大阪市立自然史博物館で特別展「昆虫MANIAC」展が開催中です(2025年7月12日~9月23日)。 下はその中で展示されているエゾオナガバチの拡大模型です。
上の模型の赤い矢印で示した針金状のものは何でしょうか。
このハチに関しては、ブログの Part1の2012.6.3.の記事にしていましたので、この機会に少し加筆訂正してこちらに引っ越しさせることにしました。 写真は2012.6.2.に大阪の枚岡公園で撮影したものです。
1枚目の模型の写真と似た上の写真、立ち枯れたエノキの幹に産卵に来ていたエゾオナガバチ Megarhyssa jezoensis てす。 オナガバチの仲間(ヒメバチ科オナガバチ亜科)は長い産卵管を持ち、これを木の幹に差し込み、幹の中で材を食べて育っているキバチの幼虫に卵を産みつける寄生蜂です。
この木には同じオナガバチの仲間のオオホシオナガバチ M. praecellens も来ていました。 両者は体の大きさも生活の様子もほとんど変わりませんので、以下同様に扱い、その産卵の様子を紹介したいと思います。
なお、この枯れたエノキではヒラアシキバチが育っていますので、これらオナガバチのターゲットはヒラアシキバチの幼虫の可能性が高いように思います。
上はオオホシオナガバチで、産卵管を幹に差し込む前の状態です。 触角で幹をトントンと叩くような行動をとっています。 この行動で幹に潜むキバチの幼虫の位置を探っているのだと言われています。 硬い木の幹を触角でたたいてキバチの幼虫の位置が分かるとは驚きですが、ちゃんとキバチの幼虫に寄生できているのですから、位置が分かっているのでしょうね。
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オオホシオナガバチ |
産卵管を差し込む位置が決まったら、腹部の端を高く持ち上げ、産卵管の先端を目的の位置にセットします(上の写真)。
このまま腹部の端をゆっくりと押し下げ、産卵管を幹に挿入していくのですが・・・
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エゾオナガバチ |
幹に挿入される前の産卵管は、その左右を産卵管鞘とよばれるもので保護されています。 産卵管鞘は幹に入っていきませんから、産卵管が幹に挿入されるにつれて、産卵管鞘は産卵管から離れ、左右に分かれてループ状に取り残されることになります。 最初の模型の赤い矢印は、この産卵管鞘です。
産卵管を挿入する速度は、硬い材に挿入していくのですから、本当にゆっくりですが、こんな細い産卵管が挿入できるというのは驚きです。
上の写真で、産卵管はaからd・eを経て幹の中に挿入されています。 もう大部分の産卵管は幹の中にあります。 そして、この産卵管を保護していた産卵管鞘は、aからb・cを経てdで産卵管といっしょになり、eで終っています。 つまり、木の幹の中にある産卵管の長さは、
(産卵管鞘の長さ=産卵管の長さ)-(差し込まれていない産卵管の長さ)
=(a-b-c-d-e の長さ)-(a-d-e の長さ)
ということになります。
◎ こちら(Part1)には産卵行動の見られる時期やオオホシオナガバチのオスなどを載せています。 Part1は閲覧に時間がかかる状態が続いていますので、そのうちこれも引っ越しさせるつもりではいますが、いつになるか分かりませんので、とりあえずお知らせしておきます。