2016-12-31

ふりかえり

 今日は大晦日、このブログの1年を振り返るついでに(?)、このブログ(Part2)のスタートからの推移をまとめてみました。

このブログは Part1から引き継いで、実質 2014年の7月からスタートしました。 この間の訪問していただいた方の月ごとの訪問者数の推移(累積ではありません)を示したのが左のグラフです。 このブログは定期的に訪問していただいている方の他、検索で訪問していただく方も多く、記事の数が増えると共に訪問者数も増加してきていて、2014年の7月スタート時の訪問者数 1,385が、2016年12月には 6,432名となっています。
 このブログは自分のための観察記録ノートの意味が強いのですが、やはり多くの方に見ていただいているということはうれしいことですし、記事を書く励みにもなります。

 このブログの記事は、最近はコケが多くなっていますが、スタートから 2016.12.31.までの時点で多く見ていただいている記事のベスト10は次のようになっています。(閲覧数は 2016.12.31.現在)
          項目名                                      掲載日        閲覧数
      1 セン類 掲載種一覧                       2014/07/05    1165
      2 ブログ掲載種一覧                        2014/07/07    1006
      3 TG-4で深度合成                           2015/12/31     855
      4 コケ植物 掲載種一覧                      2014/07/06     527
      5 オリンパスの FD-1 を使ってみました    2016/05/04     519
      6 タイ類・ツノゴケ類 掲載種一覧          2014/07/04     391
      7 ツルチョウチンゴケ                        2015/08/07     301
      8 クスベニヒラタカスミカメ                 2016/01/06     194
      9 コミミズク                                   2014/12/29     151
       10 CombineZPによる深度合成               2016/06/13     128

 ちなみに、閲覧者のオペレーティングシステムは以下のようになっています。
      1 Windows        53316 (54%)
      2 iPhone         12005 (12%)
      3 Macintosh     11686 (11%)
      4 Linux            8907 (  9%)
      5  Android          8796 (  8%)
 このブログは、野外でも活用していただけるよう、いちおうスマホでも見ていただけるようにはしていますが、やはり大きな写真を大きな画面で見ていただくことを主眼にしていますので、そのことが上の結果にも表れているようです。



2016-12-30

トゲシバリ


 写真は樹状地衣のトゲシバリ Cladia aggregata です。 大きさが分かるようにタカオカエデの葉を添えました。


 上の写真の左下のように、所々で穴が数個集まって開いていました。 位置からして枝の取れた跡とも思えないのですが、何か意味があるのでしょうか。


 上の写真の左上は明らかに枝の折れた跡でしょう。 枝は中空です。 このような中空の樹状地衣はハナゴケ科に分類されています。

(2016.12.14. 宝塚市最明寺川)

2016-12-29

ホソヤスデゴケ


 岩上を這うように伸びているヤスデゴケ、上の写真左上の細長いものが気になって、赤い四角で囲った部分を拡大すると・・・


 細長いもの(上の写真の左上)はムラサキトビムシ科の一種でしたが、拡大した結果、光の当たり具合でヤスデゴケの所々の葉に2~4個の眼点細胞が1列に並んでいるのが見えました(黄色の二重円で囲った部分が比較的分かり易いでしょう)。 このような少数の眼点細胞が並ぶことなどから、このコケはホソヤスデゴケ Frullania densiloba でしょう。



 眼点細胞は透過光で背面から見るとはっきりします(上の2枚の写真)。 重なり合っている背片は卵形です。


 上は腹面から撮ったものです。 円筒形の腹片が規則正しく並んでいます。 スケールを入れていますが、写真は枝を撮っていますので、茎の場合に比べると全体的に少し小さめです。


 上のように腹片の頂端が茎の方に傾いている枝葉もよく見られました。



 腹葉は茎と重なって見難いのですが、長楕円形で幅は茎の 1.5倍ほど、頂端は先から1/3~1/2が2裂していて裂片の先は鈍形です(上の写真)。

(2016.12.14. 宝塚市最明寺川)

