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2025-12-22

チヂレタチゴケ

 チヂレタチゴケ Atrichum crispulum が蒴をつけていました(2025.9.30. 福岡県・古処山)。

 上の背景は1㎜方眼です。 本種は雌雄異株で、写真のものは雌株です。 胞子体をつけていない雌株の配偶体の茎は、上の写真では約5㎝ですが、8㎝に達するようです。 なお、雄株の茎は長くても4cmほどです。
 胞子体の成長のために栄養分を提供するためだと思うのですが、胞子体をつけている配偶体は成長が悪いようです。

 乾くと葉は強く縮れます(上の写真)。 これが和名の由来でしょう。


 葉は舌状で、最も幅広いのは中央部です(上の2枚の写真)。 葉の長さは、上の2枚目の写真では約7.5㎜ですが、鞘状となっている基部が少し失われており、長い葉は1㎝ほどになります。 中上部の葉縁には歯があります。

 背面の中肋上部には歯があります(上の写真)。

 葉縁には1~2列の舷があり、大きな棘状の双歯が並んでいます(上の写真)。

 葉の上半部は不規則に波状となっていて、背面の波状部には上の写真のように歯がありますが、ナミガタタチゴケやヒメタチゴケのような強い波状ではなく、歯も多くありません。

 上は腹面から中肋を撮っています。 中肋上には4~6列のラメラ(薄板)があります。 ラメラは葉身細胞より小さい細胞で構成されています。

 上は葉の断面です。

 上は葉の中肋付近の断面です。 ラメラは2~3細胞の高さしかなく、中肋脇の葉身細胞より明らかに小さい細胞で構成されています。

 上は歯のある葉縁の断面です。

 上は葉身細胞で、右下に少し中肋が写っています。 葉身細胞は横に長く、長さ 15~30μmでした。

 上は蒴です。 蓋には長さ2㎜ほどの長い角があり、帽は5~6㎜の長さがあります。

◎ チヂレタチゴケはこちらにも載せています。

2024-10-30

ハリスギゴケの乾いた姿

 写真はハリスギゴケ Polytrichum piliferum ですが、これを少し持ち帰り、乾いた状態を見ると・・・


 葉が段々についています。 もし新しい葉が出るのが1年に1回だとすれば、写真のハリスギゴケは10年以上育ち続けていることになります。
 なお、2枚目の背景は1㎜方眼、3枚目の最小目盛りは 0.1㎜です。

(2024.9.7. 北八ヶ岳)

◎ ハリスギゴケは下にも載せています。
221102・・・本稿とほぼ同じ針葉樹林内に育った本種
160917・・・樹林内だが環境が適していなかったのか、葉が茎の上部にしかない本種
200917・・・吹きさらしの高山帯に育った本種の葉を中心に
200918・・・上の胞子体を中心に


 

2024-09-23

エゾスギゴケ

 Polytrichum(スギゴケ属)の蒴をつけ、ウマスギゴケやオオスギゴケほどは大きくない写真のコケ、エゾスギゴケ P. ohioense です。 北海道~四国に分布します。

 上は左が湿った状態、右が乾いた状態です。 乾くと葉は茎に接します。

 上は蒴です。 壺は角柱状です。

 上は葉です。


 上の2枚は葉の中央と葉縁近くの横断面です。 薄板の高さは4~5細胞、端細胞は扇形で上壁はほぼ平ら(~少し凹む)です。

 上は葉を腹面から撮った写真で、上が葉先の方向です。 薄板の端細胞を上から見ていることになりますが、端細胞は横長です。

(2024.8.25. 北海道 然別湖の近く)

2024-09-22

ナミガタタチゴケの生殖器官

 伸び始めた蒴をつけたナミガタタチゴケ Atrichum undulatum がありました。 本種は雌雄同株(異苞)です。 写真のような時期なら胞子体の他に雄器も確認できるのではないかと思い、確かめてみました。

 上は茎頂付近の手前の葉を取り除いて撮った写真です。 写真の水色の円がいくつかの造卵器のあった所で、そのうちの1つの造卵器の卵細胞が受精し、胞子体の蒴柄を伸ばしています。 そして赤い楕円形で囲った所が、頂に造精器をつける短枝なのですが、雄苞葉や鱗片葉に覆われ、造精器は見えていません。 これらの小さな葉を取り除くと・・・

 先が少し赤っぽく染まったバナナのような造精器がみえました(上の写真)。 下はこの造精器を顕微鏡で確認した写真で、側糸も写っています。 胞子体がこれだけ生長している時期ですから、もちろん精子は入っていません。

