2022-05-31

エゾキヌタゴケ

 コンクリート製の擬木の上で育っていた写真のコケ、少し持ち帰って調べたところ、エゾキヌタゴケ Homomallium connexum のようです。
 上の写真では蒴歯の見えている蒴はほんの一部で、多くの蒴には蓋がついていますが・・・


 2日後に見たところ、多くの蒴の蓋が取れていました。 ちょうど胞子散布の時期だったようです。
 (こちらでは蒴の美しい時期は過ぎていますが、蒴歯の様子を観察しています。)


 茎は這い、枝は斜上しています。 写真の右の枝先はやや鞭状に長く伸びています。 葉は丸くついています。 上の写真は湿った状態で、葉は開いていますが、乾くと枝にゆるく接します。 枝葉の長さは1~1.5mmです。


 上の2枚は枝葉です。 翼細胞は小形の方形で、たくさん集まり、やや暗い区画を作っています。 下はその部分の拡大です。

 葉身細胞の様子は前に載せています(こちらなど)ので、今回は省きます。

(2022.5.23. 箕面公園)

2022-05-30

エゾハサミムシ


 エゾハサミムシ Eparchus yezoensis が苔むした擬木の上を走り回っていました。 よく見られるコブハサミムシに似ていますが、翅端のハサミがたいへん細長く、前翅の肩に黄褐色の紋があります。
 飛翔力のあるハサミムシで、夜にはよく灯火に飛来します。 飛翔に使う大きな後翅は1/10以下にまで折りたたまれて前翅の下にしまわれているということです。

(2022.5.23. 箕面公園)

◎ ハサミムシの仲間の翅の折り畳まれ方は下の九州大学のホームページに載せられています。
https://www.kyushu-u.ac.jp/en/researches/view/154

2022-05-29

ブチミャクヨコバイの仲間の幼虫

 

 昨日載せたヒメウスグロゴケの蒴にブチミャクヨコバイの仲間の幼虫がいました。 眼にピントの合っていないこの写真1枚で逃げられてしまいましたが・・・ 吸汁していたのでしょうか。

(2022.5.23. 箕面公園)

2022-05-28

ヒメウスグロゴケ(蒴を中心に)

 

 ヒメウスグロゴケ Leskeella pusilla については、3月中旬の帽をすっぽり被った蒴(これも本種の特徴の1つです)をこちらに載せましたが、その帽も取れて胞子を散布していました(上の写真)。
 平凡社の図鑑では本種の生育地は山地の樹上となっていますが、箕面公園ではあちこちのコンクリート製の擬木上にたくさん見ることができます。

 胞子体が若い時の帽は筒状に見えましたが、上の写真を見ると僧帽形の帽です。 蒴柄の長さは 5.5~6.5mmでした。

 上は蒴ですが、蒴歯はあまり目立っていません。

 上は蒴歯を蒴の外側から撮っていて、外蒴歯が内蒴歯より手前にあります。 本種の外蒴歯は短く、パピラに覆われた内蒴歯は外蒴歯より長くなっています。

 蒴の頸部には気孔があります(上の写真の緑色の円内)。

 上は胞子です。

 葉はほとんどが褐色になっていましたし、前回は葉を中心に載せていますので、今回は緑色の残っていた枝葉の写真を上に1枚載せるだけにしておきます。

(2022.5.23. 箕面公園)

2022-05-27

ヒメクサリゴケの造卵器・造精器

 アオキの葉上を撮った上の写真、白い線はクモの糸、小さな葉はカビゴケですが、少し大きな細長い葉はヒメクサリゴケ Cololejeunea longifolia でしょう。 種小名のとおり細長い葉です。

 背片は長楕円形で、長さは幅の3倍ほどあります。 腹片は背片の1/2近い長さです。

 腹片の第1歯は2細胞、第2歯は山形でした。 葉身細胞の壁には中間肥厚が見られます。 分かり易い所を赤い円で囲みました。

 葉身細胞(上の写真)は薄壁で、トリゴンはほとんどありません。 倍率を上げると中間肥厚は分かりにくくなります。
 油体は小粒の集合です。

 上は枝先で、下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。

 葉の下に透けて見える柄のあるAは造精器でしょう。 Bにも何かあるのですが、はっきりしないので、邪魔をしている葉を取り除いたのが下です。 Bは・・・

 Bは造卵器でした。 つまり本種は雌雄同株です。 なお、上の写真で、造精器の柄は葉を取り去る過程でなくなってしまいました。

(2022.5.17. 和歌山県橋本市 根古谷)

