2024-05-16

エゾキヌタゴケ

 

 上はエゾキヌタゴケ Homomallium connexum でしょう。 コンクリートの上に育っていました。

 少し離れた所には、帽の取れた蒴がありました(上の写真)。 透明感のある蓋の美しさに惹かれて撮ったのですが、撮った写真を見て頸部の不思議な色にも気がつきました。

 上は茎葉です。 葉先は急に細くなっています。 翼部はやや暗くなっています。

 翼部には小形で方形の細胞がたくさんあり、葉縁沿いではかなり上まで続いています。

 葉身細胞は線状六角形~線状楕円形です。

(2024.4.12. 京都 嵐山)

◎ エゾキヌタゴケはこちらにも載せています。 また、こちらには胞子散布を始めた時期の蒴を、こちらには蒴歯の様子を載せています。

2024-05-15

シゲリゴケ


 みごとに茂ったシゲリゴケ Cheilolejeunea imbricata、大きさが分かるようにマメヅタの葉を少し入れておきました。 コンクリート製の擁壁に厚く育った蘚苔類の群落に混じっていました。

 茎は不規則に分枝しています。

 背片は円頭、腹片は背片の約1/2の長さで、切頭です。 腹葉は茎径の2~2.5倍幅、1/3~1/2まで狭く2裂しています。

 シゲリゴケ属の腹片は第1歯がほとんど発達せず、歯牙は第2歯です。 本種の歯牙は、平凡社では1細胞幅で2~4細胞長となっています。 歯牙は背片の方向に傾いていて、どこまでが歯牙なのか分かりにくいのですが、上の写真の歯牙は2~3細胞長でしょう。 なお、上の写真は深度合成しています。
 葉身細胞は厚壁で、油体は大形で各細胞に1~2個、ブドウ房状です。

(2024.5.11. 京都府長岡京市 善峯寺近く)

こちらには腹面を反射光で撮った写真(深度合成)を、こちらにはスチルスなどを載せています。

2024-05-10

「ミクロの世界のコケ図鑑」発行のおしらせ


  コケの魅力やコケとはどのような植物かを知ってもらおうと作成した「コケの国のふしぎ図鑑」も出版から5年が経ち、改訂版を出版することになりました。
 改訂にあたっては、特徴は残しつつも図鑑としての内容を充実させ、コケ初心者には「分かりやすい!」、少しコケに詳しくなった人には「かゆい所に手が届く!」、そんな印象を持っていただける図鑑をめざしました。 名前調べをしているうちに、自然にコケの世界を広く大きく理解できるような工夫もしています。 本の“性格”変更に伴って書籍名も上の写真のように変更しました。

主な特徴:
・ 小さなコケの違いがよく分かるように、必要に応じてルーペレベルや顕微鏡レベルの写真も多数使用しました。 顕微鏡写真でコケの理解も深まることでしょう。
・ 身近でよく見られるコケで同定時の目のつけどころを理解し、そこから多くのコケの同定に進めるように2ステップ構成にしました。
・ 掲載種は見出しにしたのが243種、それ以外のものも含めると363種について解説しました。
・ 身近なコケに重点を置きながらも、屋久島でよく見られるコケから北海道・東北でよく見られるコケまで掲載しています。 北八ヶ岳などの高山で見られるコケも多数掲載しました。 近場のコケ調べからコケ旅の友としても活用ください。 もちろん見るだけでも十分楽しめる写真を載せたつもりです。
・ 近頃人気のコケテラリウムについても、園田氏の作品を掲載しています。 楽しんでいただきたいと思いますし、テラリウム作りのヒントにもなるでしょう。

発売日は6月18日の予定ですが、既にアマゾンなどで予約注文の受付が開始されています。

2024-05-09

ヒロハツボミゴケ

 写真はヒロハツボミゴケ Jungermannia exsertifolia(ツボミゴケ科)ではないかと思います。 これも京都市の梅小路公園の「苔類だけのコケ展」に出展されていたコケです


 葉は長さと幅がほぼ同じです。 仮根は少なく、めだちません。

 葉身細胞は薄壁です。 油体は楕円体で、微粒の集合です。 上の写真の左上隅を中心にベルカが確認できますが・・・

 ピントを少しずらすと、大きく明瞭なベルカが確認できます(上の写真)。

2024-05-08

ハラツボミゴケ

 上も京都市の梅小路公園の「苔類だけのコケ展」に出展されていたコケで、ハラツボミゴケ Solenostoma rotundatum(ソロイゴケ科)でしょう。 常緑樹林帯で見られる苔類です。

 

 仮根は束にならず、茎に沿って流下していません。 葉の幅は、長さとほぼ同じか、やや広くなっています。

 葉縁の細胞は他の細胞に比較して小形です(上の写真)。

 葉身細胞にはトリゴンがあります。 油体は微粒の集合で、ほとんどの細胞で2個です(上の写真)。

2024-05-07

アキウロコゴケ

 写真はアキウロコゴケ Syzygiella autumnalis(アキウロコゴケ科)のようです。 京都市の梅小路公園で2024.5.3.~5.6.に開催された「苔類だけのコケ展」で出展されていました。
 育っている場所も姿もクチキゴケに似ている普通種で、平凡社の図鑑にも「倒木、岩上、土上にふつう。」とあるのですが、胞子体は秋に見られ、雌苞葉が多裂するなど、特徴の多くは秋にはっきりします(だから「秋鱗苔」)。
 胞子体が無い場合の同定は、姿の似たものが多く、難しいのですが、ひとつは葉がやや背側に偏向していることで、このため・・・

 プレパラートにすると、上の写真のように葉が左右に開かず、2つ折れになってしまいがちです。 なお、今回は展示会場に準備されていた顕微鏡で観察したため、スケールも入れられませんでしたし、実体双眼顕微鏡が無くて細かい操作ができず、数細胞からなる2裂した腹葉も探せませんでした。

 上は葉身細胞です。 トリゴンがあり、油体は球形~楕円体で、微粒の集合です。