2023-09-30

ホソツクシタケ

 

 写真は、昨年のホオノキの穂状花序に生えたホソツクシタケ Xylaria magnoliae です。 和名を漢字にすると「細土筆茸」でしょう。 雄阿寒岳の山麓で 2023.9.9.に撮影しました。 この近縁種には、本種のように特定の植物体から発生するものがたくさんあるようです。

 本種はクロサイワイタケ科に分類されている子嚢菌です。 春の発生時には、表面が分生子に覆われて白いようですが、夏から秋にかけて子嚢殻が形成され、上の写真のように表面が粒状になるにつれて黒っぽくなるようです。

 拡大すると、各子嚢殻の中央に小さな突起が見られます(上の写真)。 ここから胞子が噴出するのでしょう。

2023-09-29

マルバヤバネゴケ?

 

 写真の花被をつけたコケ、2023.9.10. 北海道・雌阿寒温泉近くの森にあったコケです。 マルバヤバネゴケ Cephalozia lunulifolia だと思うのですが、平凡社では分布は本州~九州となっていて、北海道には分布しないことになっています。

 葉は茎に斜め~縦についています。

 葉は2裂し、裂片は披針形~三角形で、先端は相接しています。 葉の背縁基部は長く下延しています。 腹葉はありません。

 葉身細胞は 15-35×15-35μmで、油体はありません(上の写真)。

 上は茎の横断面です。 大きな表皮細胞に囲まれて、厚壁の小さな髄細胞があります。

 花被の基部は多くの雌苞葉に囲まれています(上の写真)。 平凡社には「雌苞葉の外縁の刺が1個と少なく(以下略)」とあり、たしかにそのような雌苞葉もあるのですが(上の写真の赤い矢印)、それ以外の形態の雌苞葉もいろいろありました。

 上は花被の口部です。

◎ マルバヤバネゴケと思われるコケはこちらにも載せています。

2023-09-28

ウスバゼニゴケ(雄株)

 ウスバゼニゴケ Blasia pusilla は雌雄異株です。 上は雄株で、葉状体背面の中肋上に造精器が入っていた膨らみがたくさん並んでいます。

 上で「造精器が入っていた膨らみ」と書いたのは、拡大してみるとこの膨らみには孔が開いているからで、精子が出てしまった後でしょう。

 上は葉状体の中肋部の横断面です。 気泡が入ってしまいましたが、造精器のあった所は空洞になっています。 腹面の右側には腹鱗片がついています。

 最初の写真でも、まだ造精器の残っている所があちこちに見られます。 上はその部分の断面です。

(2023.9.10. 北海道 オンネトー)

こちらには葉状体内に胚のある本種の雌株を、こちらには本種の無性芽器と無性芽を、こちらには葉状体の細胞などを載せています。

2023-09-27

ハイヒバゴケ


 上は北海道の支笏湖近くの美笛峠で泉田氏が2023.8.29.に撮影されたコケですが、このコケを送っていただき、調べたところ、ハイヒバゴケ Hypnum cupressiforme のようでした。
 平凡社では、本種は岩上や木の根元に生えるとありますが、上の写真では根元ではありません。 しかし Wikipedia によると、本種は世界的な非常に広い分布を持つコケ植物で、生息環境なども多岐に渡るが、通常は木の幹や丸太、壁、岩、その他の表面などで生育するとあります。

 茎は這い、不規則な羽状に分枝しますが、変異が非常に大きい種で、これまでに載せたこちらこちらなどと比較しても、分枝の様子や葉先の曲がりぐあいなどで、かなり肉眼~ルーペレベルの印象が異なるように思います。

 葉は卵形の葉身部から急にまたは次第に細くなり、葉先は鎌状に曲がるかまっすぐ、翼部は暗緑色~褐色の明瞭な区画をつくっています。 また、上の写真の右側の葉のように、下部でしばしば反曲します。

 翼部には方形の細胞が多数見られ、縁に沿っては6~15個が並びます。

 上は葉先です。 葉先に限らず、葉縁はほぼ全縁か、わずかに目立たない歯があります。

 葉身細胞は線形で、長さ40~60μm、幅3~5μmです(上の写真)。

 偽毛葉は糸状です(上の写真)。

 上は茎の断面です。 茎の表皮細胞は分化していません。

 上は蒴です(泉田氏撮影)。 蒴はやや傾いてつき、円筒形で少し曲がっています。

 上は雌苞葉です。 近縁の何種類かには雌苞葉に縦じわがあるのですが、本種の雌苞葉は披針形でしわはありません。

2023-09-26

チシオタケ

 写真はチシオタケ Mycena haematopus でしょう。 朽木に生えていました。 傘の縁にはフリンジと呼ばれる鋸歯状のつくりが見られます。 柄は傘より濃い赤い色をしているのですが、その表面は細かい綿毛状の繊維に覆われています。

 本種の大きな特徴は、若いきのこでは傷口から赤色をした液が内部から染み出てくることでしょう。 和名もここから来ていますし、種小名も、「hemato」は「血液」を意味するギリシャ語です。 上の写真の黄色の矢印の所でも“出血”しています。
 ひだは柄に対して直生します。 最初は白色ですが、時間経過とともに傘に似た色になってきます。

(2023.9.23. 箕面公園)