◎ ヒメクサリゴケはこちらにも載せています。

2022-05-25

アズマゼニゴケの蒴の開裂と弾糸のつくり

 オカモス関西(岡山コケの会関西支部)では「コケサロン」という集まりをZoomで実施しています。 私も参加者の一人ですが、昨日(2022.5.24.)の会で、N氏がさまざまな苔類の蒴が開裂する様子を動画で紹介されました。 苔類の蒴の裂け方もいろいろだと改めて思った次第ですが、そのうちのアズマゼニゴケ Wiesnerella denudata の蒴の開裂については、すでにこちらに載せているところですが、私も疑問に感じていたことでしたので、改めて取り上げることにします。

 上の写真で、黄色い矢印の蒴が胞子散布を始めています。 平凡社の図鑑では、「(アズマゼニゴケの)蒴は4つに裂ける。」とあります。 しかし、上の写真で4つに裂けはじめていると言えるでしょうか。
 上記の動画を見て、本種の蒴は蒴の先端から裂けるというよりは、「蒴壁は先端から溶けてなくなる」という表現がよくあてはまると思いました。
 下は上よりもう少し進んだ状態です。

 上の開いている蒴は、蒴壁が半分ほど無くなっています。 やはり「裂けている」とは言い難いでしょう。

 上は飛散した胞子と弾糸です。 写真中央下は分枝した異常な弾糸で、下はその拡大です。

 多くの苔類の弾糸には螺旋状の肥厚が見られます。 この螺旋がどうなっているのか、上の写真で色分けして見ると、赤、黄、緑の3本の螺旋があります。 しかし本種の正常な弾糸をいくつか調べたところでは、全て2重螺旋でした。
 保育社の「原色日本蘚苔類図鑑」(「アズマゴケ」となっています)では、「(本種の)弾糸は3らせん。」と記載されています。 まさか上のような異常な弾糸に注目したわけではないでしょうが、条件によっては3重螺旋になるのかもしれません。 私も何かの種で3重螺旋の弾糸を見たように思うのですが、その種が何だったのか、思い出せません・・・。

 上は観察に用いた本種の生育していた様子で、オオジャゴケと並んでいました。 なお、上の写真は 2022年4月28日に箕面公園で撮影したものです。

◎ 本種の10月の造卵器・造精器の様子はこちらに、年を越した4月の様子をこちらに載せています。 また、配偶体の様子はこちらに載せています。

2022-05-24

カビゴケの胞子体

 

 アオキの葉の上でカビゴケとヒメクサリゴケが混生していました。 上の写真の「1」で示した小さな葉がカビゴケで、「2」で示した大きな葉がヒメクサリゴケです。
 カビゴケ Leptolejeunea elliptica はたくさんの胞子体をつけていました。 上の写真の「3」は胞子体を包み込んでいる花被で、5稜があり、稜の先は短角になっています。 そして「4」が花被から突き出た胞子体です。 「5」は開裂し胞子を出し終えた蒴の蒴壁ですが、湿っているために綴じて丸くなっていますが、細い弾糸が少し見えている場合が多くありました。
 なお、数十m離れた所にあったカビゴケは全く胞子体をつけていませんでした。 本種の胞子体形成の季節が不定なのか、季節は決まっているが、その時に発達した状態の群落でないと胞子体をつけないのかは分かりませんが、前者であるような気がします。

 上は花被に保護されている胞子体で、間もなく花被から外に出るでしょう。 花被は上の写真のように側枝の先につきます。 ちなみに、本種は雌雄同株で、雄苞葉も側枝につくようです。

