2026-08-27

ヒメヤスデゴケ

 上はヒメヤスデゴケ Frullania diversitexta でしょう。 背片は卵形、円頭です。 腹片は棍棒状~円筒形で、茎に対して約 30°の角度で斜めに開出しています。

 大阪RDBの現地調査のため、仁徳天皇陵に入れていただけることになり、7月22日に第1堤と第2堤の蘚苔類を数名で調査しました。 御陵内は原則採集禁止ですが、蘚苔類は顕微鏡での確認が必要なため、少量の採集を認めていただきました。
 写真のヒメヤスデゴケはM氏が採集された1種で、私も分けていただきました。 少量採集されたものの一部ですので、生態写真はもちろんありませんし、ゴミも多い写真ですが、本種は大阪では希産種ですので、ここに記録を残しておくことにします。

 上は、花被はありませんが、雌苞葉と雌腹苞葉でしょう。 雌苞葉・雌腹苞葉の葉縁は全縁です。


 腹葉は広卵形~広心臓形で、1/5まで2裂しています(上の2枚の写真)。

 上は葉身細胞です。

◎ ヒメヤスデゴケはこちらにも載せています。

2026-08-26

トゲハヒシャクゴケ

 写真はトゲハヒシャクゴケ Scapania hirosakiensis でしょう。 周囲にはオタルヤバネゴケがたくさんあります。
 上は 2026.7.20.に京都府南丹市美山町にある音谷の滝近く、標高450m付近で撮りました。 本種の分布は平凡社では紀伊半島以北の本州の亜高山帯となっています。


 背片は腹片の1/2~1/3の長さです。 背片も腹片も葉縁には歯があります。 和名の「トゲハ(刺葉)」はこの様子からでしょう。

 上は腹片上部の、下は腹片下部の葉縁です。

 葉縁の歯は1細胞幅で、先端の細胞は披針形です。

 上は葉身細胞です。 細胞の表面にはいぼ状ベルカが密生しています。

◎ トゲハヒシャクゴケはこちらにも載せています。

2026-08-21

トガリバヒョウタンゴケ

山下悟撮影(2026.5.2.)をトリミング


  山下氏が滋賀県大津市で採集されたトガリバヒョウタンゴケ Funaria flavicans を分けていただき、生育状況の分かる写真も送っていただきました。
 Funaria(ヒョウタンゴケ属)は、2001年初版の平凡社の図鑑ではヒョウタンゴケノコギリヒョウタンゴケ(=ヤマトヒョウタンゴケ)しか載せられていませんが、2020年に本種が、2022年にはオニヒョウタンゴケ F. microstoma が日本にも分布することが報告されていて、日本産ヒョウタンゴケ属は4種になっています。なお、本種とオニヒョウタンゴケについては、古い標本では確認されないことなどから、最近日本国内に移入した帰化種である可能性が高いと考えられています。

撮影:山下悟(2026.5.2.)

 葉はヒョウタンゴケより細長いようです。

 中肋が葉先から長く突出しています。 なお、オニヒョウタンゴケでは中肋の突出はわずかですし、ヒョウタンゴケの中肋は葉先から突出しませんし、ノコギリヒョウタンゴケの中肋は葉先に届きません。

 上は葉身細胞です。

 上は葉の断面です。

 上は雌苞葉です。蓋が外れる時に離れた口環も紛れて写っています。

山下悟撮影(2026.5.2.)をトリミング

 蒴が洋梨形で傾き著しく非相称で蒴口が斜めにつくのはヒョウタンゴケ属の特徴です。


 外蒴歯はねじれ、先端がくっつくのも、ヒョウタンゴケ属の特徴です。

 上は蒴歯を蒴の内側から撮った写真です。 外蒴歯の1/4ほどの長さしかない内蒴歯が、外蒴歯の内側に重なるように存在しています。 このような短い内蒴歯が存在するのは、本種とオニヒョウタンゴケに見られる特徴です。

