2024-04-23

コゴメイヌノフグリ

 コゴメイヌノフグリ Veronica cymbalaria がオオイヌノフグリと混生していました。 遠目には白花のオオイヌノフグリが咲いているようでした。 撮影場所は京都府立植物園ですが、オオイヌノフグリ同様、植えられたり、育てられたりしている様子はありません。 たぶん芝刈りの対象となるでしょう。

 本種は南ヨーロッパ原産の越年生草本で、全草に白い軟毛があります。 オオイヌノフグリと同じ属ですので、花の基本的なつくりは同じです。 オシベは2本、細いメシベが1本あり、花冠は4深裂して1裂片が少し小さいのですが、この裂片の大きさの差はオオイヌノフグリほどではありません。

2024-04-21

ウスバハタケゴケ

 

 上はウスバハタケゴケ Riccia glauca だと思います。 富永・古木(2014)の記載とはサイズ的には少しずれるのですが、形態的な特徴はほぼ一致しています。 光が当たるとキラキラ光っていました(2024.4.20. 京都府立植物園にて撮影)。
 葉状体背面の先端近くには、幅が狭く、浅く、短い溝があります。 胞子体は成熟しても背面側に盛り上がってこないようで、表面からは胞子体がうっすらと黒く見えるだけで、ほとんど目立ちません。
 植物体は上のようにロゼットをつくったり・・・

 上のような入り組んだマット状になったりしていました。

 ハタケゴケの仲間としては比較的幅広く上の写真では 2.5mmほどあります。

 横断面を観察してみました(上の写真)。 たくさん気泡が入ってしまいましたが、葉状体は比較的薄く(これが和名の由来)、上の写真では、幅は高さの3.5倍ほどあります(富永・古木では4~5.5倍)。 背面の側部は畝のようにはなっていません。
 上の写真の中央左寄りに胞子体があります(これを狙って切片を作成しました)。 この部分を拡大したのが下です。

 造卵器の頸部もきれいに残っていますが、胞子は熟しているようです(上の写真)。

 上が胞子です。 径は45~50μm(富永・古木では55~75μm)、遠心面でも求心面でも畝が網目を形成し、畝の交差部は突起になっています。 網目は上の写真では直径上に5個、他の写真でも7個まで(富永・古木では7~10個)でした。 翼は薄く明瞭です。

 上は葉状体の縦断面の背面側です。 背面側の表面は葉緑体の無い透明な細胞からなっています。 最初の所でキラキラしていると書きましたが、この透明な細胞が光を反射しているのでしょう。

【参考文献】
富永孝昭・古木達郎(2014). 日本産ウキゴケ属Riccia節の分類学的研究. 蘚苔類研究11(3).

2024-04-20

ウラベニジャゴケ

 従来1種と思われていた日本のジャゴケが現在は4種に分けられていることはこちらに書きました。 今回はその4種のうちのウラベニジャゴケです。

 上がウラベニジャゴケ Conocephalum purpureorubrum です(2024.4.12. 京都市 嵐山にて撮影)。 表面にオオジャゴケのような光沢はありません。 気室間の溝が深いのは、上の写真からも分かるでしょう。 色に関しては、本種には関東地方で見られる黒みを帯びた東日本型と、静岡~沖縄で見られる黄色味を帯びた西日本型があり、写真は西日本型です。 西日本型の分布は、本州愛知県以西~四国・九州~沖縄本島北部とのことです。
 写真右側の葉状体の中央に黒い筋が生じています。 これは下の組織の色が透けて見えているようですが、オオジャゴケやタカオジャゴケにこのような黒い筋は見られません。

 上は腹面です。 冬越しの葉状体は和名のように裏面全体が柴紅色に染まるのですが、西日本型の若い葉状体の裏面は緑色~柴紅色といろいろです。
 三日月型の腹鱗片が2列につき、各腹鱗片に1個の円形の付属物があることは、ジャゴケ属に共通の特徴です。

