2021-12-30

ニワスギゴケ属とスギゴケ属の葉一覧

 スギゴケ科は次の5属からなります。

タチゴケ属
 葉の縁に舷がある。 薄板は中肋腹面のみ。
タチゴケモドキ属
 薄板は中肋の背腹両面にある。
フウリンゴケ属
 薄板は中肋腹面のみ。 蒴歯が無い。
ニワスギゴケ属
 蒴は円筒形。 乾くと葉が縮れる種が多い。
スギゴケ属
 蒴は角柱状。 葉は乾くと茎に接着する。

 このうち、ニワスギゴケ属とスギゴケ属は種数が多く、互いによく似ているので、葉の違いを表にまとめてみました。


薄板 端細胞 その他
横から見て 上から見て
コスギゴケ 4-6 細胞層 菱形~上端平ら 横長
ヒメスギゴケ 5-7 細胞層 長楕円形~倒卵形 ほぼ円形
チャボスギゴケ 3-5 細胞層 二叉し不規則に重なる

シンモエスギゴケ 4-5 細胞層 ほぼ方形で上面やや凹む
葉身上部が最も幅広
葉は上部に集まる
セイタカスギゴケ 2-5 細胞層 よく2個に分裂し表面にパピラ

コセイタカスギゴケ 2-3 細胞層 上面は平滑
鞘部上半の縁に歯
ホウライスギゴケ 2-3 細胞層 上面は平滑
鞘部は全縁
ケスジスギゴケ 6-8 細胞層 方形~横長の矩形
表面にパピラ


ミヤマスギゴケ 5-8 細胞層 上縁の細胞壁は内腔と
同程度に厚く
表面にパピラ


ヤマコスギゴケ 4-6 細胞層 上縁の細胞壁厚く表面にパピラ

タカネスギゴケ 6-11 細胞層 卵形
薄板は覆われる
ウマスギゴケ 5-7 細胞層 凹形

オオスギゴケ 4-6 細胞層 縦に長い卵形

エゾスギゴケ 4-5 細胞層 横広で扇形

スギゴケ 6-8 細胞層 フラスコ形
薄板は覆われる
葉先褐色
ハリスギゴケ 6-8 細胞層 フラスコ形
薄板は覆われる
長い芒

2021-12-27

マルバソコマメゴケ


 岩上に白っぽい地衣類にまみれるようにしてマルバソコマメゴケ Heteroscyphus tener が育っていました。 軟らかなコケで、葉は瓦状について密に重なり、背側に強く偏向していますが、これが本種の常の姿で、乾くとさらに強く偏向し、左右の葉がくっつきあいます。

 上は乾いた状態を真横から見ています。 腹面に腹葉が見えます。 仮根は束生しています。

 上は葉と腹葉です。 葉は全縁でほぼ対生し、腹縁基部は腹葉と合着しています。 腹葉は2裂し、側縁に数歯があります。

 仮根は腹葉の基部に束生します(上の写真)。


 上の2枚は葉身細胞です。 トリゴンは大きく、油体は楕円体でブドウ房状、各細胞に4~7個あります。

(2021.12.24. 奈良県十津川村 標高約200m)

2021-12-22

ホソコゴケモドキ

 

 写真はホソコゴケモドキ Weisiopsis anomala でしょう。 土嚢とそれに続く土の上に生えていました。

 地上に出ている茎の長さは2mmほど、胞子体の長さは6~7mmほどでした。 蒴には縦の条があります。

 葉はへら形で葉先は円鈍、葉基部の透明細胞群と中~上部の緑色細胞群との境界は逆U字形です。

 上は葉身細胞です。

 上は葉の断面です。葉身細胞は腹側にマミラ状に膨れています。

 中肋のステライドは背面側のみにあります(上の写真)。

(2021.10.21. 兵庫県西宮市 北山)

こちらにはホソコゴケモドキの蒴の様子などを載せています。

2021-12-20

ナシゴケの葉

 

 2022年の1月8日から23日まで、大阪市の「咲くやこの花館」でコケ展が開催されます。 現在その関係で館内のコケを調べているのですが、上の写真のようなコケがあり、SNSでナシゴケ Leptobryum pyriforme と教えていただきました。 このブログでは前に蒴のあるナシゴケを載せていますが(こちら)、これとも葉の細胞の特徴など、よく一致しています。
 平凡社の図鑑では、「少数の線形の葉(長さ 3-5mm)が茎の上方に固まってつき、・・・」とありますが、上の写真では、葉の長さは1~2mmですし、葉は茎にほぼ等しくついています。 これは後に書くこととも関係しますが、おそらく若い群落だったためと思います。



