2015-06-30

コケ植物のブログ掲載種一覧を作りました

 過去の記事を活用し易くするために、これまでに掲載した記事の一覧表を作ろうと思い、まずはコケ植物で作成してみました。 右のラベルの「 01 掲載種一覧 」から入っていただけます。(スマホの方はウェブバージョンでご覧ください。) もちろんこれからもコケ植物に関する記事が増えるごとに更新していきます。
 他の掲載種についても作成する予定ですが、なにせ時間のかかること、気長にお待ちください。

フトリュウビゴケ


 写真はイワダレゴケ科のフトリュウビゴケ( Loeskeobryum cavifolium )です。 和名は枝を龍の尻尾にたとえたようで、蘚類としては大型で、枝が絡み合い、ふかふかした大きな群落をつくっていました。


 上で「蘚類としては大型」と書きましたが、葉をつけた枝の具体的な幅が分かるように、例によって10円硬貨を背景に撮ってみました(上の写真)。


 上は枝の一部を拡大したものです。 この様子は乾燥してもほとんど変わりませんでした。


 上は1枚の葉を撮ったものです。 葉縁には微歯があります。 葉は丸く凹んでいて、中肋は上の写真ではピントのあまい位置になってしまっていますが、2本の中肋は葉の途中で終わっています。


 上は葉の葉身細胞です。 葉身細胞は長い楕円形~線形です。


 上は枝の一部を葉を取り去って撮ったものです。 枝の表面は毛葉に覆われています。
 ( ※ 毛葉:茎や枝の表面にある毛または小さい葉 )
 この毛葉を剥ぎ取って顕微鏡下で撮ったのが下の写真です。


 毛葉は枝分れし、角状になっています。 上は3枚の写真から深度合成したもので、ピントの合っている深度幅は大きくなっていますが、かえって立体的な様子は分かりにくくなっているかもしれません。 下はもう少し枝分かれの少ない毛葉のそのままの顕微鏡写真です( 10×10 )。


(2015.6.17. 岩湧山 標高350m付近)

◎ フトリュウビゴケはこちらにも載せています。


2015-06-29

ゴマダラオトシブミ



 上は「堺自然ふれあいの森」のアラカシにいたゴマダラオトシブミです(6月13日撮影)。 放置されて荒れていた里山に手を入れ、適度に管理された本来の里山環境を取り戻し学習の場などとして活用を図ろうとする「堺自然ふれあいの森」の活動も徐々に成果をあげつつあり、虫などの種類も増えつつあります。 このゴマダラオトシブミも、「堺自然ふれあいの森」で見るのは、私は今回が初めてです。


 みつけたゴマダラオトシブミは1頭だけでしたが、同じ木には上の写真のような揺籃も見られ、ゴマダラオトシブミの揺籃ではないかと思います。

 前に別の場所のゴマダラオトシブミを載せています(こちら)が、黒斑の様子は微妙に違います。 ゴマダラオトシブミの模様の変異幅はかなり大きいようで、いろいろな模様のものを見ることができれば楽しいでしょうね。

2015-06-28

カビゴケ


 上の写真はクサリゴケ科のカビゴケ( Leptolejeunea elliptica )です。 谷川沿いの広葉樹やシダなどの生葉上に生えることの多い、いわゆる葉上苔の一種ですが、写真のカビゴケは湿った幹の根元にありました。
 カビゴケはとても小さなコケであるうえに、基物に密着し、葉が重なり合ってつく傾向があり、肉眼的には形態もはっきりしません。 それにカビ臭さとは少し異質ですが、特に擦るなどでは強いにおいがします。 カビゴケの和名は、そのような特徴からなのでしょう。


 上の写真、左側は重なり合っていてよく分かりませんが、右側は枝が飛び出しているので、葉の様子がよく分かります。 葉の縁は全縁で、背片と腹片からなります。 上の写真では、葉の所々に他の細胞と異なって小粒を散らしたように見える異形細胞があります。 これは眼点細胞と呼ばれているもので、上記のにおいは、この細胞に含まれている油体に由来するもののようです。(こちらではこの眼点細胞をもう少し大きく撮って載せています。)
 腹葉もあるのですが、上の写真ではピントがずれていてよく分かりません。


 上は腹片に、下は腹葉にピントを合わせて撮った顕微鏡写真です。 腹葉は基部近くまで2裂し、各裂片は広く開いています。


(2015.6.17. 岩湧山 標高350m付近)

