2026-08-21

トガリバヒョウタンゴケ

山下悟撮影(2026.5.2.)をトリミング


  山下氏が滋賀県大津市で採集されたトガリバヒョウタンゴケ Funaria flavicans を分けていただき、生育状況の分かる写真も送っていただきました。
 Funaria(ヒョウタンゴケ属)は、2001年初版の平凡社の図鑑ではヒョウタンゴケノコギリヒョウタンゴケ(=ヤマトヒョウタンゴケ)しか載せられていませんが、2020年に本種が、2022年にはオニヒョウタンゴケ F. microstoma が日本にも分布することが報告されていて、日本産ヒョウタンゴケ属は4種になっています。なお、本種とオニヒョウタンゴケについては、古い標本では確認されないことなどから、最近日本国内に移入した帰化種である可能性が高いと考えられています。

撮影:山下悟(2026.5.2.)

 葉はヒョウタンゴケより細長いようです。

 中肋が葉先から長く突出しています。 なお、オニヒョウタンゴケでは中肋の突出はわずかですし、ヒョウタンゴケの中肋は葉先から突出しませんし、ノコギリヒョウタンゴケの中肋は葉先に届きません。

 上は葉身細胞です。

 上は葉の断面です。

 上は雌苞葉です。蓋が外れる時に離れた口環も紛れて写っています。

山下悟撮影(2026.5.2.)をトリミング

 蒴が洋梨形で傾き著しく非相称で蒴口が斜めにつくのはヒョウタンゴケ属の特徴です。


 外蒴歯はねじれ、先端がくっつくのも、ヒョウタンゴケ属の特徴です。

 上は蒴歯を蒴の内側から撮った写真です。 外蒴歯の1/4ほどの長さしかない内蒴歯が、外蒴歯の内側に重なるように存在しています。 このような短い内蒴歯が存在するのは、本種とオニヒョウタンゴケに見られる特徴です。

 上は外蒴歯の一部です。 オニヒョウタンゴケであれば、上の写真に見られる横線が飛び出るということです。

 蒴の頸部にはたくさんの気孔が見られました。

 上は蒴から外れた蓋です。

 帽には長い嘴があります(上の写真)。

【参考資料】
木口博史・澤田満.2020.Funaria flavicans Michx.(トガリバヒョウタンゴケ,新称)は日本にも産する.蘚苔類研究12(5).
竹内史・山口富美夫.2026.トガリバヒョウタンゴケ(Funaria flavicans)広島でも見つかる.蘚苔類研究13(8).

2026-08-04

トカチスナゴケ

 上の写真、長い透明尖がめだつ蘚類はトカチスナゴケ Bucklandiella laeta でしょう(京都府南丹市 音谷の滝にて2026.7.20.に撮影)。 和名に「トカチ(十勝)」とありますが、北海道から九州にかけて分布する普通種です。 なお、本種の属名は、平凡社では Racomitrium となっていますが、この属(平凡社では1属14種)は現在では5属19種に整理されています(こちら)。

 乾いた状態では葉は茎に密着していますが、湿ると上のようになります。 茎は斜上し、湾曲する長い枝を出しています。


 葉の長さは3mm前後で、長い透明尖があります。

 上は葉身細胞です。 細胞壁が波状に肥厚しています。

 透明尖には不規則な低い歯はありますが、パピラはありません(上の写真)。

 透明尖の下部と接する葉身細胞は葉の中央部の葉身細胞に似た長い細胞です(上の写真)。 同じ属のヒメスナゴケでは、この部分の細胞が短くなり、波状の肥厚も弱くなります。

 葉の基部の葉縁には、波状に肥厚しない細胞が1列に10~15個並んでいます(上の写真)。 同じ属のヒメスナゴケでは、この細胞列は10個以下です。 なお、この波状に肥厚しない細胞は、若い葉では分かりにくいこともありました。

 上は葉の中央付近の横断面です。 葉は1細胞層で、中肋断面は2細胞層です。 下は葉の基部近くの横断面ですが(倍率は変えています)、上記の特徴は変わりません。

◎ トカチスナゴケはこちらにも載せています。

2026-08-03

オオホウキゴケ@7月


 オオホウキゴケ Solenostoma infuscum が造精器をたくさんつけていました(上の写真:京都府南丹市の音谷の滝にて2026.7.20.撮影)。
 本種は雌雄異株で、近くに花被などはみあたりませんでした。 葉は斜めにつき、広く開出して密に重なっています。

