2023-09-29

マルバヤバネゴケ?

 

 写真の花被をつけたコケ、2023.9.10. 北海道・雌阿寒温泉近くの森にあったコケです。 マルバヤバネゴケ Cephalozia lunulifolia だと思うのですが、平凡社では分布は本州~九州となっていて、北海道には分布しないことになっています。

 葉は茎に斜め~縦についています。

 葉は2裂し、裂片は披針形~三角形で、先端は相接しています。 葉の背縁基部は長く下延しています。 腹葉はありません。

 葉身細胞は 15-35×15-35μmで、油体はありません(上の写真)。

 上は茎の横断面です。 大きな表皮細胞に囲まれて、厚壁の小さな髄細胞があります。

 花被の基部は多くの雌苞葉に囲まれています(上の写真)。 平凡社には「雌苞葉の外縁の刺が1個と少なく(以下略)」とあり、たしかにそのような雌苞葉もあるのですが(上の写真の赤い矢印)、それ以外の形態の雌苞葉もいろいろありました。

 上は花被の口部です。

◎ マルバヤバネゴケと思われるコケはこちらにも載せています。

2023-09-28

ウスバゼニゴケ(雄株)

 ウスバゼニゴケ Blasia pusilla は雌雄異株です。 上は雄株で、葉状体背面の中肋上に造精器が入っていた膨らみがたくさん並んでいます。

 上で「造精器が入っていた膨らみ」と書いたのは、拡大してみるとこの膨らみには孔が開いているからで、精子が出てしまった後でしょう。

 上は葉状体の中肋部の横断面です。 気泡が入ってしまいましたが、造精器のあった所は空洞になっています。 腹面の右側には腹鱗片がついています。

 最初の写真でも、まだ造精器の残っている所があちこちに見られます。 上はその部分の断面です。

(2023.9.10. 北海道 オンネトー)

こちらには葉状体内に胚のある本種の雌株を、こちらには本種の無性芽器と無性芽を、こちらには葉状体の細胞などを載せています。

2023-09-27

ハイヒバゴケ


 上は北海道の支笏湖近くの美笛峠で泉田氏が2023.8.29.に撮影されたコケですが、このコケを送っていただき、調べたところ、ハイヒバゴケ Hypnum cupressiforme のようでした。
 平凡社では、本種は岩上や木の根元に生えるとありますが、上の写真では根元ではありません。 しかし Wikipedia によると、本種は世界的な非常に広い分布を持つコケ植物で、生息環境なども多岐に渡るが、通常は木の幹や丸太、壁、岩、その他の表面などで生育するとあります。

 茎は這い、不規則な羽状に分枝しますが、変異が非常に大きい種で、これまでに載せたこちらこちらなどと比較しても、分枝の様子や葉先の曲がりぐあいなどで、かなり肉眼~ルーペレベルの印象が異なるように思います。

 葉は卵形の葉身部から急にまたは次第に細くなり、葉先は鎌状に曲がるかまっすぐ、翼部は暗緑色~褐色の明瞭な区画をつくっています。 また、上の写真の右側の葉のように、下部でしばしば反曲します。

 翼部には方形の細胞が多数見られ、縁に沿っては6~15個が並びます。

 上は葉先です。 葉先に限らず、葉縁はほぼ全縁か、わずかに目立たない歯があります。

 葉身細胞は線形で、長さ40~60μm、幅3~5μmです(上の写真)。

 偽毛葉は糸状です(上の写真)。

 上は茎の断面です。 茎の表皮細胞は分化していません。

 上は蒴です(泉田氏撮影)。 蒴はやや傾いてつき、円筒形で少し曲がっています。

 上は雌苞葉です。 近縁の何種類かには雌苞葉に縦じわがあるのですが、本種の雌苞葉は披針形でしわはありません。

2023-09-26

チシオタケ

 写真はチシオタケ Mycena haematopus でしょう。 朽木に生えていました。 傘の縁にはフリンジと呼ばれる鋸歯状のつくりが見られます。 柄は傘より濃い赤い色をしているのですが、その表面は細かい綿毛状の繊維に覆われています。

 本種の大きな特徴は、若いきのこでは傷口から赤色をした液が内部から染み出てくることでしょう。 和名もここから来ていますし、種小名も、「hemato」は「血液」を意味するギリシャ語です。 上の写真の黄色の矢印の所でも“出血”しています。
 ひだは柄に対して直生します。 最初は白色ですが、時間経過とともに傘に似た色になってきます。

(2023.9.23. 箕面公園)

2023-09-25

ヒメアカネ

 写真はヒメアカネ Sympetrum parvulum でしょう。 大阪府豊能郡能勢町の地黄湿地にたくさんいました(2023.9.25.撮影)。 湿地で見られるトンボ科アカネ属のいわゆる赤とんぼで、和名のとおり国内の赤とんぼでは最小です。
 本種はマユタテアカネよりひと回り小さいのですが、胸側面の黒色条の様子など、よく似ています。 両者のオスの確実な違いは腹端の上付属器の形で、マユタテアカネのそれが大きくそり上がっているのに対し、本種の腹端の上付属器は反りが弱く、ほとんど平らです(下の写真)。

 ところで、上の写真はオスが腹端の付属器でメスをつかまえていると同時に、メスはオスの腹部に4本の脚でとまっています。 このように、静止している時には4本の脚しか使わない昆虫がたくさんいることを、「昆虫の脚はなぜ6本か」に書いています。