◎ 本種の胞子体はこちらに、造精器はこちらに載せています。


2015-06-27

キスジコヤガの幼虫


 地衣を体につけてカムフラージュしたキスジコヤガの幼虫が木の幹を歩いていました(上の写真)。 キスジコヤガの幼虫は以前にも載せていますが(こちら)、今回は白っぽい地衣の上ではないので、よく分かります。
 指で突くと、幹に着生している地衣になりきったように、全く動かなくなりました。 しばらく見ていたのですが、動く気配が無く、あきらめて立ち去りました。
 半時間ほど経過した後に戻ってみると、ほとんど同じ場所で活動していました。 それが下の動画です。


 上の動画では、地衣をかじって食べているような行動も見られますし、体に地衣を付け足しているようです。 画面を大きくして見ていただくと、脚も見えます。 なおBGMは、いつものようにMusMusさんの楽曲を使用しています。

(2015.6.13. 堺自然ふれあいの森)

2015-06-26

ノコギリコオイゴケ



 写真はヒシャクゴケ科のノコギリコオイゴケ( Diplophyllum serrulatum )、別名ノコギリフタエウロコゴケでしょう。
 葉が2重になっていて葉の上に小さな葉があるように見えますが、これが和名の「コオイ」(子負い)や別名の「フタエ」(二重)の由来なのでしょう。
 葉(側葉)が折り畳まれて背片と腹片になっている苔類はたくさんあります。 この場合多くは腹側(=裏側)にある腹片の方が小さいのですが、ヒシャクゴケ科では背片より腹片の方が大きく、上から見ると背片も腹片も見えることになります。 なお、ヒシャクゴケ科のコケには腹葉はありません。


 上は1枚の葉を拡大したものですが、背片にも腹片にも歯があります。 これが名前の「ノコギリ」の由来でしょう。 なお、上の写真は背片にピントを合わせた写真と腹片にピントを合わせた写真とを合成しています。
 腹片の一部をさらに拡大してみたものが下の写真です。 この写真も深度合成しています。


(2015.6.17. 岩湧山 標高350m付近)


(以下、2015.11.12.追記)

 花被のついたノコギリコオイゴケがありました(2015.11.6. 堺自然ふれあいの森)。 花被も花被のついた枝の葉も、植物体の他の部分に比較して、ずいぶん大きいようです。


 この花被の中で育った胞子体が胞子を散布している様子はこちらに載せています。

 上の写真は、LG-1を使用し、TG-4の顕微鏡モードのサブモードで、深度合成モードではISO感度を調整できないので、ISOを100にして「フォーカスBKT」で20枚連写 (ピント位置をずらす撮影ステップは「標準」) し、CombineZPで深度合成したものです。 このようにすれば、この程度の立体のものなら、くっきりと撮れるのですが、葉の表面についたゴミもくっきりと撮れてしまいました。 撮影前のクリーニングがポイントですね・・・。

◎ ノコギリコオイゴケの無性芽はこちらに載せています。


2015-06-25

ヒメヒゲナガカミキリ





 転がされていた伐採木に、2組のヒメヒゲナガカミキリの雌雄がいました。 2組が近くにいたということは、近くで羽化して間もないものが交尾しようとしていると思われます。
 2組とも材の下側にいましたので、指で突いて光の当たる所に出て来てもらって撮影しました。

(2015.6.13. 堺自然ふれあいの森)

2015-06-24

ニスビキカヤゴケ


 トチノキの樹皮についていたコケを撮った上の写真、複数のコケが混じって写っていますが、いちばん多く写っているのはクラマゴケモドキ科のニスビキカヤゴケ( Porella vernicosa )です。
 ニスビキカヤゴケの和名は、ニスをひいたような光沢があってカヤの葉に似たコケという意味でしょう。 かじってみるとピリピリする辛さを感じるのもいい特徴でしょう。


 拡大した上の写真(乾いた状態)を見ると、葉が内曲している(=裏に巻き込んでいる)ために厚さがあるように見えるとともに、茎に沿って凹みがあるように見えます。


 上は2枚目の写真と同じ乾燥した状態のものを腹面(=裏側)から見たものです。葉が巻き込んでいることは分かっても、茎に沿った部分は何やらゴチャゴチャしていてよく分かりませんね。
 これを水に浸して葉を広げてやると・・・


 腹側に巻き込んでいた葉(側葉)の背片は、湿った状態でも、ゆるくはなるものの、内曲の状態は維持されています。 背片にも腹片にも腹葉にも数本の歯が見られます。 腹葉は外曲しています(反り返っているように見えます)。