 上は外蒴歯の一部です。 オニヒョウタンゴケであれば、上の写真に見られる横線が飛び出るということです。

 蒴の頸部にはたくさんの気孔が見られました。

 上は蒴から外れた蓋です。

 帽には長い嘴があります(上の写真)。

【参考資料】
木口博史・澤田満.2020.Funaria flavicans Michx.(トガリバヒョウタンゴケ,新称)は日本にも産する.蘚苔類研究12(5).
竹内史・山口富美夫.2026.トガリバヒョウタンゴケ(Funaria flavicans)広島でも見つかる.蘚苔類研究13(8).

2026-08-04

トカチスナゴケ

 上の写真、長い透明尖がめだつ蘚類はトカチスナゴケ Bucklandiella laeta でしょう(京都府南丹市 音谷の滝にて2026.7.20.に撮影)。 和名に「トカチ(十勝)」とありますが、北海道から九州にかけて分布する普通種です。 なお、本種の属名は、平凡社では Racomitrium となっていますが、この属(平凡社では1属14種)は現在では5属19種に整理されています(こちら)。

 乾いた状態では葉は茎に密着していますが、湿ると上のようになります。 茎は斜上し、湾曲する長い枝を出しています。


 葉の長さは3mm前後で、長い透明尖があります。

 上は葉身細胞です。 細胞壁が波状に肥厚しています。

 透明尖には不規則な低い歯はありますが、パピラはありません(上の写真)。

 透明尖の下部と接する葉身細胞は葉の中央部の葉身細胞に似た長い細胞です(上の写真)。 同じ属のヒメスナゴケでは、この部分の細胞が短くなり、波状の肥厚も弱くなります。

 葉の基部の葉縁には、波状に肥厚しない細胞が1列に10~15個並んでいます(上の写真)。 同じ属のヒメスナゴケでは、この細胞列は10個以下です。 なお、この波状に肥厚しない細胞は、若い葉では分かりにくいこともありました。

 上は葉の中央付近の横断面です。 葉は1細胞層で、中肋断面は2細胞層です。 下は葉の基部近くの横断面ですが(倍率は変えています)、上記の特徴は変わりません。

◎ トカチスナゴケはこちらにも載せています。

2026-08-03

オオホウキゴケ@7月


 オオホウキゴケ Solenostoma infuscum が造精器をたくさんつけていました(上の写真:京都府南丹市の音谷の滝にて2026.7.20.撮影)。
 本種は雌雄異株で、近くに花被などはみあたりませんでした。 葉は斜めにつき、広く開出して密に重なっています。

 葉は 1.5mm前後、仮根は多く、淡い赤紫色です。

 葉は卵状舌形で円頭です。

 葉身細胞は薄壁で、トリゴンは大きく、油体は各細胞に4~6個あり、球形~楕円体で、微粒の集合です。
 上は葉の基部の細胞で、油体などは明瞭に観察できたのですが・・・

 上は葉縁の様子です。 葉の中上部の細胞内は写真のように物質が充満しているように見えます。 この物質、反射光で見ると緑色に見える(=葉緑体が混ざっているはず)のですが、透過光で見ると、上のようにあまり光を通さず(=濃度が高い?)、黒っぽく見えます。 これまで私が見たオオホウキゴケは、いつも葉の細胞の多くがこのような細胞でした。

 上は細胞表面にピントを合わせています。 細胞表面には弱いベルカがあります。

 本種は普通種ですが、割合に多形で葉形、大きさなどは変化しやすく(井上『日本産苔類図鑑』の「ノート」)、似た種も多く、同定にはなかなか自信が持てず、何度もブログに載せることになってしまいます。
 本種は冬季にはしばしば赤色を帯びます。 冬を越した春先(3月初旬)の様子をこちらに載せています。
 胞子散布も春先です。 その様子をこちらに載せています。 そして4月になると、瑞々しい緑の葉を広げはじめます(こちら)。