◎ ホソヤスデゴケはこちらにも載せています。


2016-12-28

コクサリゴケ


 岩上を覆う写真のコケはコクサリゴケ Microlejeunea ulicina でしょう。


 上は腹面から見たもので、ほぼ茎にピントを合わせていますので、腹片は比較的明瞭に写っていますが、腹葉や背葉はポケてしまっています。 背葉は斜め奥に伸びているので、長さは 0.2mmほどあるようです。


 上は腹片にピントを合わせて撮ったものです。 腹片は背片の2/3以上の長さがあり、面積も背片の1/2ほどあります。 また、単細胞で長い第1歯牙があります。


 上は腹葉にピントを合わせています。 腹葉は茎の 1.5倍幅で、先端は1/2までV字型に2裂しています。


 上は背面から見たもので、背片にピントを合わせています。 平凡社の図鑑では「(背片の)基部に眼点細胞が1個ある。」と書かれていますが、上の写真の赤く書き入れたものがそうでしょう。 しかし眼点細胞の見あたらない背片や、下のように眼点細胞が2個ある背片も見られました。


(2016.12.14. 宝塚市最明寺川)

◎ コクサリゴケはこちらこちらにも載せています。


2016-12-25

コホウオウゴケ



 渓流のすぐ横で育っていた写真のコケはコホウオウゴケ Fissidens adelphinus だろうと思います。


 葉は披針形で、長さは 1.5~2.5cmです。


 上は葉の先付近です。 中肋は葉先近くに届いていますが突出はしていません。 舷はありません。


 上は背翼の一部です。 葉身細胞は六角形~方形で、長さは6~13μm(上の写真の最小目盛は10μmです)、表面は厚く盛り上がっています。

(2016.12.14. 宝塚市最明寺川)

◎ 蒴のついているコホウオウゴケをこちらに載せています。


2016-12-23

シンモエスギゴケ



 岩上に群生しているのはシンモエスギゴケ Pogonatum nipponicum です。 和名の「シンモエ」は九州・霧島山の新燃岳に由来するのでしょうか。


 枯れた姿は、ある人曰く「乾燥バナナ」


 葉は茎の上部に集まってついています。


 葉は乾くと上の写真のように縮れます。


 葉は長さ4mmほどで(上の写真の最小目盛は 0.1mm)、鋸歯があります。 葉形は鞘部の上でややくびれていて、葉身上部が最も幅広くなっています。


 上は葉の断面です。 薄板は4~5細胞の高さで、端細胞の上面はやや凹んでいるものが多いようです。

(2016.12.14. 宝塚市最明寺川)

2016-12-22

トカチスナゴケ


 写真はトカチスナゴケ Racomitrium laetum です。 湿った岩壁に生えていました。 なお、少し混じって生えているのはトゲシバリ Cladia aggregata で、乾燥した場所や過湿な場所(この場合は後者でしょう)に生える地衣類です。


 大きさが直感的に分かるように1円硬貨を使用してみました。


 横から見ると茎は斜上しています。 葉は乾くと上の写真のように茎に密着します。 葉の先の透明尖が分かるように背景を少し暗くしました。


 葉は狭披針形で漸尖しています。


 葉先の透明尖となっている部分がどうしてもうまく表現できないので、偏光顕微鏡を使用し、コンペンセータ(検板)に鋭敏色板(λ=530)を使って撮ってみました(上の写真)。


 葉身細胞は長い矩形で、縦壁は厚くて波打っています。


 上は葉の基部です(2枚の写真を深度合成しています)。 上に書いたように葉身細胞の縦壁は波打っているのですが、基部の葉縁にのみ波打たない平坦な縦壁を持つ細胞が1列に10~15個並んでいます。 トカチスナゴケによく似たクロカワキゴケ Racomitrium heterostichum はこの平坦な縦壁を持つ細胞が3~6個です。

(2016.12.14. 宝塚市最明寺川)

