2018-11-29

ゴマフボクトウの幼虫



 木の根ぎわの穴からたくさんの木屑が出ていました。 ゴマフボクトウ Zeuzera multistrigata leuconota の幼虫のしわざのようです。 細かいものと少し大きな団子状のものがありますが、前者は木屑で、後者はゴマフボクトウの糞でしょう。 ちなみに、「ボクトウ」を漢字で書けば「木蠹」で、この「蠹」という漢字は「木食い虫」を意味します。

 堺自然ふれあいの森では台風21号で折れたり倒れたりした木を片付けていますが、そのなかにゴマフボクトウの幼虫が入っていると思われる木がありました。 レンジャーのKさんがその木を削っていくと、幼虫が見えましたが、どんどん穴の奥へ逃げ込んでいきます。 幼虫を傷つけないように注意しながら木をどんどん削っていくと、幼虫を穴の奥の行き止まりの所まで追い詰めることができました。 その状態で撮らせてもらったのが下の写真です。


 ゴマフボクトウの幼虫は、各種の樹木の根ぎわから侵入し、根の組織を食害してトンネルを掘っていきます。 ちなみに、この仲間のボクトウガの幼虫は、木の幹の組織にトンネルを掘っていきます。

2018-11-28

ヒロハツヤゴケ



 何度も載せている普通種のヒロハツヤゴケ Entodon challengeri ですが(過去記事)、美しい蒴がついていたので載せることにしました。 育っていたのは波型スレート屋根の上です。 大気汚染にも強く、樹幹や岩の上など、ほんとうにいろんな所で見ることのできるコケです。


 蒴は上向きです。 蒴の長さは、帽も蓋もあって分かりにくいのですが、3mm程度かそれ以下でしょう。 エダツヤゴケの蒴はもう少し長く、4mmに達します。


 上は葉ですが、藻類らしきものがくっついていて、糸状の変な模様が入ってしまいました。 翼部には方形~矩形の細胞群があります。 2叉する短い中肋があるのですが、不明瞭で、上のように中肋部のピントが少しあまくなると、分からなくなります。

(2018.11.14. 大阪府豊能郡豊能町)

2018-11-25

トサホラゴケモドキの無性芽




 トサホラゴケモドキ Calypogeia tosana が無性芽をつけていました。 無性芽は茎の先端や茎の途中から上に伸びた枝先についています。

(2018.11.14. 大阪府豊能郡豊能町)

◎ トサホラゴケモドキの胞子体の様子はこちらに、葉や腹葉や葉身細胞の様子はこちらこちらに載せています。

2018-11-24

イポメア


 上はルコウソウで、学名は Ipomoea quamoclit、イポメア属です。 ルコウソウは熱帯アメリカ原産のツル性の1年生草本で、世界各地に帰化植物として入り込んでいます。 葉の切れ込み方はかなり異なりますが、じつはアサガオ I. nil も イポメア属です。 この属は他にもサツマイモやホシアサガオなど、身近なところで多くの仲間を見る事ができますが、いずれもアサガオに似た放射相称の花をつけます。 ところが・・・



 上はこの秋に京都府立植物園で見た花で、花の色はツボミの時は赤く、次第に白くなるようです。 なかなか美しいおもしろい花だと思って見ていたのですが、ラベルを見ると、キンギョアサガオとあります。 「アサガオ!」と思ってラベルの学名を確かめると、Ipomoea lobata とあり、イポメア属ではありませんか!
 花は生殖器官であり、メシベやオシベがどのようになっているのかは本質的なことがらです。 ツボミがたくさんある割には、メシベやオシベが見られる(=咲いている)花は少なく、花の寿命は短いようですが(その点はアサガオに似ています)、下が咲いている花です。