 気室を拡大して撮りました(上の写真)。 気室孔とそれを取り囲む白色半透明の組織は、気室の幅の半分よりもずっと小さな径です。

 上は葉状体中肋部の断面です。 気室間の溝は深く、粘液洞がよく発達しています。

2024-04-19

タカオジャゴケ

 従来1種と思われていた日本のジャゴケが現在は4種に分けられていることはこちらに書きました。 今回はその4種のうちのタカオジャゴケ Conocephalum salebrosum です。

 上はオオジャゴケとの混生です(2024.4.12. 京都市 嵐山にて撮影)。 春の新しい葉状体は違いが分かりにくいとのことですが、両種を比較すると、光沢のあるオオジャゴケと光沢の無いタカオジャゴケの違いがよく分かります。 色もオオジャゴケよりも黄色みを帯びた薄い緑色です。
 気室の大きさは、オオジャゴケの場合は葉状体の辺縁部では小さく、中央付近で大きいのですが、本種の場合は辺縁部と中央付近とで、気室の大きさがあまり変わりません。
 本種は石灰岩の風穴の入り口付近で多く見つかっていて、石灰岩との結びつきが強いようにも思われていましたが、むしろ風穴が作る環境の影響が強いようで、上の写真の場所も石灰岩とは関係の無い場所です。

 上は新しく伸びた葉状体の先に近い所の横断面です。 1枚目の写真からは分かりにくいかもしれませんが、葉状体の厚さが薄く、気室孔間の溝もとても浅くなっています。
 上の青い線の所が中肋部ですが、この部分の厚さが約 0.5mm、翼部との暑さの差もあまりありません。
 上の写真の赤い矢印が気室孔で、白い矢印が気室間の溝ですが、とても浅い溝です。 この溝は翼部では上のような写真ではほとんど分からなくなっています。

 上は昨年の葉状体で中肋部の厚くなった所を狙って作った切片です。 中肋部がほんの少し厚くなって粘液洞の存在が確認できるようになりましたが、2枚目の写真と同様、葉状体の厚さが全体的に薄く、気室間の溝はとても浅いものです。

2024-03-31

ホソバトジクチゴケ

 いろいろあって、この3月は一度もブログを更新していませんでした。理由のひとつは初めて出会ったコケが無かったからですが、美しいコケがありましたので、載せておきます。 といっても、3月10日に出会ったコケで、もう20日も経っていますが・・・。 


 上がそのコケで、ホソバトジクチゴケ Weissia edentula でしょう。 前にも載せていますが(こちら)、瑞々しい緑色の蒴はこれまで載せていませんでした。

 葉は狭披針形で鋭頭です(上の写真)。 葉縁の上部3/4~4/5は狭く内曲しています。

 葉身細胞には複数のパピラがあります(上の写真)。

(2024.3.10. 京都府立植物園)

2024-02-22

ツクシツボミゴケに寄生したミドリコケビョウタケ?

 ミドリコケビョウタケ Mniaecia jungermanniae は苔類に寄生する子嚢菌で、やや肉厚なクッション状の、直径1mmに満たない小さな子嚢盤をつくります。 アカウロコゴケに寄生している様子はこちらに載せていますが、古い写真を整理していて、たまたま本種らしきものがツクシツボミゴケ Solenostoma truncatum に寄生しているらしい写真をみつけました。

 2017年の2月22日の撮影で、詳しく調べることはできませんが、色や大きさから本種である可能性は高いと思います。 焦点の合っているものの後ろにも、たくさんの子嚢盤が写っています。

2024-02-19

サクラジマツヤゴケ

 


 写真はサクラジマツヤゴケ Entodon calycinus でしょう。 倒木の上に広がっていました。 蒴が直立しているのは、この属の特徴です。

 内雌苞葉が長いのは本種の大きな特徴です。 上の写真の内雌苞葉は約4mmですが、4.5mmに達するようです。 蒴柄の長さは上の写真では 8.5~9mm、平凡社では6~20mmとなっています。

 上は蒴歯を蒴の内側から撮っています。 本属の内蒴歯は基礎膜が低く間毛も無いのですが、本種は内蒴歯の歯突起も発達が悪く、平凡社では「・・・歯突起は破片状で外蒴歯に付着する。」とあります。 上の写真でも、たしかにその傾向はあり、整った形の歯突起ではありません。

