2017-05-31

ニホンアカザトウムシ


 上はニホンアカザトウムシ Pseudobiantes japonicus です。 堺自然ふれあいの森で木をチェーンソーで切っていたところ、その振動でか、近くの木の洞から出てきて、体を左右に揺らしていたとのことです。 見せていただいた時には既に死んでいたのが残念です。

 ザトウムシ目は世界で約4000種ほどが知られています。 これまでブログには、マザトウムシ科のゴホントゲザトウムシトゲザトウムシ、スベザトウムシ科のアカサビザトウムシオオナミザトウムシなとを載せてきましたが、これらは全て頭胸部と腹部の背板が分かれているカイキザトウムシ亜目に分類されています。
 ザトウムシ目にはこの他にダニザトウムシ亜目、アシブトザトウムシ亜目、アカザトウムシ亜目、ヘイキザトウムシ亜目があり、これらは全て腹部前方の体節の背板が頭胸部に癒合しているのですが(Wikipedia)、今回のニホンアカザトウムシはこのアカザトウムシ亜目に分類されています。 アカザトウムシ亜目の触肢は捕獲用に変化しています。


 上はニホンアカザトウムシを裏返して触肢を拡大して撮ったものです。

(撮影日:2017.5.13.)

2017-05-30

無性芽をつけたギンゴケ



 ギンゴケ Bryum argenteum がたくさんの無性芽をつけていました。 無性芽をつけることは多くないのか、平凡社の図鑑にもネットで検索してもギンゴケの無性芽についての記載は見当たりませんでした。

(2017.5.10. 高槻市出灰)

 どこにでもあるギンゴケですが、いろんな姿を見せてくれます。 蒴をつけたギンゴケはこちらに、ほとんどまっ白なギンゴケはこちらに載せています。

2017-05-29

オニアカハネムシ



 アカハネムシの仲間は何種類かいて、違いがよく分からないのですが、写真のものは触角の様子からオスで、前胸背が赤褐色で側部に黒い紋があり、浅く窪んだ中央部にも黒い紋があることから、オニアカハネムシ Pseudopyrochroa japonica ではないかと思います。


 オニアカハネムシのオスの頭部には先端が前方に曲がっている突起があるということですが、コケに邪魔されて確認できませんでした。

(2017.5.10. 高槻市出灰)

2017-05-28

ヒモヒツジゴケ


 岩から横に紐状の枝を突き出しているのはヒモヒツジゴケ Brachythecium helminthocladum のようです。


 横に這う茎からたくさんの枝が出ています。 枝葉は枝に丸くつき、乾いても密着するだけで縮れません。 胞子体は茎から出ています。


 上は枝葉です。 茎葉は傷んだものばかりですので載せませんが、枝葉を少し大きくしたもので、特徴はよく似ています。
 葉は中央が凹んでいるため、カバーグラスをかけるとしわになりますが、本来の縦じわは、よく似たナガヒツジゴケなどと異なり、ほとんどありません
 (こちらにはカバーグラスで押さえつけないようにして撮った本種の葉を載せています。)
 葉先はやや急に細くなり、尖っています。 中肋は葉身部の長さの2/3ほどです。 葉の基部の細胞は方形~矩形です。


 葉身細胞は狭い六角形で、長さは 55~65μmほどのものが多いようですが、もっと長いものも混じっています。 細胞の幅は 10μm前後です。 ナガヒツジゴケに比較すると、長さも幅も大きな細胞です

(2017.5.10. 高槻市出灰)

2017-05-27

ヤママユの幼虫


 上はコナラの枝にいたヤママユ Antheraea yamamai の幼虫です。

(2017.5.23. 堺自然ふれあいの森)

 ヤママユの卵と繭はこちらに、成虫はメスをこちらに、オスをこちらに載せていますので、ヤママユに関しては、いちおうこれで 卵、幼虫、蛹(繭)、成虫 の全ステージを載せたことになります。

2017-05-26

アカハネムシ(オス)


 上はアカハネムシ Pseudopyrochroa vestiflua のオスでしょう。 すぐに逃げられ、撮れたのは上の写真1枚ですが、みごとな触角に魅せられ、載せることにしました。
 アカハネムシは無毒ですが、体に毒を持つベニボタルに似せることで身を守っている(ベイツ型擬態)と思われます。

(2017.5.9. 堺自然ふれあいの森)