 ツボミの形態からも想像できますが、メシベやオシベを見ると、放射相称の花ではなく、はっきりとした左右相称の花です。 同じイポメア属にこんな花があるとは驚きです。
 帰宅後に調べてみると、メキシコ~南アメリカに自生している植物で、本来は多年草ですが、寒さに弱く、日本では園芸的には1年草として扱われているようです。 以前は Mina lobata という学名であったようですが(形態を見るかぎり、イポメアとは別属と考えるのは当然でしょう)、遺伝子レベルの研究もあったのでしょうか、現在は上記のようにイポメア属に変更されています。 なお園芸的には、旧学名の「ミナ・ロバータ」という名でこの植物を扱う場合も多いようです。


2018-11-22

ヒメシノブゴケ


 台場クヌギについていた上のコケ、ヒメシノブゴケに思えたのですが、これまでに私が見たヒメシノブゴケは地上か岩上で、木の幹についているのは初めてです。 帰宅後に調べてみても、平凡社の図鑑でも「渓流近くの岩上や地上に群落をつくる。」となっています。
 持ち帰ったサンプルを調べてみました。


 上は茎葉で、先は長く伸びています。 この葉先を詳しく見ると・・・


 茎葉の葉先は透明な1列の細胞からなっています。



 上は茎葉の葉身細胞で、皺になっているところを利用して細胞を斜め横から見ています。 多くの細胞の中央には尖った大きなパピラが見られます。



 毛葉は、短い細胞からなり、各細胞の中央付近には小さなパピラが数個見られ、枝分かれしています(上の写真)。
 これらの特徴から、このコケは、やはりヒメシノブゴケ Thuidium cymbifolium だったようです。


 上は枝葉の葉先近くで、葉先は毛状になっていません。 平凡社の図鑑によれば枝葉の葉身細胞も「先の分かれない鋭いパピラが1個ある。」となっているのですが、上の写真のように複数のパピラがあったり、パピラの先が分かれたりしています。 生育状況によるものでしょうか?

(2018.11.14. 大阪府豊能郡豊能町)

◎ ヒメシノブゴケはこちらにも載せています。

2018-11-20

晩秋のイチョウウキゴケ


 田の土にぴったりくっついているイチョウウキゴケ Ricciocarpos natans です。 育てている方から聞いた話では、水に浮いた状態では冬を越すのが難しく、このような状態で越冬するのだと思われます。


 土がうまく落ちず、ひどい写真ですが、上が断面です。 浮いているイチョウウキゴケで見られたリボン状の腹鱗片は見られず、仮根がたくさん見られます。
 断面を作っても、造精器も造卵器も見られませんでした。 これらは5月頃に見られ、7月には胞子が成熟するようです。

(2018.11.14. 大阪府豊能郡豊能町)

2018-11-19

オオスギゴケ



 奈良・秋篠寺のコケ庭で、スギゴケの仲間がありました(上の写真:2018.11.5.撮影)。
 京都盆地に点在する寺院のコケ庭のスギゴケはウマスギゴケが多いのですが、ウマスギゴケは水分の多い日の当たる場所を好みます。 しかし、ここ秋篠寺のコケ庭は木立が多く半日陰で、ホソバオキナゴケが多く(こちら)乾いているようです。
 このような場所に生えているのはオオスギゴケではないかと思い、数本いただいて帰り、葉の断面を作ってみました(下の写真)。


 平凡社の図鑑によれば、オオスギゴケの葉身細胞の薄板の無い部分は2~5細胞幅で、薄板の高さは4~6細胞です。 上の写真の薄板の高さは3~4細胞と少し生育が悪いようですが、端細胞も卵形で、やはりオオスギゴケ Polytrichum formosum だったようです。
 下は葉の断面の一部を大きく撮ったものです。


◎ オオスギゴケはこちらにも載せています。


2018-11-18

コハタケゴケ?


