見られることも多いようです。 しかし核相から見ても、配偶体の体を作っている細胞の核相は単相(n)で、胞子体の体を作っている細胞の核相は複相(2n)と、異なっています。
 胞子体の体は、蒴、蒴柄、足からなっています。 蒴と蒴柄は外部から見る事ができますが、足は配偶体の体の中に埋まっているため、その存在に気付く人は多くありません。 しかし胞子体の足は大切な働きをしています。 蒴柄が伸びる時には蒴柄を支える働きをしていますし、胞子体が配偶体から栄養をもらうのは足の部分をとおしてです。


 上は昨日載せたコツリガネゴケで、配偶体の葉が集まっている中央から蒴柄が伸びています。 この蒴柄の下に足があるはずで、それを確かめるために黄色の線の所で切片をつくり、顕微鏡で見たのが下の写真です。


 黒い輪郭を持った気泡がたくさん入ってしまいましたが、中央に円形の組織があります。 これが足の組織です。

2019-04-03

コツリガネゴケ

 コツリガネゴケとヒロクチゴケはとてもよく似ています。 平凡社の図鑑のヒロクチゴケの項には「前者(=コツリガネゴケ)に非常によく似るが、・・・かろうじて区別される。」(ボールドにしたのは管理者)と書かれています。 そして、かろうじて区別できる点として、検索表などには次のような違いが書かれています。 なお、「この属は同じ種でも大きさなどに変異が大きい。」とも書かれています。

    中 肋    蒴柄の長さ  蒴の幅 胞子の径 胞子の表面
コツリガネゴケ 葉先に達する ふつう8mm以上 1.1mm以上 15-25μm 密にパビラ
ヒロクチゴケ 葉先から短く突出 ふつう8mm以下 0.9mm以下 25-30μm 密に小さな刺

 なお、余談ながら、和名もこの名前に至るまでの混乱の跡が窺えます。 ツリガネゴケ属(Physcomitrium)の中でコツリガネゴケがいちばん大きいのにもかかわらず、「小(こ)」がつき、ツリガネゴケという和名のコケは無く、釣鐘なのに蓋が取れた跡の口は上を向いて開いています。 ハリガネゴケの仲間あたりとの混同があったのかもしれません。

 閑話休題、上の表の識別ポイントに従って下の写真のコケを調べると・・・



 結論から書くと、以下の結果から、コツリガネゴケ Physcomitrium japonicum のように思います。 撮っている時には、ヒロクチゴケより蒴柄が長い印象を受けました。


 蒴柄は10mmほどありそうですし、蒴の幅も1.7mmほどありそうです。 上の写真では茎の下部は土に埋まっていて、葉は茎の上部に集まっています。 葉は胞子体に栄養を送り続け、かなり弱ってしまっているようです。
 なお、ヒョウタンゴケ科の多くは雌雄同株(異苞)です。 上の写真の右下に見えているのが雄小枝かもしれません(調べるには小さすぎました)。


 下方の葉は小さく、上に行くにしたがって大きな葉になりますが、葉の長さはそれでも4mmほどです。


 上は1枚の葉です。 中肋が葉先に達しているか葉先から短く突出しているかは微妙です。 少なくともルーペレベルでは見分けるのは難しそうです。


 葉先の部分を拡大してみました(上の写真)。 「中肋が葉先に達している」とは葉先に中肋があり、中肋の左右には葉身細胞もある状態で、「中肋が葉先から短く突出している」とは葉先の中肋の左右には葉身細胞が無い状態だと理解しているのですが、ほんとうに微妙です。 ただ、ヒロクチゴケの葉先は、中肋の左右に葉身細胞が無いことが、もっとはっきりしていたと思います。


 葉縁には2~3列の細長い細胞があり(上の写真)、舷はやや分化していると言えるでしょう。


 上は葉の先端から基部に向かって葉長の1/3ほどの所の葉身細胞です。 細胞は方形~六角形で、長さは 30~60μmほどです。


 上は葉の先端から基部に向かって葉長の2/3ほどの所の葉身細胞です。 細胞は方形で、長さは 100μm前後です。
 ちなみに平凡社の図鑑では、葉身細胞の長さは 40~70μmとなっていて、ヒロクチゴケの葉身細胞の大きさに関する記載はありません。


 上は蒴の中にあった胞子らしきもので、径は図鑑の記載にほぼ一致していますが、パピラの存在がよく分かりません。 胞子はまだ出来上がっていないはずで、写真のものが減数分裂後の細胞である確証もありません。 なお、右下隅は蒴の一部です。


 上は蒴の頸部の表面で、たくさんの気孔が見られました。

(2019.4.3. 堺市美原区平尾)

2019-03-29

造精器をつけたハリガネゴケ


 陽の光を遮るものの無い流紋岩の上に、赤褐色になったハリガネゴケ Bryum capillare の群落がありました(上の写真)。 よく見ると、黄色の矢印で示した所などあちこちで、葉に守られるように粒状のものが見られます。 持ち帰り、観察し易くするために周囲の葉を少し落として拡大すると・・・


 上から見て粒状に見えたのは、バナナのように細長い造精器でした。 周囲には雄苞葉や側糸もたくさん見えます。


 上は光学顕微鏡で見た造精器と側糸です。 造精器の上端から何か出ているようで・・・


 倍率を400倍に上げて観察すると、精子がクルクル回っている精細胞がありました(上の写真:トリミングしています)。


 順序が逆になりましたが、ハリガネゴケであることの確認のため、葉を1枚載せておきます(上の写真)。

(2019.3.13. 兵庫県三田市・有馬富士公園)

◎ ハリガネゴケの葉や胞子体などの形態的な特徴はこちらに載せています。

2019-03-20

ヤリノホゴケ


 この私のブログにまだ載っていないからと、ヤリノホゴケ Calliergonella cuspidata をいただきました。 湿地などの土上に生えるヤナギゴケ科のコケということです。



 葉はあまり展開せず、特に枝先では葉は覆瓦状に枝を覆い、まっすぐに尖ります。 和名はこの様子が槍のように見えることからのようです。


 上は茎葉です。 2叉する中肋は短く、欠くこともよくあります。 上の写真でも葉先が2つに裂けていますが、葉先が裂けやすいようで、カバーグラスの重みでほとんどの葉の葉先が裂けてしまいました。


 上は翼部付近です。 葉身細胞は線形で、翼細胞は方形です。 上の写真の左下の大きく薄壁で透明な細胞は、葉を剥がす時についてきた茎の表皮細胞でしょう。


 上は葉の中央部付近の葉身細胞です。 細胞の長さは65~85μmほどです。