(2015.6.17. 岩湧山 標高400m付近)

こちらではニスビキカヤゴケの葉(背片と腹片)や腹葉を茎から外して観察しています。


2015-06-23

コガネグモの“網抜け”


 上の写真を撮って、もう少し近づいて撮ろうと、移動しました。 足元が背の高い草で覆われていたので、視線を下に移して少し移動し、カメラを構えると下の写真のような状態になっていました。 違いが分かるでしょうか。 カメラに記録されているこの間の時間差は1分でした。


 1枚目の写真では背側をこちらに向けていますが、2枚目の写真では腹側をこちらに向けています。 つまり網のこちら側から向こう側に瞬時に移動したことになります。
 移動したのは、2枚目の右に写っている甲虫(シロテンハナムグリ?)が原因になっているのかもしれませんが、こんなに簡単に網の反対側に移動できるとは思いませんでした。

(2015.6.13. 堺自然ふれあいの森)

2015-06-22

チヂミカヤゴケ

 タカオカエデの幹でたくさん蒴を付けているチヂミカヤゴケ Porella ulophylla がありました。



 チヂミカヤゴケはクラマゴケモドキ科に分類されていて、雌雄異株です。 上の写真は蒴をつけいてますから、もちろん雌株です。 「チヂミ」の名前のとおり、葉は著しく波打っています。


 上は腹面(いわゆる裏側)から撮ったものです。 腹片も腹葉も舌形です。

 以上は2015年6月17日に岩湧山で撮ったものです。

◎ チヂミカヤゴケの蒴や葉身細胞の様子をこちらに、弾糸の様子などはこちらに載せています。

----------------------------------------------------------------------------------
 下は2015年4月28日に大和葛城山で撮ったもので、チヂミカヤゴケの雄株です。



 雄株の葉はほとんど波打ちません。


 上は腹面からの撮影です。 雄株の腹片は三角形ですが、稀に腹片は袋状になります(こちらこちら)。 腹葉は雌株と同様舌形です。
 
こちらには造精器をつけた雄株を載せています。


2015-06-21

ヤマトシロオビトラカミキリ、ツマグロハナカミキリなど

 クリの花に蝶や甲虫など、いろんな虫たちが集まっていました。 今回はそのうちのハナカミキリです。


上はヤマトシロオビトラカミキリだろうと思います。 この種もシロオビトラカミキリやシラケトラカミキリなど似た種が多く、あまり自信はありませんが・・・。 いずれにしても、Part1も含め、このブログ初登場です。



 上はツマグロハナカミキリです。 私が堺市内で見るのはいつもこのタイプですが、色彩変異の激しい種で、上翅全体が黒いものもいるようです。



 上は何度か出ている(例えばこちら)キイロトラカミキリです。 今回もクリに来ているハナカミキリのうちではいちばん個体数が多いようです。

(2015.6.13. 堺自然ふれあいの森)

2015-06-20

ススキゴケ


 和名は葉の先が針形に伸び、姿がススキに似ているからと言われているのですが、ススキの硬い葉のイメージとは異なり、柔らかい葉です。 私的には萱場を吹き渡る風になびくススキ群落のイメージでしょうか。


 大きさが写真で分かるようにと10円玉を後ろに置いたのですが、ススキ群落の後ろの月を連想させるような写真になりました。



 葉の先端部には小歯が並びます。


 葉身細胞は矩形です。

(2015.6.17. 岩湧山)

◎ ススキゴケの群落に、ほんのわずかですが胞子体をつけたものがありましたので、下に載せておきます。(2015.11.16.追記)

2015.11.11. 六甲山・山田道

◎ 胞子体をたくさんつけたススキゴケはこちらに載せています。(2016.2.17.追記)

2015-06-19

クマノゴケ



 滝の水飛沫のかかる岩肌にクマノゴケが生えていました。 しっかり岩にくっついていて、水流に耐えているようでした。



 上は葉の先と根元の様子ですが、葉は細く、葉のほとんどが中肋で占められています。 クマノゴケがみつかるのは常に水に濡れる渓流そばなどで、葉が線形なのは水の流れに耐える適応だと考えられています。

こちらにはこの葉の横断面の様子を載せています。

 クマノゴケはイクビゴケと近縁とされていて、イクビゴケと同様にほとんど柄の無い蒴をつけます。

(2015.5.27. 岩湧山)