 田にあった上の写真のコケ、左右のコケと中央のコケは、形態は異なりますが、表面の色あいが似ているので、同種かもしれません。 すくなくとも、中央のコケは、その大きさや形態から、コハタケゴケ Riccia huebeneriana ではないかと思います。
 この中央のコケの断面を作ると・・・


 ウキゴケ科の胞子体は葉状体の中で成熟し、胞子の分散は葉状体が腐ることで行われます。 上の写真では胞子は既に成熟しているように見えます。


 ウキゴケ属( Riccia )では、種を区別するのに胞子の表面の模様が重要な特徴となります。 上は胞子を深度合成したのですが、かえって表面の模様が分かりにくくなってしまいました。


 上は深度合成に使った写真のうちの1枚で、表面の模様が比較的明瞭です。 平凡社の図鑑には、「コハタケゴケの胞子は遠心面の径上に5~7個の網目がある。」と書かれています。

(2018.11.5. 奈良市秋篠町)

2018-11-16

ミドリヤスデゴケ


 上はミドリヤスデゴケ Frullania ericoides です。 よく見るカラヤスデゴケの背片が左右に広がって基物にくっついているのに対し、乾燥した状態の本種の背片は腹側に巻き込み、植物体が円筒形に近い形態になっているように思います。 本種は、その名のとおり緑色のことも多いのですが、上の写真ではかなり赤色を帯びています。


 本種はは湿ると背片が立ち上がります。 上の写真は、被写体に対するカメラの角度は少し違いますが、1枚目の写真とほぼ同じ場所を同じ拡大率で撮っているのですが、全く違って見えます。


 上は腹面から撮っています(深度合成しています)。 赤色を帯びた背片が、緑色をした背片や腹片を紫外線から守っているようにも見えます。
 過去にこちらに載せたミドリヤスデゴケの腹片はウサギの耳型で、上の写真の腹片もウサギの耳型です。 しかしこちらに載せた腹片はヘルメット型で・・・


 今回も探してみると、上のような嘴を持ったヘルメット型の腹片がありました。 腹片にピントを合わせていますので、腹葉は見難くなっています。


 上の腹片はウサギの耳型とヘルメット型の中間ですね。


 上は葉身細胞です。 油体はブドウ房状で、トリゴンは発達しています。(葉身細胞の様子はこちらにも載せています。)

(2018.11.3. 堺自然ふれあいの森)

2018-11-12

ホソバオキナゴケの無性芽的な葉


 上は奈良の秋篠寺のコケ庭です。 ホソバオキナゴケが目立つ庭だったのですが・・・


 上のように遊離した葉がありました。 このような様子は過去にも何度か見た記憶があり、いずれも秋で、混み合った群落では葉が剥がれ易くなっているように思います。
 この遊離した葉は、葉そのものですので無性芽とは言えないでしょうが、葉1枚から無性芽的に新しい株となることができるのではないでしょうか。

(2018.11.5.)

2018-11-10

トウゲシバ


 渓流の脇にあったトウゲシバ Huperzia serrata、増水のせいか泥を被っていましたが、たくさんの胞子嚢をつけていました。


 上の写真の少し緑色を帯びた黄色い袋状のものが胞子嚢で、写真の上部には無性芽も写っています。


 胞子嚢の開裂の様子はこちらに載せているので、今回は胞子嚢の中に入っている胞子を観察してみました。 上がその胞子ですが、そのままでは立体的な形がよく分かりませんので、深度合成したのが下の写真です。


 減数分裂では1つの母細胞が4細胞に分かれますが、トウゲシバの胞子も、そのことを窺い知ることができるような形をしています。

(2018.11.3. 堺市南区豊田)

2018-11-09

オオウロコゴケ


 上は、少し他のコケも混じっていますが、オオウロコゴケ Heteroscyphus coalitus です。 分枝はあまり見られません。


 矩形の葉の両隅には1つずつ歯があります。


 腹面を見ると、腹葉が並んでいます。


 腹面の深度合成もしてみました(上の写真)。 腹葉の形態は少しずつ異なりますが、どの腹葉も2裂し、裂片がさらに2~3裂しています。 この広がった裂片の先まで含めると、腹葉の幅は、茎の 1.5~2倍ほどになります。


 腹葉を顕微鏡(=透過光)でさらに拡大。 腹葉の基部は葉(側葉)とつながっています。


 上は葉身細胞です。 トリゴンはほとんど無く、油体は紡錘形で微粒の集合です。

(2018.11.3. 堺市南区豊田)

◎ オオウロコゴケはこちらにも載せています。