2018-03-29

ススキゴケの蒴


 蒴をつけたススキゴケ Dicranella heteromalla は前にも載せていますが(こちら)、今回は蒴の正面近くから撮ってみました。


 シッポゴケ科の蒴には内蒴歯が無く、外蒴歯のみの16本で、蒴歯の先端は2裂することが多いのですが、ススキゴケの蒴もそのようになっています。

(2018.3.14. 高槻市 中畑)

2018-03-26

オカムラケビラゴケ?


 上の写真の樹幹に張り付いているコケは、主にはオカムラケビラゴケ Radula okamurana と教えていただいたのですが、ヒメケビラゴケなどとの違いがよく分かりません。と書いたところ、次のように教えていただきました。
 大きさは オカムラ > ヒメ、下辺の先が尖ったり突出することがある頻度は オカムラ > ヒメ、葉が欠落する傾向は オカムラ < ヒメ とのことです。
 上の写真にはシゲリゴケなども少し混じっています。


 上の写真で、緑の濃い方がオカムラケビラゴケで、右下の明るい緑のものはシゲリゴケです。 写真のほぼ中央の少し上にはオカムラケビラゴケの花被が見えます。
 オカムラケビラゴケの特徴は、平凡社の図鑑の検索表によると、茎の先端がひも状になって立ち上がることがあり、このひも状の枝は背片が落ちやすく、腹片は茎に圧着するとのことですが、そのような枝はみつけられませんでした。


 背片は円頭で、腹片の長さは背片の2/3以下です。 花被は茎に頂生しています。 下はその拡大です。


 ①は葉が融合し変形した花被、②は造卵器の壁の細胞が発達したカリプトラ、③がだろうと思います。


 上は花被を破り、雌花序の基部を見たものです。 左右に見えるのは発達しなかった造卵器の頸でしょう。


 上は茎にピントを合わせています。 ケビラゴケ科には腹葉はありません。 平凡社の図鑑ではオカムラケビラゴケの腹片の基部は茎をわずかに覆い、ヒメケビラゴケの腹片の基部は茎を覆わないとあるのですが、この違いもよく分かりません。


 上は葉身細胞で、細胞壁は薄く、大きなトリゴンが見られます。 各細胞に1個の大きな油体があるのはケビラゴケ属の特徴です。 ピントを少しずらして細胞の表面を見ると・・・


 細胞の表面はベルカ状です。

(2018.3.14. 高槻市 中畑)

2018-03-25

ジュズダニ科の一種


 樹幹のコケを調べていると、ダニが這い出してきました。 ジュズダニ科 Damaeidae の一種のようです。 体長は 0.8mmでした。
 ジュズダニの名前は、脚の各節の先端が膨らんでいて数珠のように見えることからのようです。 体の後半が妙にややこしく見えるのは、何かを被っているからでしょう。
 このような小さな被写体は深度合成したいところですが、動き回られては不可能です。


 上は背地を黒くして正面から撮影したものです。耳のような丸いもの(1枚目の写真でもよく分かります)から1本の毛が出ていますが、これらはそれぞれ胴感杯、胴感毛と呼ばれていて、触角の役割をするものと言われています。

(2018.3.23. 堺自然ふれあいの森)

2018-03-22

カギゴケ


 スギの樹幹に張り付いていた糸くずのようなコケ、葉の形は三角形に近く、茎の幅は葉を含めて 0.2~0.3mmほどです。


 顕微鏡で見ても、クサリゴケ科だろうとは思いましたが、そこまで。 Mさんにお聞きして、カギゴケ Drepanolejeunea vesiculosa だろうと教えていただきました。 平凡社の図鑑で確かめると、検索表には載せられていますが、種別の解説はありませんでした。


 上は葉を1枚剥がして背面から見たもので、腹片もぼんやり見えていますが、背片がはっきりするように深度合成しています。 背片の先は鎌状に曲がっています。


 上は背片の葉身細胞を見ていますが、細胞壁は中間肥厚しています。


 上は腹葉の様子が分かるように深度合成したものです。 第1歯(歯牙)は大きな単細胞で目立っています。


 上は腹葉の様子が分かるように深度合成したものです。 腹葉は2裂し、葉掌部上縁の細胞は方形、裂片の基部の幅は2細胞です。

(2018.3.14. 高槻市 中畑)