 上の3枚は葉先、葉の中央部、葉の基部です(倍率は同じではありません)。 中肋は太いのですが、葉身細胞との境界は不明瞭です。 葉身細胞は線形で、上の写真では、長さ 40~90μm、幅 4~5μmです。

 上は葉の横断面ですが、中肋と葉身細胞の境界が不明瞭であることは、上の写真からも言えます。

 上は茎頂近くです。 中央のボンヤリ赤いのはノイズですが、茎頂近くの葉腋には葉を透かして赤っぽいものが見えます(赤い円で囲った部分)。 下は葉を取り去って、この色のついたものを正面から見た写真です。

 これは腋毛(axillary hair)で、葉がまだとても小さい時に粘液を出して葉と茎頂を乾燥から守る役割を果たしているようだと教えていただきました。 ほとんどのセン類で葉腋に見られ、分類群によって形や細胞の数に特徴があり、識別形質によく使われるということです。

こちらでは本種の仮根の様子などを載せています。


2021-12-16

タマゴケの葉

 

 上の写真のコケ、蒴は混生している別のコケ(たぶんアオギヌゴケ科)のものですが、調べても分からず、SNSで質問してタマゴケであることが分かりました。
 分かってみれば、葉が水をはじいてプレパラート作成が難しかったことや、仮根が多いことなど、タマゴケ科の特徴がありました。 また同じ日に少し離れた所で茶色くなった蒴をつけたタマゴケも見ています。 しかし上の写真の蒴が本種のものだと勘違いしたところから、タマゴケではないと無意識のうちに頭にインプットされてしまっていたようです。
 タマゴケの葉は前にも一応調べてはいるのですが、蒴を見て簡単に同定できるので、これまでじっくり葉を調べたことが無かったことも、名前が分からなかった大きな原因です。

 上は湿った状態です。 葉には比較的長い鞘部があり、それを含めると葉の長さは4~7mmになるようです。

 乾くと葉は上の写真のように巻縮します。 茎は全長にわたり赤褐色の仮根に覆われています。

 中肋は葉の先端から短く突出しています(上の写真)。 葉縁には鋭い歯が並んでいます。

 鞘部の細胞は透明で平滑です(上の写真)。

 葉身細胞は方形~矩形で、長さは8~13μmです(上の写真)。 下に書くように細胞には1~2個のパピラがあるのですが、真上から見た上の写真では分かりにくいですね。
 上の写真では中肋にピントが合っていませんが、中肋にピントを合わせると・・・

 中肋背面には鋭い歯があります。 分かり易い所を青い円で囲みました。 後に書くように葉縁の歯は対になっているのですが、上の写真でもそれが分かります(赤い円で囲んだ部分)。

 上は葉の横断面です。 葉身部は1細胞層で、背面にも腹面にも大きなパピラがあります。 葉縁は2細胞層で、この葉縁の細胞が歯になれば、対になった歯になります。

 上の写真は葉先に近く、ほとんど中肋に占められていますが、対になった葉縁の歯の分かり易い所を赤い円で囲みました。

 上は仮根で、太い仮根から枝分かれして次第に細い仮根になっていきます。 仮根の表面にはたくさんのパピラがあります。

 上は茎の横断面で、左からは葉が、右下からは仮根が出ています。 中央には中心束があるように見えます。

(2021.10.31. 大阪府枚方市穂谷)

◎ タマゴケの葉はこちらにも載せています。 また、こちらにはタマゴケの胞子体の変化を、こちらには胞子体のつく位置を載せています。

2021-12-14

イスカ

  下はPart1の 2013.12.12.からの引っ越し記事で、 2013.12.11.に撮影した写真です。

 イスカは、ヨーロッパ、アジアの北部や北アメリカに広く分布するアトリ科の鳥です。 日本では、少数が北海道や本州の山地で繁殖するようですが、多くは冬鳥として飛来します。 しかしこの飛来数は、どういうわけか年によって大きく変動し、行けばほぼ確実に見ることのできる場所は、限られています。 そんな場所が滋賀県にあると聞き、行ってきました。

 「イスカの嘴(はし)の食い違い」ということばがありますが、上の写真のように、イスカの嘴は先端が左右に食い違っています。 ヨーロッパでは、キリストが十字架に磔(はりつけ)になった時、その釘を引き抜こうとして嘴がねじれてしまったと言われています。

 実際のところは、イスカはマツなどの種子が好物で、球果(コーン)の中の種子を取り出し易いように進化した結果、あのような嘴になったのでしょう。 上の写真では球果を両足でしっかり固定して中の種子を取り出していますし、下の写真では球果をちぎってしまっています。

