2023-04-30

ヤノウエノアカゴケ

 

 上の写真のコケ、名前を調べてほしいと頼まれたコケですので、生育状況を示す写真はありません。 葉の長さ1~1.5mm、茎の高さ3~5mmの小さなコケで、蒴柄は赤っぽい色をしています(撮影:2023.4.24.)。
 町中にあったコケで、珍しいコケではないはずなのに、どうしても分からず、facebookに載せたところ、N先生からヒントをいただき、ヤノウエノアカゴケ Ceratodon purpureus にたどりつくことができました。
 分からなかった原因は、よく見る本種とは葉形がかなり異なっていたからですが、N先生によると、本種の葉は伸びたり伸びなかったりして、よく騙されるとのことです。

 上が問題の葉です。 2枚の葉を載せていますが、他の葉も同様で、卵形に近い形をしています。 平凡社の図鑑では、本種の葉は「幅広い披針形~披針形」となっていて、私がこれまでに見た本種の葉もそのような葉で、基部が最も幅広く細長い葉でした。 しかし、この葉形以外の特徴は、上の写真で葉先近くを除き葉縁が外曲していることを含め、たしかに本種の特徴をよく表しています。

 上は葉先です。 葉先近くの葉縁には小さな歯があり、中肋は葉先に届くか短く突出しています。

 葉の中部~上部の細胞は方形~短い矩形です(上の写真)。

 上は葉の断面です。 断面で見ても葉身細胞にパピラはありません。 中肋はステライドが背面にあります。

 蒴は傾いてつき、基部にこぶがあります。 蓋は円錐形です。 帽は長いのですが、蓋はそんなに長くはなく、先は尖っていません。

 上は若い蒴の蓋を無理やり剥がして蒴歯を撮っています。 口環はよく発達しています。 蒴歯は基部近くまで2裂し、明瞭な関節があります。 蒴歯全面にとても細かいパピラがあるようです。

◎ ヤノウエノアカゴケはこちらこちらにも載せています。

2023-04-28

ヤクシマゴケ


 写真はヤクシマゴケ Isotachis japonica です。 屋久島ランド線の道路わきの湿った岸壁を覆っていました(2023.3.9.撮影)。 所々紅色を帯びるのは本種の特徴です。
 本種は東アジアから東南アジアにかけて分布していますが、日本では屋久島以外では確認されていません。

 上は腹面から撮っています。 大形の苔類で、上の写真では葉を含めた茎の幅は約4mmあります。

 乾くと上のように縮れます。

 上は写真下方の腹葉を1枚外して撮っています。 腹葉は重なり(写真中央と上の腹葉)、腹葉と葉は接していません。

 上は葉です。

 上は腹葉です。

 上は葉身細胞です。

◎ ヤクシマゴケはこちらにも載せています。

2023-04-26

ヒダハイチイゴケ?

 樹液が保水能力を高めているのか、単に水が溜まりやすい場所なのか、樹幹に小さな葉の密なコケ群落がありました。

 葉は卵形で非対称、やや扁平につき、長さは1mm未満です。

 葉の上部には細かい歯があります。 中肋は短く2叉している葉もありましたが、多くは不明でした。

 上は葉身細胞で、長さは 90~110μmです。

 上の写真の中央には、たくさんの棒状の無性芽が写っています。

 上は無性芽をつけた枝ですが、これを見ると無性芽は枝由来のように思えます。

 上は無性芽で、長さは約 350μmでした。

 以上が観察結果ですが、葉の大きさや形から、ヒダハイチイゴケだと思っていたのですが、葉身細胞の長さからはアカイチイゴケのように思えます。 また無性芽は両種の中間的な形をしています。 どちらか迷ったのですが、線形の細胞の長さは変化しやすいように思いますので、ヒダハイチイゴケ Pseudotaxiphyllum densum としておきたいと思います。

(2023.3.11. 屋久島)

◎ ヒダハイチイゴケはこちらにも載せています。

2023-04-24

無性芽をつけたアブラゴケ

 アブラゴケ Hookeria acutifolia が葉先に無性芽をつけていました。

 上の写真は屋久島で 2023.3.10.に撮影しました。 本種については、屋久島産と大阪付近で見るものとで違いはほぼ無いでしょうが、これまでスケールを入れた写真や無性芽をきっちり撮った写真を載せていませんでした。