2018-03-20

ジャゴケの胞子と弾糸

 昨日はジャゴケの雌器托の特に柄のつくりについて書きましたが、雌器托の断面を作る時に、ほぼ完成した胞子と弾糸を見る事ができましたので、ここに載せておきます。


 上の写真の3~4本のらせん肥厚のある細長いものが弾糸で、丸いものが胞子です。


 上は弾糸(一部)と胞子の拡大です(深度合成しています)。 胞子の表面には大小の小突起が密生しています。

2018-03-19

ジャゴケの雌器托

 ジャゴケは胞子が完成すると、胞子をできるだけ遠くへ飛ばすためでしょうか、雌器托を急に長く伸ばし、胞子を散布します。 そろそろあちこちで長く伸びた雌器托(こちら)を見ることができるでしょう。


 上は5日前に高槻市で撮った、まだ雌器托の柄が伸びきっていないジャゴケ(オオジャゴケかな?)です。 柄を切るには適した時期だと思い、断面を作ってみました。


 上がその雌器托柄の断面です。 「C」の字が肥厚して中央に孔が空いたように見えますが、この孔が外部とつながっていて外からは溝のように見える所は、実際には腹面(=地面側)になります。 下は上の一部の拡大です。


 表皮は孔の縁につながっています。 この孔には仮根が詰まっていたはずです。 孔の中を上下に走る仮根は、薄い断面を作る過程で短い断片となり、抜け落ちてしまったようです。 なぜそんなことが言えるかというと・・・


 上はジャゴケの葉状体を腹面から撮っていますが、分かり易くするため、仮根の束を少し写真の下方へ引き下ろしています。 仮根束の一部が雌器托の柄の中へと続いています。
 下は上と同じ試料ですが、雌器托の柄の断面を正面から見ています。


 「孔」は仮根の束で埋められているのが分かります。
 ジャゴケの精細胞はできるだけ広く飛散するためか、時期になれば雄器床から15~20cmほどの高さにまで噴出されるそうですが(見たいものです)、雌株の上またはその近くに落ちた精細胞は、上記の仮根束の毛管現象により、雌器托の傘の裏にある造卵器のすぐ近くにまで運ばれるのでしょう。

 もちろん精細胞は長く伸びた雌器托の柄の中を運ばれるわけではありません。 もっと早くに受精は完了しているでしょう。 上で書いたのは、長く伸びた雌器托の柄でも、精細胞が運ばれる道筋を確認できるということです。

 なお、このような外部から見える溝につながる仮根束の通る孔は、ゼニゴケ科では2つですが(こちら)、ジャゴケ科ではこれまで見てきたように1つです。


 上は雌器托の傘の先端近くの断面です。 胞子体の断面がたくさん見えていますが、白く見えているのが仮根束で、仮根束はここまで続いています。
◎ この胞子体の中にあった胞子と弾糸はこちらに載せています。


2018-03-16

キヘチマゴケ


 上はキヘチマゴケと言われていたコケですが、ヘチマゴケ属の研究をされていたOさんによると、従来別種とされていたケヘチマゴケとキヘチマゴケは同種だということです。 上方の葉腋にたくさんの無性芽をつけています。


 葉の長さは 1.5~2.5mmほどです。


 葉は卵状披針形で上部には小歯があります。 上の写真の右下に写っているのは無性芽です。


 中肋は葉先に届くか葉先近くに達しています(上の写真)。


 葉身細胞は線状六角形~線形です(上の写真)。


 上は無性芽です。

(2018.3.14. 高槻市 中畑)

2018-03-13

カタシロゴケ


 スギの大木の根元、2種類(以上)のコケが混じって育っていることは色の違いではっきり分かります。


 上は2種の境目付近です。 色の薄い方はホソバオキナゴケでしょうが、色の濃い方は・・・


 上の写真では葉の長さは長いもので6mmほどに見えますが、葉の基部の茎を抱いている部分もかなりの長さがあります。


 中肋は強壮で葉先近くに達しています。 葉の基部の中肋の左右には葉緑体を持たない細胞が並んでいて、この部分が茎を抱いている部分です。
 これほど細長い葉が反ってしまうと、なかなか背面または腹面を真上にしたプレパラートが作れません。 やっとできたと思ったら、破れていました。 このあたりで妥協せざるを得ません。


 上は横から肩の部分を撮っています。 肩には小さな葉が並んでいます。




 葉の上部は葉縁に双歯があり、中肋の背面にも歯があります。
 上の3枚は同じ所を少しずつピントをずらして撮っています。 このような所を深度合成すると、よけいに訳が分からなくなります。


 上は葉身細胞で、写真の下には中肋が少し写っています。 葉身細胞は矩形で、長さは8~10μmです。


 上は腹面から中肋付近を撮ったもので、右上が葉先の方向です。 中肋の側面にピントを合わせていますので、中肋の表面にある細胞を横から見ていることになります。 細胞の上端に丸みを帯びたパピラが存在します。