 葉は 1.5mm前後、仮根は多く、淡い赤紫色です。

 葉は卵状舌形で円頭です。

 葉身細胞は薄壁で、トリゴンは大きく、油体は各細胞に4~6個あり、球形~楕円体で、微粒の集合です。
 上は葉の基部の細胞で、油体などは明瞭に観察できたのですが・・・

 上は葉縁の様子です。 葉の中上部の細胞内は写真のように物質が充満しているように見えます。 この物質、反射光で見ると緑色に見える(=葉緑体が混ざっているはず)のですが、透過光で見ると、上のようにあまり光を通さず(=濃度が高い?)、黒っぽく見えます。 これまで私が見たオオホウキゴケは、いつも葉の細胞の多くがこのような細胞でした。

 上は細胞表面にピントを合わせています。 細胞表面には弱いベルカがあります。

 本種は普通種ですが、割合に多形で葉形、大きさなどは変化しやすく(井上『日本産苔類図鑑』の「ノート」)、似た種も多く、同定にはなかなか自信が持てず、何度もブログに載せることになってしまいます。
 本種は冬季にはしばしば赤色を帯びます。 冬を越した春先(3月初旬)の様子をこちらに載せています。
 胞子散布も春先です。 その様子をこちらに載せています。 そして4月になると、瑞々しい緑の葉を広げはじめます(こちら)。

2026-07-29

オタルヤバネゴケ@7月

 写真はオタルヤバネゴケ Cephalozia otaruensis でしょう。 2026.7.20.に京都府の美山町で撮影しました。 本種は雌雄異株ですが、上の写真の群落には雌株も雄株も混じっていました。

 上は雌株です。 ルーペでは花被の存在に気づきませんでしたが、実体双眼顕微鏡で探すと、あちこちで茎または短枝に頂生していました。
 上の写真ではいろいろな方向に茎が伸びていますが、これらの茎は全てつながっていることを確認しています。 茎には葉を密につけた太い茎(b)と、群落内部を走る長く伸びて葉をまばらにつけた細い茎(c)が見られます。

 a~cの拡大を下に載せます。

 上はaの花被です。 花被の口部は長毛状です。 花被を取り巻く雌苞葉の裂片は狭三角形で全縁です。

 上は上段がbの、下段がcの拡大です(上段と下段で倍率は異なります)。 いずれも葉は茎に対して横に近い斜めについています。
 下段では茎のどの細胞に葉がついているのか、よく分かりますが、上段ではこの葉と茎の関係が分かりませんので・・・

 上は太い茎の葉のつき方を示すために、深度合成したものです。ゴミが多いなど分かりにくい写真になってしまいましたが、太い茎(b)でも細い茎(c)でも、ミジンコヤバネゴケなどのマルバヤバネゴケ属とは異なり、左右の葉の背縁基部の間に表皮細胞の列はありません。
 茎の表皮細胞は、b・c 共に 35-70 × 35-45μmでした。

 上は葉身細胞で、大きさは 45-65 × 20-50μmです。

 上は茎の横断面です。 1層の大きく薄壁の表皮細胞の内側に、小さく薄壁の髄細胞があります。


 上は造精器をつけた雄株です。 それぞれの造精器は1枚の雄苞葉に保護されているため、上の写真のような横からの撮影では、造精器は雄苞葉を通してしか見ることができません。

 上は雄苞葉から取り出した造精器です。

こちらには本種の葉1枚の形がよく分かる写真を載せています。 また上は受精前の様子ですが、受精して若い胞子体ができている12月の状態をこちらに、その胞子体が成熟し、胞子を散布している3月の様子をこちらに載せています。

2026-07-25

ハラツボミゴケ

 上は 2026.7.11.に京都府の美山町佐々里で撮った苔類です。 この仲間(ソロイゴケ属やツボミゴケ属)は、平凡社ではツボミゴケ属として37種が載せられていますが、検索表は花被が無いと使い物になりません。 ということで、今回もM氏の助けを借りることで、ハラツボミゴケ Solenostoma rotundatum だろうということになりました。
 上の写真の赤い矢印で示した所などに見られる粒状のものは造精器です。


 茎は匍匐~斜上し、直立していません。 葉を含めた茎の幅は 2.5mmほどあります。 赤褐色の仮根がありすが、束になって茎に沿って流下することはありません。


 葉は円頭でほぼ円形ですが、幅が長さより少し長くなっています。

 葉身細胞は薄壁で、トリゴンは発達しておらず、油体は各細胞に2個で微粒の集合です。

 葉縁の細胞は他の細胞とほぼ同じ~少し小形です。

 上は最初の写真の赤い矢印で示した造精器です。 短い柄がついています。

◎ ハラツボミゴケはこちらにも載せています。