2020-07-04

サトジガバチの寝姿

 下は、2013.5.30.に撮影し、Part1の 2013.6.4.の記事にしていたものを、少し書き換えてこちらに移植したものです。
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 顎の力の強いハチの仲間は、眠る時、顎で何かにつかまり、体を固定するようです。 そらさんのところでは、サトジカバチのその様子が載せられていますし(こちらこちら)、私も別のハチで見たことがあります。
 今回、私もサトジガバチ(だと思います)で、同様の寝姿を記録することができました。


 違う点は、季節と、私が見たのは集団で寝ていたことです。 ざっと見ても10頭近くいました。



 写真を撮っていると動きだすものもいましたが、しばらくすると、また顎で葉を咬み、眠りだしました。 撮影時間は午後3時半頃、小雨が降ったり止んだりしていましたが、撮影の場所は道路の高架橋下で、雨のかからない場所でした。 羽化したばかりの兄弟蜂が穴から這い出した疲れを癒しているのでしょうか。 それとも、明るさからして、もうお休みの時間になっていたのでしょうか。


 ところで、ジガバチにもたくさんの種類がいます。 キゴシジガバチやアメリカジガバチなどは色の違いなどで区別できるのですが、フィールドで出会ってややこしいのは、ミカドジガバチ、サトジガバチ、ヤマジガバチです。 近寄って撮れるこの機会に、見分けるポイントとなる部分を撮ってみました。 ただし以下に書くことは、私がそう理解しているということであって、間違っている可能性もあります。


 ミカドジガバチ Hoplammophila aemulans は腹部第2節の末端が膨大し、サトジガバチ Ammophila sabulosa やヤマジガバチ A. infesta の腹部第2節は柄状です。 結果として、サトジガバチやヤマジガバチの腹部の柄状の部分は、ミカドジガバチの柄状の部分よりも長く見えます。
 上の写真で黄色の▲の所が節の境だと思いますので、ミカドジガバチではないと思います。 水色の▲の所が気になりますが、単なる模様でしょうか。


 サトジガバチとヤマジガバチの違いについては、生態的にはいろいろ異なる点があるものの、形態的な違いはわずかで、その違いの1つとして、サトジガバチの中胸背板には皺が見られ、ヤマジガバチの中胸背板には皺が無いとのことです。 上の写真がその皺なのでしょうか。


2020-07-03

テリカワキゴケ?


 垂直に近い岩に育つコケ、2020.6.24.に奈良県宇陀市の標高 500m付近での撮影です。 濡れているのは昨日の雨のせいかもしれませんが、たぶんいつも岩から水がしみ出しているのだと思います。


 枝分かれは少なく、葉の長さは 1.5~2.5mmです。


 上は1枚の葉です。 葉は披針形で、基部は下延しています。 中肋は葉先近くに届いています。



 葉先が気になって何枚かの葉を観察しました。 透明尖がある葉も無い葉もあります。 葉が新しいこともあるでしょうが、透明尖がよく発達する種では無さそうです。


 葉の基部付近の細胞は縦壁が波状に肥厚していますが、葉縁基部には縦壁が波状に肥厚しない細胞が1列に、上の写真では6~7個並んでいます。


 上はプレパラート作成時に折り畳まれてしまった葉の中部で、細胞を横から見る事ができるのですが、パピラは存在していないようです。

 以上の観察結果から、このコケはRacomitrium(シモフリゴケ属)だと思われます。 平凡社のこの属の検索表をたどると、テリカワキゴケ Racomitrium nitidulum に落ちました。 しかしこの種についての解説は無く、保育社の図鑑や野口には名前すらありません。 たぶん最近になって独立させられた種なのでしょう。 ですので分布や生育環境もよく分からないのですが、検索してみると八ヶ岳のリストに上がっています。
 とりあえず「?」付きのタイトルにしておきますので、情報をお持ちの方がおられましたら、お教えください。
 なお、Racomitrium(シモフリゴケ属)は見直しが行われていて、複数の属に分けられるようです。

2020-07-02

コジキイチゴ


 写真はいわゆるキイチゴの一種で、本州中部以南に分布するコジキイチゴ Rubus sumatranus です。 果実(偽果)も木の高さも、キイチゴ類のうちでは大きい方です。