◎ アカハネムシのメスはこちらに載せています。

2017-05-25

ナガハコゴケ


 2016年12月10日、美しい蒴をつけている大きなコケ群落に出会いました。 種の同定には自信が持てなかったので、以下のように継続観察したところ、ナガハコゴケ Weissia longidens のようでした。


 葉の長さは2mmあまりで、中肋は葉先に達しています。 茎の上部の葉が巻縮しかけていますが、乾くと1枚目の写真のように強く巻縮します。


 上は2017年1月6日の状態です。 1枚目の写真からは1ヶ月近く経っていますが、ほとんど変化は無く、カメラを引いて生育環境を撮ってみました。
 その後、何度か見に行きましたが、色が濃くなった蒴が増えた程度で、大きな変化はありませんでしたが・・・


 4月2日に行くと、上のように蒴歯を開いた蒴がありました。 長歯小苔の名前のように、長い蒴歯です。



 蓋の取れたばかりの蒴歯は、ネジクチゴケの蒴歯のように、束になってねじれています。


 上は葉身細胞で、パピラが発達しています。

(堺市南区鉢ヶ峯寺)

2017-05-24

ヤマトムチゴケ



 写真はヤマトムチゴケ Bazzania japonica です。 葉の先端に3歯があります。


 上は腹面から撮ったもので、写真のほぼ中央には伸びはじめた鞭枝が写っています。 複葉の先端は鋸歯状になっています。


 腹葉を1枚取り出してみました(上の写真)。 大きなトリゴンの存在が、この倍率でも分かります。


 上は葉身細胞です。

(2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)

◎ ヤマトムチゴケはこちらにも載せています。

2017-05-23

アカコブコブゾウムシ





 堺自然ふれあいの森のスタッフがドングリを拾い集めて瓶に入れておいたところ、ハイイロチョッキリと共にアカコブコブゾウムシ(またはアカコブゾウムシ) kobuzo rectirostris が羽化してきました。 それを撮らせてもらったのが上の写真です。 撮ったのは5月10日ですが、羽化した日は不明で、たぶん数日前だと思われます。
 長い口吻を除いた体長は 8.5mmほどでした。 和名の「コブコブ」は上翅の盛り上がりからでしょう。


2017-05-22

ヨコグラハネゴケ


 上は樹幹から垂れ下がるヨコグラハネゴケ Plagiochila yokogurensis です。 少し取って顕微鏡で見ると・・・


 ほとんどの葉は(上の写真では全ての葉は)途中から先がなくなっています。 この途中から葉が著しく折れやすいというのも、ヨコグラハネゴケの大きな特徴です。 折れていない葉がどこかにないかと探してみると・・・


 茎の先端に数枚、折れていない葉がありました。 剥がす時に背縁が少し破れてしまいましたが、上がそのうちの1枚です。
 葉先は切頭で、上の写真の葉では背縁に2歯が、葉先に2歯が、腹縁に7歯があります。 なお、平凡社の図鑑には、背縁には1~2歯が、葉先には2~5歯が、腹縁には5~10歯があると書かれています。


 上は葉身細胞です。 トリゴンは大きく、各細胞に数個~10数個見られる油体は、球形~楕円体で、小粒の集合です。


 上が腹葉だと思います。 平凡社の図鑑には「腹葉は痕跡的で線形,1/2まで2裂する。」とありますが、上の写真のものは深裂しています。

(2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)

◎ ヨコグラハネゴケはこちらにも載せています。


2017-05-21

ナミゴヘイゴケ


 写真は樹幹から垂れ下がるナミゴヘイゴケ Spruceanthus semirepandus です。


 上は背面から撮ったものです。 背片の背縁基部は耳状で、茎を覆っています。 スケールの数字の単位はmmです。


 上は腹面から撮ったものです。


 立体的によく分かるように横から光を当ててみました。 背片の腹縁はやや内曲しています。 腹葉は円形、円頭で、ほぼ全縁です。


 葉(側葉)を1枚取り出してみました(少し破れてしまいましたが・・・)。 背片の先は鋭頭です。 腹片は卵形で、背片の縁と重なって分かりづらいのですが、歯があります。


 上は葉身細胞です。 細胞壁は厚く、所々くびれています。 トリゴンは3辺とも凹んでいます。 小さい油体がたくさんあって、細胞全体に散らばっています。

(2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)