 上は蒴を花被の外に出した胞子体です。

 上は胞子を散布し終えた蒴です。 湿っているため、4裂している蒴壁は閉じています。 弾糸の壁は、よく見られる螺旋状の肥厚ではなく、ランダムに肥厚しています。

 配偶体の様子はこちらなどに載せていますので、胞子体をつけて弱っていることもあり、今回は重複を避けますが、カビゴケであることの証明に代えて、1枚だけ葉の細胞の様子を下に載せておきます。 眼点細胞が散在しています。

(2022.5.17. 和歌山県橋本市 根古谷)

2022-05-22

ハングロアツバ

 写真はヤガ科アツバ亜科のハングロアツバ Bomolocha squalida でしょう。 南海高野線紀見峠駅構内の壁にとまっていました(撮影:2022.5.17.)。
 幼虫の食餌植物はウメなどのバラ科とツツジ類で、成虫の出現期は5~8月です。 同じ属のヤマガタアツバなどとよく似ていますが、本種の前翅後縁中央に接する褐色の帯は前翅後縁と並行です。

 下唇髭は上下に分かれています(上の写真)。

2022-05-21

キバネオドリバエ

 写真はキバネオドリバエ(キバネオオヒラオドリバエ) Empis latro のオスでしょう。 苔むした擬木の上でたたずんでいました。

 カメラを近づけると逃げ始めましたが、飛び立とうとはしませんでした。 羽化したばかりだったのでしょうか。

(以上、2022.5.5. 箕面公園)

 オドリバエの仲間は捕食性で、他の昆虫を捕らえ、長い口吻で体液を吸うのですが、おもしろい交尾をすることでも知られています。 オスは餌となる昆虫を捕まえてメスにプレゼントし、メスが餌に夢中になっている間に交尾します。
 下は本種のその様子を撮った写真で、Part1の 2014年4月28日に載せていたのですが、こちらに引っ越しさせました。 2014.4.23.に京都府木津川市の山城国分寺跡で撮影した写真です。

 上の写真は、いちばん下が餌のケバエ、中央が食餌中のメス、いちばん上がオスです。 オスは、前脚で葉につかまり、中脚と後脚でメスを抱きかかえています。

 メスはオスからプレゼントされた餌に夢中で、口吻を餌に刺し込んでいます。

2022-05-20

蒴をつけたクチキゴケ

 

 上はクチキゴケ Odontoschisma denudatum です。 蒴をつけて配偶体はかなり弱っているようです。

 育っていたのは朽ちた切り株です(上の写真)。

 苔類の蒴柄の長さは条件によってかなり変化しますが、それにしても長い蒴柄です。

 花被は短腹枝に頂生して紡錘形、口部は微鋸歯状です。

 上は葉身細胞です。 トリゴンは大きく、油体は球形~楕円体で、小粒の集合です。

(2022.5.5. 箕面公園)

2022-05-19

ウロコミズゴケ

 

 北海道の湿原に育つウロコミズゴケ Sphagnum squarrosum(上の写真)を観察する機会を得ました。 本種は前に北八ヶ岳産のものを載せていますが(こちら)、大形で枝葉の先端が背方に反り返るなど比較的分かり易い特徴を持っているため、何度か観察はしているのですが、これまでブログの記事にまとめることをしておらず、今回が2回目の掲載になります。
 今回は前回あまり詳しく観察しなかった枝葉を中心に観察しました。


 上の2枚は、カバーグラスで押されて扁平になっていますが、枝葉を横と腹面から撮った写真です。 枝葉は広楕円形の基部から急に細くなり、細くなった所が強く反り返ります。

 上は枝葉の中央部(細くなるあたり)を背面から撮っています。 下はほぼ同じ所を腹面から撮っています。 ピントはいずれも透明細胞の線状肥厚に合わせています。

 背面からの写真に比較して、腹面から撮った写真では、はっきり写っている孔が多くなります。 これは背面の孔に比較して腹面の孔の縁が厚いからでしょう。

 上は枝葉腹面ほぼ中央の拡大で、孔の縁にピントを合わせていますので、葉緑細胞はボケています。 孔は縁が肥厚したリング孔であることが分かります。


 上は枝葉の断面とその一部の拡大です。 葉緑細胞は背腹両面に開いています。

 上は枝の表皮です。 レトルト細胞は確認できませんでした。

 上は、破れてしまいましたが、茎葉です。 舷は基部の縁に少しあるだけです。