 上にも書いたように、キイチゴ類の果実は偽果で、「キイチゴ状果」と呼ばれています。 キイチゴ状果を構成している粒の1つずつがほんとうの果実で、この中に種子が1つ入っています。 上の写真でも、ほんとうの果実1つずつにメシベの花柱の跡が残っているのが分かります。
 つまりキイチゴ状果は、ほんとうの果実が隣同士互いにくっつきあって1つの果実のようになっています。 多くのキイチゴ類のキイチゴ状果が球形に近いのに対し、コジキイチゴのキイチゴ状果は大きく、楕円体です。
 ちなみに、果物のイチゴもやはり偽果ですが、ほんとうの果実は表面についているゴマ粒のようなもので、私たちが美味しく食べているのは、たくさんのほんとうの果実を並べておく発達した花托の部分です。
 キイチゴ類でも、イチゴほどではありませんが、花托は発達しています。 偽果を取り除くと後に残る膨れた部分が花托です。


 たくさんのほんとうの果実が層状にくっつきあって大きくなれば、その内部は空洞化します。 上はコジキイチゴのキイチゴ状果の内側を見たもので、背景は私の手のひらです。 内部が空洞になっているのが分かるでしょう。
 コジキイチゴの名前の由来にはいろいろな説がありますが、有力な説の1つでは、この内部が空洞の偽果の様子が蒸し器として使われた甑(こしき)に似ていることから、「こしきいちご」が訛ったものとされています。
 このキイチゴ状果は、甘さは控えめですが、あっさりしていて、おいしく食べることができます。


 コジキイチゴの葉は3~11枚ほどの小葉からなる複葉で、茎には棘があります。 またコジキイチゴの特徴の1つに、葉の裏面脈上や茎などの腺毛の多さが挙げられます。 特に茎の赤く長い腺毛は、上の写真のように、逆光で見るとなかなか美しいものです。
 下は茎の腺毛を拡大したものです。


※ 上は、Part1の 2014.7.6.の記事を、少し加筆のうえ、こちらに引っ越しさせたものです。


2020-07-01

ミヤマカワトンボ、ニホンカワトンボ

 翅が褐色系のカワトンボ類2種です。


 上はミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia のオスです。 2020.6.24.に奈良県宇陀市で撮影しました。 翅に光が当たっていないので少し分かりにくいのですが、赤褐色の翅の翅端近くに幅広い1条の濃色帯があります。
 メスは腹部も銅色を帯びています。


 上はニホンカワトンボ Mnais costalis だろうと思います。 2018.4.29.に京都市の大原で撮影しました。 本種の翅の色は、橙色の他に、淡い橙色、無色の3タイプがあります。 羽化後の未成熟な個体は金属光沢のある青緑色をしていますが、成熟するにつれて青白い粉で覆われてきます。 メスや羽化して間もないオスの縁紋は、上の写真のように白色ですが、オスの縁紋は赤色です。
 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa とは、縁紋の長さなどでかろうじて区別できますが、酷似しています。 近畿・中国地方では両種が混生し、ニホンは河川の中流域、アサヒナは上流域と、棲み分けがみられるようです。


2020-06-30

ケゼニゴケの生殖に関するフェノロジー


 開裂後の蒴をつけたケゼニゴケ Dumortiera hirsuta を観察しました。


 たくさんの弾糸が残っていて、蒴の様子はよく分かりません。 下はこの弾糸の大部分を取り除き、雌器托を裏返しにして撮影しています。


 蒴は4裂しています。



 上は弾糸と胞子です。

(以上、2020.6.24. 奈良県宇陀市)

 では、このケゼニゴケはいつ胞子を散布するのか、過去の写真を探すと、2018.6.13.に大阪府高槻市の川久保渓谷で撮影した、胞子を出している下の写真がありました。


 この機会に、ケゼニゴケの生殖に関する変化を追えるように、下にまとめておきます。

雌器托
・若い胚、柄は伸びていない(12月中旬) → こちら
・高く伸びている(5月下旬) → こちら
・胞子散布(6月中旬) → 上の写真
・胞子散布後(6月下旬) → 上の写真

雄器托
・まだ緑色(9月中旬) → こちら
・精子放出後(12月中旬) → こちら

 上の流れからすると、受精は11月下旬~12月上旬あたりになるのでしょうか。