こちらには蒴をつけたナミゴヘイゴケを載せています。 また花被の様子はこちらにも載せています。


2017-05-20

トサヒラゴケ


 環境省絶滅危惧I類のトサヒラゴケ Neckeropsis obtusata が樹幹についていました。


 這っている一次茎につく葉は小さく、二次茎には扁平な葉がついています。 セイナンヒラゴケ(以下セイナン)に似ていますが、二次茎はセイナンほど長くならず・・・


 二次茎の葉も葉先はセイナンより円頭で、葉面の横じわもセイナンほど強くありません。

(2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)

2017-05-19

アワゴケ


 上は我が家の庭のアワゴケ Callitriche japonica です。 和名は丸くて小さな葉を泡にたとえたところからのようです。 どれくらい小さい葉なのか、10円硬貨の上に置いてみたのが下です。


 このアワゴケ、じつは蘚苔類ではなく、オオバコ科に分類されている種子植物です。 上の写真の所々に、葉よりもさらに小さい黒っぽいハート形のものが見えますが、これが果実です。 よく見ると、薄い黄緑色をした未熟な果実もあちこちにあります。


 上がその果実で、縁には翼があります。


 花はさらに小さいものでした。 花はすぐに果実になっていくようで、咲いている花は茎の先端近くにわずかに見られるだけでした。
 花は雌雄異花です。 上の写真は、手前の葉を引き下げ、葉腋に咲いている雌花が見えるようにして撮ったものです。 上の写真の赤い四角で囲った中に雄花も雌花も咲いているのですが、どれが花か分かるでしょうか。 下はこの赤い四角で囲った部分の拡大です。


 雌花にも雄花にも花弁やガク片はありません。 雄花はオシベが1本あるだけですし、雌花はメシベが1本あるだけで、柱頭は2裂しています。
 上で花はすぐに果実になっていくようだと書きましたが、上の写真のように、雄花と雌花はすぐ近くに咲いていて、隣花受粉によって結実率を高めているようです。

(撮影:2017.5.19.)

オリンパス TG-5

(この記事は7月8日に一部書き換えています)

 このブログでも、顕微鏡写真深度合成した写真など、TG-4 で撮った写真をたくさん載せていますが、その後継機である TG-5 が、6月16日からアメリカ合衆国で発売されるようです。 日本での発売に関しての情報はまだありませんが、USAでのユーザーの声を踏まえて、間もなく販売されるものと思われます。 6月23日に販売されました。
 TG-4 からの変更点としては、気圧センサー、温度センサー、加速度センサーなど環境センサーのログ機能を搭載していますが、これは私のような使い方をしている者にはあまり関係ありません。 それよりも気になるのは、小さなセンサー(撮像素子)の限界で、画質の悪さが目立った TG-4 でしたが、TG-5 では、TG-3 や TG-4 の 1,600万画素から 1,200万画素へと、あえて画素数を減らしています(こちら)。 同じ大きさのセンサーで画素数が減れば、写真は小さくなりますが、その分画質は良くなるはずです。
 また、特に顕微鏡で深度合成する場合など、マニュアルフォーカス機能がほしかったのですが、これも搭載されました。
 私が対称としている被写体は、コケを含む植物や昆虫など、多岐にわたっていますが、特に昆虫の撮影に関しては、プロキャプチャーモードの追加が大きいと思います。 これは、シャッターを押した時に、予めシャッターを半押ししていた時にメモリーに保存されていた 0.5秒前からの写真5枚が撮れる(つまり過去が撮れる)というもので、虫などの飛び立つ瞬間などを撮るには便利です。 その他、ハイスピードムービーをフルハイビジョンで撮れることや、フル画素で20枚/秒の高速連写が可能になったのも魅力です。

2017-05-18

キダチヒダゴケ



 岩上に群生するキダチヒダゴケ Thamnobryum plicatulumオオトラノオゴケと同じ属で、よく似ていて、コトラノオゴケの別名もあるようですが、二次茎の下部の柄状の部分がオオトラノオゴケより明瞭なようです。


 二次茎の下部にも一次茎にも三角形の小さな葉がついています。


 茎葉は大きく多少扁平についていますが、枝葉は丸くついています。


 上は茎葉です。 中肋は葉先近くに達しています。


 オオトラノオゴケとの明瞭な違いは、葉の中肋の背面がほぼ平滑で、歯が無いことです。


 上は葉身細胞です。

(2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)