(2024.8.25. 北海道 然別湖近く)

こちらには本種の蒴歯の様子などを、こちらには葉の横断面などを載せています。

2024-09-11

タチゴケモドキ

 


 写真はタチゴケモドキ Oligotrichum parallelum です。 北八ヶ岳の標高 2,100m付近の腐植土に覆われた岩上で育っていました(2024.9.7.撮影)。
 本種は雌雄異株です。 上は雄株のようで、雄花盤が写っています。

 上の写真の上は乾いた状態、下は湿った状態です。 乾くと強く捲縮します。 上の写真の背景は1㎜方眼ですので、茎の長さは約2.5cm、平凡社では2~6cmとなっていますから、少し小形のようです。

 上は葉で、中肋が波打っているようにみえたり、葉身部に線状の色の濃い部分があるのは、薄板があるからです。

 上は葉先付近です。 葉縁には舷が無く、複数の細胞からなる歯があります。

 上は葉の横断面です。 ナミガタタチゴケなどのタチゴケ属(Atrichum)とは異なり、タチゴケモドキ属(Oligotrichum)では中肋の背腹両面に薄板があります。
 腹面の中肋上の薄板は高さ3~6細胞で、上の写真では5列、平凡社では4~6列です。 背面の中肋上の薄板は高さ2~3細胞です。 上の写真では背面の葉身部にも1~3細胞の高さの薄板が見られました。

 上は中肋の横断面です。

 上は葉のほぼ中央の葉身細胞です。

2024-05-28

オオスギゴケの若い蒴と雄株

 岩の崖に育っていた上の写真のコケ、オオスギゴケかと思いましたが、蒴を見ると・・・

 蒴には縦に稜があって大形のものはウマスギゴケとオオスギゴケしか思い当たりません。 両者の区別は蒴があると簡単で、頸部のくびれ方が前者では深く(こちら)、後者では浅い(こちら)と理解していました。 ところが上の写真を見ると、頸部のくびれが全く見られません。
 葉の横断面(写真掲載略)を見ると、やはりオオスギゴケ Polytrichastrum formosum でした。 写真のようなオオスギゴケのまだ若い蒴では、頸部はまだくびれていないようです。
 ウマスギゴケの若い蒴との違いは、他にもいろいろありました。 1つは、蓋の形です。 上のリンクのウマスギゴケと比較してみてください。 もうひとつは帽についている毛の長さです。 ウマスギゴケの和名が、帽の毛を馬のたてがみに例えたところからというのが、分かる気がしました。

 近くには雄器盤をつけた雄株もありました(下の写真)。 これも葉の横断面を作成し、オオスギゴケであることを確認しています。

(2024.5.22. 京都府南丹市 美山)

2023-08-10

セイタカスギゴケ(雄株)

 


 北八ヶ岳でセイタカスギゴケ Pogonatum japonicum が雄器盤をつけていました(2023.6.24.撮影)。

 上は葉の横断面です。 薄板は低く2~5細胞層で、端細胞はしばしば2個に分裂し、表面にパピラがあります。
 上の倍率ではパピラが分かりにくいので、下に倍率を上げた写真(グレースケールに変換しています)を載せておきます。

◎ 本種の全般的な内容は、雌株について観察したこちらに載せています。

2023-04-11

ヤクシマタチゴケ


 写真はヤクシマタチゴケ Atrichum yakushimense でしょう。 ナミガタタチゴケヒメタチゴケは土上に育ちますが、本種は上の写真のように岩上に点々とついていました。 雌雄異株のようですが、たくさん蒴をつけています。
 和名に「ヤクシマ」とついていますし、上は屋久島で撮った写真(2023.3.8.撮影)ですが、分布は北海道~九州となっています。

 ヒメタチゴケより小形で、上の写真で茎の長さは約5mm、平凡社では1cm以下となっています。

 乾くと上のように縮れます。

 上の葉は長さ約5mm、平凡社では8mm以下となっています。 横じわも確認できます。 葉形は平凡社では広楕円状舌形で中央より上がもっとも幅広いとなっていますが、幅は基部と葉先近くを除いてほとんど同じでした。

 上は葉の上部を背面から撮っています。 横じわは弱く、プレパラートにすると不明瞭になりますが、横じわ沿いに少数の歯が並んでいます。

 葉縁には舷があり、双歯が並んでいます(上の写真)。

 上は葉身細胞です。

 上は中肋の断面です。 平凡社には「薄板は痕跡的で1細胞の高さ」とあるのですが、薄板は数枚の葉を観察しても確認できませんでした。 薄板はいつでもどの葉にもあるものではなさそうです。