 以上の観察結果から、このコケはカタシロゴケ Syrrhopodon japonicus でしょう。 前に載せたものは葉先に無性芽がたくさんついていたのですが、今回のものは無性芽が少なく、葉先にひっかかっているゴミのようにも見えるものばかりでしたので、上では取り上げませんでした。

(2018.3.4. 河内長野市 岩湧山 標高 500m付近)

2018-03-11

鳥類はどのようにして翼を持つことができたのか


 鳥類は系統樹に基づく学術的観点からは恐竜の仲間とされています。 つまり鳥類は飛翔能力を獲得した恐竜と言えるでしょう。 この飛翔に必要な翼は、骨格から人の手と比較すると上腕と手に羽根が生えたものと言えるのですが、どのようにしてできてきたのでしょうか。
 なお、恐竜から分岐した翼竜と呼ばれているものもいますが、この翼は第4指と脚の間に膜があるもので、鳥の翼とは大きく異なります。



 化石からは、小さな翼のようなものを持つ種から次第に大きな翼を持つ種が出現してきたことをうかがい知ることができます。 上の復元図には着物の袂のような小さな翼のようなものが見えます。 このような小さな翼を持つ恐竜も、何種類も見つかってきています。
 進化の大きな傾向としては、役立つものは益々その役割を充実させるように発達し、不要なものは退化する傾向にあると考えるのが妥当でしょう。 つまり上の図のような小さな翼も、何らかの役に立つから次第に大きくなり、大きくなった時点で使用方法を変更し、飛ぶことに使ったのだと思います。


 ところで、翼の話はしばらく横に置いて、大阪市立自然史博物館では、5月6日までの予定で、特別展「恐竜の卵-恐竜誕生に秘められた謎」が開催されています。 私も行ってきました。
 この特別展では、「卵の生物学」から始まり、恐竜の卵の実物化石をはじめ、それらの親や子の標本などが一堂に展示されています。 体内に卵のある化石はまだ世界中で2例しか見つかっていないのですが、その2例も展示されています。
 近年、恐竜の卵や巣の化石が、中国大陸を中心に数多く見つかっているということです。 そしてその発掘状況からは、卵の産みっぱなし → 卵を狭い範囲に産んで保護 → 卵を抱く という行動の進化も読み取れるようです。
 上はトロオドンの巣の様子の復元図で、特別展には復元模型もありました。 下も原始的なトロオドン類のシノベナートルですが、やはり小さな翼と、尾にも羽根が生えています。 上の復元図もよく見ると、羽の生えた尾で卵の集団を抱くようにしています。


 これらの復元模型などを見ていて、小さな翼もこれらの卵の集団を覆うのに役立っていたのではないかと思いました。 もちろん恐竜がそんな行動を取っていたことなどは確かめようもありません。 確かめようもないことを専門家が無責任に発言もできないでしょう。 それらを承知の上で、自然史博物館の田中学芸員に質問してみたところ、
「わかりませんが、ありうる話ですね。 羽根で覆うと暖かいですし・・・。」
と答えていただきました。

2018-03-09

ミチタネツケバナ

 Part1の 2014.3.31.からの引っ越しです。(一部変更しています。)
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 タネツケバナは漢字で書くと「種漬花」で、この花が咲くと、稲の種籾を水に漬けて発芽を促し、苗代づくりの準備に入らなければならない、というところからきているようです。
 タネツケバナの仲間( Cardamine:タネツケバナ属 )も、タネツケバナやオオバタネツケバナなど多種の在来種があり、あちこちでよく見かけるのですが、写真のミチタネツケバナ C. hirsuta はヨーロッパ原産の帰化植物です。 名前は道端など、タネツケバナよりもやや乾燥した場所によく見られるところからのようです。


 花は在来種のタネツケバナより早く、2月頃にはもう咲きだしていて( この花を見て籾を漬けたのでは早すぎます )、次々と咲き次々と果実になっていきます。 果実は直立して、花より上に突き出しています。


 茎につく葉は小さく少なく、目立ちません。 上は茎につく葉を拡大して撮ったもので、茎にはピントが合っていませんが、タネツケバナと異なり、茎には毛はありません。
 茎の葉は少ないのですが、それに代わって根出葉は多く、花や果実の時期にも残っています。 下の写真は、根出葉の様子がよく分かるように、株を引き抜いて持ち上げて撮ったものです。 ちなみに、在来種のタネツケバナの根生葉は、果時には枯れています。


 タネツケバナ属はアブラナ科です。 アブラナ科の花の特徴として、花弁やガクは4枚で、オシベは6本であることが広く知られています。 しかし、ミチタネツケバナの花は小さく、オシベが4本しかない花が多く見られます(下の写真)。