2025-07-10

トウヨウネジクチゴケ

 写真はトウヨウネジクチゴケ Barbula indica だと思います。 法面の濡れた窪みにありました。 上は湿った状態、下は乾いた状態です。

 乾くと葉はキールして凹み、ねじれて茎に寄ります。

 葉は披針形で、基部は多くのセンボンゴケ科と同様、透明な細胞からなっています(上の写真)。 上の写真では、この透明細胞群が葉縁に沿ってせり上がっているようにも見えますが、多くの葉を見ると、そのようではありません。(上の葉を載せたのは、基部までいちばんよく残っていたからです。)
 葉縁は上部で平坦、下部で狭く反曲しています。

 上は葉先で、中肋は少し突出しています。

 中肋背面の表皮細胞は細胞の上下の両端(=前後の細胞のつなぎ目)に大きなこぶ状のパピラがあります(上の写真)。

 中肋腹面の表皮細胞も厚壁で丸みを帯びた長方形です(上の写真)。

 上~中部の葉身細胞は方形ですが、細胞の輪郭は不明瞭で、C字形のパピラがあります(上の写真)。 上は葉の背面ですが・・・

 上は葉の中部の断面です。 パピラは背腹両面に同じようにあります。

 上は葉の中部の中肋付近の断面です。 中肋は強く竜骨状となり背面に突き出ています。 ステライドは背腹両面にあります。 中肋の背面にも腹面にもパピラがあります。

 葉の下部の細胞は矩形で透明です(上の写真)。

 上は葉の下部の断面です。 パピラは無く、葉縁は狭く反曲しています。

 上は無性芽です。 葉腋についているはずですが、全部落ちてしまっていました。


 上の2枚は茎の断面です。 表皮細胞は分化せず、中心束があります。

(2025.6.29. 貝塚市 秋山川遊歩道)

◎ トウヨウネジクチゴケはこちらにも載せていますし、こちらには蒴をつけた姿を載せています。

2025-07-03

ミヤマスナゴケ


 写真はミヤマスナゴケ Dilutineuron fasciculare だと思います。 岩上に大きな群落を作っていました。

 上の最小目盛は1㎜です。 生育している様子から受けた印象より長く伸びていて、何年も伸び続けているようです。 伸びながら古い分枝は切り離されるのか、分枝は茎の上部で見られます。 種小名の fasciculus はラテン語の「小束」に由来しますが、上のような茎が集まった群落の様子を表しているのではないでしょうか。

 上の写真で、葉の長さは約2㎜、中肋は弱く(下の葉の断面でも分かります)、上の倍率では少し分かりにくいのですが、葉先近くにまで延びてきています。 蒴柄の長さは約 2.5㎜です。
 属名 Dilutineuron は、ラテン語の Diluti-(希薄な)とギリシャ語由来の -neuron(糸状の構造)からなっています。 私はこの属名は中肋の様子に由来すると思っているのですが、どうでしょうか。

 上は葉の断面です。 中肋は2細胞層で、背面に突出し、腹面は平坦です。

 葉先の細胞はパピラも無く、細長くなっていますが、透明尖はありません(上の写真)。 また、葉先近くから葉の基部に至るまで、細胞は長方形です。

 上は葉身細胞、下はその横断面です。

 葉身細胞には縦壁上にかぶさるように平坦な大きなこぶ状のパピラがあります。


 翼部の様子は葉によって少し異なりますが、有色で、無色になることはありません(上の2枚の写真)。


 蒴歯は短列で、表面は微小なパピラで覆われ、少なくとも中ほどまでやや対になって裂けています(上の2枚の写真)。

(2025.6.1. 京都市右京区 標高500m付近)

2025-07-01

ヤマモモ


 上はヤマモモ  Morella rubra の果実で、果実の重みで枝が垂れ下がっています。 2025.6.29.に貝塚市にある大阪府立少年自然の家での撮影ですが、ここではたくさん自生している木が見られ、地面に落ちてしまった果実もたくさんありました。
 本種は関東以南に自生する常緑樹です。 放線菌の一種であるフランキア菌によって根粒を形成していますので、やせ地でも育つことができます。

 本種は雌雄異株で、4月に花を咲かせます。 上は雌花序で、1つの花序にたくさんの雌花がついていますが、そのうち果実として残るのは1(~3)個です。

 上は雄花序で、1つの雄花に5~8本のオシベがあります。

2025-06-30

タカネヤバネゴケ

 写真はタカネヤバネゴケ Fuscocephaloziopsis leucantha だと思います。 前に載せたナンジャモンジャゴケに混生していました。
 葉は横に近い斜めにつき、葉の幅は茎径とほぼ同じです。

 上は腹面を撮っています。 分枝は腹面からもしています。 腹葉はありません

 葉は幅が約 0.15㎜、1/2~1/3までV字形に2裂しています(上の写真)。 背側の裂片は小さく、欠くこともあるようです。 葉身細胞はやや厚壁で、トリゴンや油体はありません。

◎ タカネヤバネゴケはこちらにも載せています。

2025-06-28

ナンジャモンジャゴケ

 岡山コケの会関西支部では毎月第4火曜日に顕微鏡観察会を行っていますが、6月の観察会にと長野県のKさんからいろいろなコケを送っていただきました。 上はそのうちの1種で、ナンジャモンジャゴケです。

 上は葉の横断面です。 蘚類でも苔類でも葉には背面と腹面があるのですが、本種ではその区別がつきません。 現在では本種は蘚類の中で最も早く枝分かれしたグループとされていますが、そのことと関係しているのでしょうか。


 上の2枚は茎にあった粘液細胞です。 本種が発見された当初、蘚類か苔類かなのかも不明でしたが、苔類とする意見の方が多かったようです。 苔類とする根拠の1つが上の粘液細胞で、このような粘液細胞は苔類に見られますが、蘚類には見られません。
◎ 本種の粘液細胞はこちらにも載せています。

 上は茎の断面です。 葉とは異なり、茎は中実です。

こちらこちらには本種の自生している様子などを載せています。