2023-09-25

ヒメアカネ

 写真はヒメアカネ Sympetrum parvulum でしょう。 大阪府豊能郡能勢町の地黄湿地にたくさんいました(2023.9.24.撮影)。 湿地で見られるトンボ科アカネ属のいわゆる赤とんぼで、和名のとおり国内の赤とんぼでは最小です。
 本種はマユタテアカネよりひと回り小さいのですが、胸側面の黒色条の様子など、よく似ています。 両者のオスの確実な違いは腹端の上付属器の形で、マユタテアカネのそれが大きくそり上がっているのに対し、本種の腹端の上付属器は反りが弱く、ほとんど平らです(下の写真)。

 ところで、上の写真はオスが腹端の付属器でメスをつかまえていると同時に、メスはオスの腹部に4本の脚でとまっています。 このように、静止している時には4本の脚しか使わない昆虫がたくさんいることを、「昆虫の脚はなぜ6本か」に書いています。

2023-09-23

シラウオタケ

 

 北海道・雄阿寒岳山麓で見たシラウオタケ Multiclavula mucida です(2023.9.9.撮影)。 倒木に生えるきのこで、若い時は真っ白ですが、古くなると先端部が褐色になってきます。
 子嚢菌のような姿ですが、近年の分子系統解析の結果は、担子菌類のアンズタケ目とするのが妥当だろうということになっています。 子実層は子実体表面の少しうねっているようにみえる所に作られるようです。
 上の2枚の写真でもそうですが、本種の生えている周辺は緑藻で緑色になっています。 本種はこの緑藻に菌糸を絡ませ、緑藻と共生していることが知られています。

 地衣類は菌類が藻類を取り込んだ共生体です。 上の写真も地衣類が子実体を出している姿と見ることができます。 つまり本種は地衣類でもあるわけで、地衣類として「キリタケ」という名前も持っています。
 藻類と共生関係を持つ子嚢菌類は多いのですが、担子菌類は本種を含め数種がしられているのみです。

2023-09-21

イヌサナダゴケ

 写真はイヌサナダゴケ Platygyrium repens だと思います。 樹幹についていました。 分布は平凡社では北海道~四国となっています。 写真中央のやや右上に蒴がありますが、蒴は直立し相称です。


 上の2枚の写真は同じ枝で、上が乾いた状態、下が湿った状態です。

 全ての枝ではありませんが、枝先近くの葉腋には多くの小枝状の無性芽(早落性小枝)がついていて、枝先がボサボサしているようにみえます(上の写真)。 これは最初の写真でも分かります。

 上は茎葉で、卵形で凹み(しわの様子で分かります)、葉先はやや急に細くなっています。 ほぼ全縁で、下部で狭く反曲しており、その部分の色が濃く見えています。 中肋は無いか、短く2叉しています。

 上は翼部です。 翼部の細胞は方形~矩形で多数あり、葉縁に沿って8~12細胞が並びます。

 葉身細胞は狭い六角形~線形です(上の写真)。

 上は偽毛葉です。 偽毛葉は糸状で、基部はときに上の写真のように2細胞列になります。


2023-09-20

ハネヒラゴケ


 写真はハネヒラゴケ Neckera pennata だと思います。 雄阿寒岳山麓のエゾマツ?の樹幹についていました(2023.9.9.撮影)。
 ヒラゴケ属の同定で重視される蒴は見つかりませんでしたが、形態的にも観察地からも間違いないと思います。

 一次茎は小さな葉をつけてはい、そこから立ち上がった二次茎はやや密に不規則な羽状に分枝し、各枝は同じ平面上に広がっています。

 他の葉に覆われている葉の基部にはしわは無いのですが、葉のみえている部分には著しい横じわがあります。


 上の2枚は枝葉ですが、プレパラートにすると横しわははっきりしなくなります。 長さ2~2.5mmで左右非相称、葉先は鋭頭です。 短い中肋があるのですが、はっきりしない場合もあるようです。

 葉縁には細かい鋸歯があります(上の写真)。

 上は葉身細胞です。

2023-09-18

エゾムチゴケ

 エゾムチゴケ Bazzania trilobata がたくさんの蒴をつけていました。

 込み合った群落で、二又状になった枝はとても少なく、枝はそれぞれ上へ伸びています。 このように密集していることが蒴をつけていることと関係しているのではないかと思いました。
 写真の右下には腹面が写っていますが、葉の先端はほとんど内曲していません。

 葉は乾いてきて内曲していますが、茎の幅は葉を含めて4~5mmあります。 

 上は腹面から撮っています。 腹葉の幅は茎径の2倍以下です。
 ムチゴケ属の同定で、葉と腹葉は基部で合着する/しないが1つのポイントになります。 上の写真では、①では合着しているようにもみえますが、②では明らかに離れています。 これは、葉と腹葉は互いに自由度を持って離れてついているが、①ではたまたま距離が近かったと理解すべきでしょう。

 上は葉で、先端には3個の歯があります。 葉の長さは2~3mm、幅は約1.5mmです。

 上は葉の葉身細胞です。 油体は均質です。

 上は腹葉です。 先端は1/5~1/4まで不規則に裂け、鋸歯状です。

 上は胞子散布中の蒴です。

 上は胞子と弾糸です。

(2023.9.10. 北海道 雌阿寒温泉近く)