こちらには蒴のあるトカチスナゴケを載せています。


2016-12-21

ツクシヤバネゴケ


 岩壁に育つツクシヤバネゴケ Cylindrocolea recurvifolia、写真は大きな群落の端の方で、群落の中心部は上を水が流れていて、水のために光って撮れませんでした。


 一本の枝を取り出して撮ったのが上で、枝の幅は 60μmほどなのですが、ピンセットでつまんでも硬くてしっかりしていました。
 途中でねじれているので背面も腹面も見えているはずですので、腹葉は無いようです。 枝の先に近い葉は裂けていないようですが、枝の先を離れると葉は不等に1/3ほど2裂しています。


 上の写真では葉の長さは 0.1mmほどですが、汚れていない若い枝を見ていますので、もう少し大きい葉もありそうです。


 枝の先から少し離れると葉は左右に開きます。 上にも書きましたが、葉は不等に1/3ほど2裂しています。 上は腹面を斜め上から見下ろしたようになっていますので、裂片は腹側が大きいようです。

(2016.12.14. 宝塚市最明寺川)

◎ ツクシヤバネゴケの葉の細胞の様子などはこちらに載せています。


2016-12-20

ラセンゴケ


 水の滴る岩から垂れ下がる写真のコケはラセンゴケ Herpetineuron toccoae でしょう。 二次茎の先端が鞭状に伸びています。
 蒴は見つけられませんでしたが、ラセンゴケの蒴は稀なようです。


 乾いてくると、葉が茎に接してきます。 二次茎はほとんど分枝していません。


 鞭状になった所にも鱗片状の葉がついています。


 さらに乾燥が進むと、茎全体が犬の尾のように曲がってしまいました(上の写真)。


 葉は広披針形で鋭頭です。 中肋は上部で蛇行しています。 これが和名の由来のようです。


 上部の葉縁には複数の細胞からなる大きな歯があります。 葉身細胞は方形~六角形で、中肋に対して斜めに並んでいます。

(2016.12.14. 宝塚市最明寺川)

◎ ラセンゴケはこちらにも載せています。


2016-12-19

ヒメコクサゴケ


 写真はヒメコクサゴケ Isothecium subdiversiforme でしょう。



 上の2枚はどちらも二次茎です。 細くて這っている一次茎から出た二次茎は不規則に分岐し、多くの枝を出し、やや樹状となっています。 枝先は細くなり、上の写真では鞭状に伸びています


 葉は枝の先に向かうほど小さくなりますが、枝中部で長さ2mm前後です。 上の写真の葉は、汚れの少ない新しい葉(=枝の先に近い葉)を選びましたので、少し小さめです(上の写真の目盛は端から端までが1mmです)。
 葉は卵形~卵状楕円形で凹み、鋭頭です。 葉先近くの縁にはやや大きな不規則な歯があります。 中肋は葉の中部以上に達していて太いのですが、葉身細胞との境界が不明瞭で、先は拡散したような終わり方をしています。 葉の翼部は濃緑色になっています。


 なかには上の写真のように上部で2叉する中肋も見られました(偏光顕微鏡を使用し、コンペンセータ(検板)に鋭敏色板(λ=530)を使用して撮っています)。


 上は翼部の様子です。


 上は葉の中ほどの葉身細胞の様子です。 葉身細胞は長い菱形~線形で、やや厚壁です。


 蒴は長卵形で、多少非相称です。 上は蓋を剥がして蒴歯が2列であることを確認した写真です。 なお、1枚目の写真のように、蓋にはやや長い嘴がありました。


 上は蒴歯です。 蒴を裂いて平らにする過程で外蒴歯と内蒴歯がずれてしまいましたが、色の濃い方が外蒴歯です。 内蒴歯もよく発達していて、ほとんど外蒴歯と変わらない大きさです。


 上は内蒴歯の拡大です。


 上は外蒴歯の上部で、パピラが見られます。


 上は蒴の壁の拡大で、気孔が見られました。

(2016.12.14. 宝塚市最明寺川)

◎ ヒメコクサゴケは下の所にも載せています。
 2018.9.16.  2020.8.18.  2021.1.29.