 上は胞子です。 平凡社では胞子の径は 13~18μmとなっており、上の写真ともほぼ一致します。

 上は茎葉です。 1枚の葉をヒロハツヤゴケと比較すると、本種の方が少し大きいのですが、特徴はよく似ています。

 上は翼部です。

 上は葉身細胞です。 やはりヒロハツヤゴケに似ています。

(2024.2.17. 大阪府池田市 五月山公園)

2024-02-02

ツジベゴヘイゴケ

 上は石灰岩から垂れ下がっているコケ群落で、蘚類(センボンゴケ科?)や大小2種類の苔類などが写っていますが、大きい苔類はツジベゴヘイゴケ Tuzibeanthus chinensis だと思います。 和名は辻部正信氏を記念してつけられています。

 上は腹面から撮っています。 植物体は緑褐色で、葉を含めた茎の幅は約2.5mmです。

 背片も腹葉も全縁です。 上の写真では腹葉に隠されるなどではっきりしませんが、小さな腹片があります。

 上は腹片です。

 上は腹葉です。

 上は葉身細胞です。 油体はブドウ房状です。

(2023.12.30. 高知県 横倉山)

2024-01-26

ミヤベゴケ


 写真はミヤベゴケ Miyabea fruticella でしょう。 樹幹に大きな群落を作っていました。 樹皮上を這う一次茎から二次茎が斜上しています。

 二次茎は不規則な羽状に分枝しています(上の写真)。 葉は乾くと枝に接します。

 枝葉は長さ 0.5-0.8mm、葉縁上部に小鋸歯があります(上の写真)。 中肋は不明瞭ですが葉の中部に達しています。

 上は葉の中央付近です。 葉身細胞は楕円形で長さ8~13μm、非常に厚角です。

(2023.12.31. 高知県 横倉山)

◎ ミヤベゴケはこちらにも載せています。

2024-01-20

ナガスジハリゴケ

 

 写真は、雨で濡れていますが、ナガスジハリゴケ Claopodium prionophyllum だと思います。 石灰岩上にありました。

 茎はやや羽状に分枝しています(上の写真)。 乾くと葉はやや縮れます。

 上は枝先です。 枝葉は披針形で、パピラがあります。

 上は枝葉(右)と茎葉(左)です。 茎葉は広卵形の下部から急に細くなり、長さは1~1.2mmです。 小さな葉ですが、同属で本種と特徴のよく似たハリゴケの茎葉は 0.4~0.5mm、ホソハリゴケの茎葉は約 0.3mmと、もっと小形です。

 茎葉の先端は針状で、中肋は葉先から長く突出しています(上の写真)。


 上の2枚は葉身細胞と葉縁の細胞との違いを示しています。 葉身細胞にはパピラがありますが、葉縁の細胞は比較的透明でパピラはありません。

 上は葉身細胞です。 細胞はマミラ状で、その中央に1個のパピラがあります。

(2023.12.31.高知県 横倉山)

2024-01-15

イワイトゴケモドキ

 

 樹幹に育っていた写真のコケ、イワイトゴケモドキ Haplohymenium sieboldii のようです。 イワイトゴケによく似ていますが、イワイトゴケの枝葉が円頭~広い鋭頭であるのに対し、本種の枝葉は上の写真のように鋭頭です。

 上は湿った状態で、下は乾いた状態です。 

 乾くと葉が枝に密着するのはイワイトゴケと同じです。 平凡社には「一般に茎はやや羽状に分枝し(以下、略)」とありますが、枝ぶりは環境によってよく変わり、違いは重視できないでしょう。

 上は枝葉です。 長さは 0.6~0.7mm、中央付近でやや急に細くなる傾向はありますが、イワイトゴケほどではなく、上に書いたように葉先は鋭頭、葉は縦に裂け目が入ることはあっても、イワイトゴケのように途中で折れやすい傾向は見られませんでした。

 上は葉身細胞です。 長さは8~12μm、各細胞には4~6個のパピラがあります。

(2024.1.13. 兵庫県宝塚市 武田尾)