 葉は重なり合い、葉を含めた茎の幅は5~7mmです。

 葉は卵形、全縁で長さ3~4mm、中肋はありません。

 無性芽は紡錘形で、葉先から伸びた柄の先に作られます。 上の写真の右下では、無性芽が柄から離れようとしています。

 葉身細胞は六角形で長さ70~130μm、葉縁に舷はありません(上の写真)。


 上は茎の横断面です。

◎ 本種の葉には、無性芽のみではなく、仮根がつくことがあり、その様子をこちらに載せています。 またこちらには本種の蒴の変化を載せています。


2023-04-22

イボヒメクサリゴケ


 上は屋久島で見たコケで、岩にくっついていました。 平凡社の検索表をたどると、イボヒメクサリゴケ Cololejeunea macounii のようです。 分布は北海道~琉球となっています。 基物は平凡社では樹幹となっていますが、水谷(1998)によれば、「主として樹皮、稀に露岩や生葉上に着生」となっています。

 Cololejeunea(ヒメクサリゴケ属)には腹葉はありません。 背片の背縁は弱い鋸歯状です(上の写真)。

 上は葉を背面から撮っています。 葉の中部や上部の細胞にはパピラがあります。

 パピラは大きく短く、先の丸い円柱形です(上の写真)。

 上は葉の基部近くを背面から撮っています。 背片に眼点細胞はありません。

 腹片の第1歯は金槌形で2細胞長、第2歯は狭三角形で数細胞(平凡社では1~5細胞)からなっています(上の写真)。

【参考文献】
水谷正美:イボヒメクサリゴケの再検討.蘚苔類研究7(5).1998.
水谷正美:日本産クサリゴケ科の再検討.服部植物研究所報告第24号.1961.

2023-04-20

コクシノハゴケ

 岩の壁を這うコケ、上の写真にはいろいろなコケが写っていますが、多くはコクシノハゴケ Ctenidium hastile です。

 特に這うタイプの蘚類は、育ち方でずいぶんと印象が変わります。 本種も、上の写真のように、茎が長さの揃った枝を左右にたくさん出しながらまっすぐに伸びている場合と、こちらのような密な群落をつくっている場合とでは、ずいぶんと印象が異なります。

 乾いた状態と湿った状態で、葉はほとんど変わりません。 枝の幅は葉を含めて約1mmです。

 上の写真は茎葉(中央)と枝葉(上と下)です。

 翼部の細胞はあまり明瞭な区画を作っていません(上の写真)。

 上は茎葉中央部の葉身細胞です(グレースケールに変換しています)。

(2023.3.10. 屋久島)

こちらには胞子体をつけた本種を載せています。 またこちらでは、よく似たクシノハゴケと比較しています。

2023-04-18

ヒメハミズゴケ

 ヒメハミズゴケ Pogonatum camusii の胞子体が伸びてきていました(2023.3.10. 屋久島にて撮影)。 上の写真では下の方はチャボホラゴケモドキなどに覆われて見えませんが・・・

 基物上を宿存性の原糸体が覆い、その上に退化した配偶体が散生し、その配偶体の上に胞子体がついています。 この様子はハミズゴケに似ていますが、ハミズゴケよりずっと小型です。

 上は葉の上部が少し欠けていますが、茎の最上部についていた葉です。 三角形の基部から針状に伸び、長さは約4mmです(上の写真は最小目盛りが 0.1mmです)。

 上は葉の上部です。 中肋は不明瞭です。

 葉の横断面でも中肋ははっきりしません(上の写真)。 本種はスギゴケ科ですが、薄板はありません。

 上は葉身細胞です。

 上の写真の蒴柄は下部に少し色が出ているだけで、長さももう少し伸びるのでしょう。 平凡社では、蒴柄は褐色~赤褐色で長さ 1.5~1.8cmとなっています。

 上は蒴柄の一部で、パピラがあります。 ハミズゴケの蒴柄にパピラはありません。

 上は原糸体です。