 上の写真で、右がオス、左にいるのがメスです。 メスの写真が少なかったので、メスの写っているものを、もう一枚、下に載せておきます。

 冬型の気圧配置で雲が多く、イスカは高い所から降りてこず、距離はあるし、下から狙えば当然の空抜けで、満足できる写真ではありませんが、たくさんのイスカに会えたことで満足としましょう。

2021-12-13

ヤマコスギゴケ

 

 岩の隙間にヤマコスギゴケが育っていました。 上から見ると背丈の低いコケのような印象ですが・・・

 葉がついているのは茎の上部のみですが、茎は長く伸びています。

 上は少し乾きかけていて、本種の葉は乾くと集まってくっつきあいます。 その際、外側に位置する葉の背面は赤褐色になっていますが、これは紫外線から内部を守るためだと思います。
 葉の長さは、上の写真では4~5mmで、葉縁には鋸歯があります。


 上の2枚は葉の横断面です。 ラメラ(薄板)は4~6の細胞の高さで、端細胞上縁の細胞壁にはパピラがあります。

 上の写真は葉を上から顕微鏡を使って撮っています。 パピラがあるために細胞の境が分かりにくいのですが、端細胞は縦に長くなっています。 なお、本種に似たケスジスギゴケでは、端細胞は上から見て横に長くなっています。

(2021.10.8. 長野県 蓼科 標高 2,240m)

◎ ヤマコスギゴケはこちらこちらにも載せています。

2021-12-12

クモの脚はなぜ8本か

 もう10年近く前になりますが、このブログのPart1、正式には「そよ風のなかで(Plants,insects and birds near at hand)」に、「昆虫の脚はなぜ6本か」という記事を書きました(こちらに引っ越しています)。
 記事の主旨は、子供科学電話相談で、昆虫の脚はなぜ6本なのかという小学生の質問に対し、「胸部が3節だから」という回答があったが、昆虫の進化してきた道筋を考えると、胸部が3節だから脚が6本というよりは、脚は6本がいいから胸部は3節になったと考える方がいいのではないか、といったものでした。
 これを読んでいただいた方から、ではクモの脚はなぜ6本ではなく8本なのか、という質問をいただきました。 以下はこれに関する私の意見です。 もちろん何の科学的根拠も持たない私の勝手な考えにすぎませんが、考えることは楽しいことなので・・・
 クモは(脚はひとまず横に置いて)総合的な形態の比較からも、DNA解析からも、昆虫や甲殻類よりもずっと古い時代に分かれた別のグループで、カブトガニや三葉虫に近い仲間です。 つまり昆虫とは全く別の進化の道筋をたどった生物です。
 いずれにしても、体の軸に沿って繰り返し構造を持つことが節足動物の共通の形態的特徴ですが、それぞれの進化の過程で並行的に各体節の“分業”と“整理”が進み、それに伴って脚に関しては減少する方向に進み、クモの脚は8本に、昆虫の脚は6本に落ち着いたのではないかと思います。
 ではなぜクモの脚は6本にまで減らなかったのか、きっとクモの生活にとっては8本が便利なのだと思いますが(でなければヒトの尻尾のように退化する傾向が見られると思います)、これはクモの脚の使い方をいろいろと観察するしかないと思います。 1例をあげると、円網を張るクモでは、4本の脚で足場となる糸の上を移動し、2本の脚で糸と糸との間隔を測り、もう1対の第4脚で腹部末端から出る糸を操作しているように思うのですが、私はクモの行動を意図的に観察した経験は無く、これもまゆつばものです。 この文章も、質問をいただかなければ書くことは無かったでしょう。 また特にカニグモの仲間などでは脚の欠けた個体をよく見ます。 脚が取れやすいことを見越して予備的な脚を準備しているのかもしれません。 いずれにしても、現在の地球上に生きている生物は、どんな生物も、それぞれの生活に適応た姿をしている、ということでしょう。
 最後に、クモも多様で、種によって8本の脚をいろいろ使い分けていようですが、それを考えるヒントとして、脚の形態でいくつかのタイプに分けてみたもの(私のオリジナル分類)を以下に並べてみます。

● (2+6)のタイプ 

マネキグモ

セアカゴケグモ(オス)

アリグモ(メス) 第1脚を触角に見せているように思われる

● (4+4)のタイプ

クマダギンナガゴミグモ

アカイロトリノフンダマシ(後ろの4は隠れていて見えません)

アズチグモ(オス)

ワカバグモ

 このタイプの変形として、待機時には下のような((2+2)×2)の姿も見られます。

チュウガタコガネグモ

コガタコガネグモ

● (4×2)のタイプ

コモリグモの一種

アシダカグモ