写真はマキバハナゴケ Cladonia polycarpoides だと思います。 鱗は表面が灰緑色、裏面が白色で、湿った状態では表面しか見えないのですが、乾くと上の写真のように巻き上がって白い裏面がとてもよく目立ちます。 和名は「巻き葉」で、この様子に由来しているのでしょう。
写真の中央やや右上に子柄・子器が写っています。 本種が子柄・子器をつけるのは珍しいことです。
(2024.12.17. 兵庫県三田市)
北海道・雄阿寒岳山麓で見たシラウオタケ Multiclavula mucida です(2023.9.9.撮影)。 倒木に生えるきのこで、若い時は真っ白ですが、古くなると先端部が褐色になってきます。
子嚢菌のような姿ですが、近年の分子系統解析の結果は、担子菌類のアンズタケ目とするのが妥当だろうということになっています。 子実層は子実体表面の少しうねっているようにみえる所に作られるようです。
上の2枚の写真でもそうですが、本種の生えている周辺は緑藻で緑色になっています。 本種はこの緑藻に菌糸を絡ませ、緑藻と共生していることが知られています。
地衣類は菌類が藻類を取り込んだ共生体です。 上の写真も地衣類が子実体を出している姿と見ることができます。 つまり本種は地衣類でもあるわけで、地衣類として「キリタケ」という名前も持っています。
藻類と共生関係を持つ子嚢菌類は多いのですが、担子菌類は本種を含め数種がしられているのみです。
はじめに少し地衣類の話を・・・
地衣類は菌類と藻類の共生が高度化し、あたかも単独の生物のように見ることもでき、かつては独立した分類群として扱われたこともありました。
しかし生物として大切な生殖のしくみは菌類によって決められていますし、同一の地衣類で別の藻類が見られる場合もあり、最近では地衣類は菌類の生き方の選択肢の1つとされ、国際植物命名規約でも、地衣類に与えられた学名は、それを構成する菌類に与えられたものとみなす、と定められています。
地衣類として生きている菌類の大部分は子嚢菌です。 これを子嚢菌側から見ると、子嚢菌は菌として菌根を形成したり、地衣化するなど、さまざまな生き方を工夫していると言えるでしょう。 なお、地衣化は多起源で、特定の分類群の子嚢菌に限られたものではないようです。 ちなみに、子嚢菌の約1/4が地衣化しているとのことです。
上の写真の地衣類はセンニンゴケの仲間(コナセンニンゴケ?)でしょう。 菌類の分類はまだ確定されていませんが、ある分類によれば、子嚢菌門チャワンタケ亜門チャシブゴケ綱モジゴケ亜綱センニンゴケ目センニンゴケ科の1種ということになります。 なお、チャシブゴケ綱の多くは地衣化していて、ウメノキゴケやサルオガセなども、この分類群に含まれます。
チャシブゴケ綱の子嚢菌は子嚢盤を形成します。 センニンゴケの子嚢盤はまるでキノコのようですが、そもそもキノコとは比較的大きな子実体をいう俗称であり、子嚢盤も子実体です。
(2021.7.23. 京都府 けいはんな記念公園)
ブナの幹についていた大きな葉状地衣、カブトゴケ属( Lobaria )の一種でしょう。 カブトゴケ属は22種あるとされ、主たる共生藻が緑藻である緑色カブトゴケ類と、主たる共生藻がシアノバクテリアである藍色カブトゴケ類に分けられますが、写真のカブトゴケは前者になります。
下は上の一部の拡大です。
上の写真の左の地衣体の縁にたくさんついているのは円筒状裂芽でしょうか。 当初絵合わせで、写真の地衣はナメラカブトゴケではないかと思っていたのですが、ナメラは栄養繁殖器官を持たないはずです。
(2021.7.9. 秋田県 岩手県寄りの標高800m地点)
上はコアカミゴケ Cladonia macilenta だろうと思います。 こちらは暖温帯に分布の中心を持つ地衣類で、地上や樹皮上などに生育する普通種です。 上は 2016.7.13.に京都市の西芳寺川で撮った写真です。