2026-09-02

サワクサリゴケ

 湿岩上に育つ上の写真のコケ、手前は急に深くなっていて近づけず、接写はできませんでした。 手を思いっきり伸ばして少し採集し、調べることにしました。



 葉は腹片が無く(と思い込み)、腹葉はほぼ円形に近く、1/2ほどがV字形に2裂しています。 きっとツキヌキゴケ科だろうと思い、いろいろ調べたのですが分からず、M氏に援助要請。 結果はサワクサリゴケ Lejeuea aquatica のようです。

 本種の腹片は小さく、しばしば痕跡的になります。 腹片がほとんど目立たないクサリゴケ科があることをすっかり忘れていました。 思えば植物体はとても小さく柔らかく、この時点で本種であることを疑うべきでしたし、小さく分かりにくいとはいえ、瓦状か倒瓦状かもきちんと確認すべきでした。

 上は葉身細胞です。

(2026.7.20. 京都府南丹市美山町 音谷の滝)

◎ サワクサリコケはこちらこちらにも載せています。

2026-09-01

ムラサキヒシャクゴケ


 写真はムラサキヒシャクゴケ Scapania undulata でしょう。 これまで載せた本種(こちらこちら)はいずれも水中でしたが、今回は湿岩上に育っていたものです。

 葉は接在し、植物体の下部は赤紫色をしています。 上の写真の植物体の長さは3cm足らずですが、よく成長したものでは10cmほどになるようです。

 背片は腹片の1/2~3/4長です。 キールはわずかに弓形に凹み、腹片の約1/2の長さです。

 腹片や背片の葉縁には1細胞からなる歯が散生しています。 上は腹片の歯です。


 葉身細胞はトリゴンが小さく、薄壁~やや厚壁です(上の2枚の写真)。

(2026.7.20. 京都府南丹市美山町 音谷の滝)

2026-08-27

ヒメヤスデゴケ

 上はヒメヤスデゴケ Frullania diversitexta でしょう。 背片は卵形、円頭です。 腹片は棍棒状~円筒形で、茎に対して約 30°の角度で斜めに開出しています。

 大阪RDBの現地調査のため、仁徳天皇陵に入れていただけることになり、7月22日に第1堤と第2堤の蘚苔類を数名で調査しました。 御陵内は原則採集禁止ですが、蘚苔類は顕微鏡での確認が必要なため、少量の採集を認めていただきました。
 写真のヒメヤスデゴケはM氏が採集された1種で、私も分けていただきました。 少量採集されたものの一部ですので、生態写真はもちろんありませんし、ゴミも多い写真ですが、本種は大阪では希産種ですので、ここに記録を残しておくことにします。

 上は、花被はありませんが、雌苞葉と雌腹苞葉でしょう。 雌苞葉・雌腹苞葉の葉縁は全縁です。


 腹葉は広卵形~広心臓形で、1/5まで2裂しています(上の2枚の写真)。

 上は葉身細胞です。

◎ ヒメヤスデゴケはこちらにも載せています。

2026-08-26

トゲハヒシャクゴケ

 写真はトゲハヒシャクゴケ Scapania hirosakiensis でしょう。 周囲にはオタルヤバネゴケがたくさんあります。
 上は 2026.7.20.に京都府南丹市美山町にある音谷の滝近く、標高450m付近で撮りました。 本種の分布は平凡社では紀伊半島以北の本州の亜高山帯となっています。


 背片は腹片の1/2~1/3の長さです。 背片も腹片も葉縁には歯があります。 和名の「トゲハ(刺葉)」はこの様子からでしょう。

 上は腹片上部の、下は腹片下部の葉縁です。

 葉縁の歯は1細胞幅で、先端の細胞は披針形です。

 上は葉身細胞です。 細胞の表面にはいぼ状ベルカが密生しています。

◎ トゲハヒシャクゴケはこちらにも載せています。

2026-08-21

トガリバヒョウタンゴケ

山下悟撮影(2026.5.2.)をトリミング


  山下氏が滋賀県大津市で採集されたトガリバヒョウタンゴケ Funaria flavicans を分けていただき、生育状況の分かる写真も送っていただきました。
 Funaria(ヒョウタンゴケ属)は、2001年初版の平凡社の図鑑ではヒョウタンゴケノコギリヒョウタンゴケ(=ヤマトヒョウタンゴケ)しか載せられていませんが、2020年に本種が、2022年にはオニヒョウタンゴケ F. microstoma が日本にも分布することが報告されていて、日本産ヒョウタンゴケ属は4種になっています。なお、本種とオニヒョウタンゴケについては、古い標本では確認されないことなどから、最近日本国内に移入した帰化種である可能性が高いと考えられています。

撮影:山下悟(2026.5.2.)

 葉はヒョウタンゴケより細長いようです。

 中肋が葉先から長く突出しています。 なお、オニヒョウタンゴケでは中肋の突出はわずかですし、ヒョウタンゴケの中肋は葉先から突出しませんし、ノコギリヒョウタンゴケの中肋は葉先に届きません。

 上は葉身細胞です。

 上は葉の断面です。

 上は雌苞葉です。蓋が外れる時に離れた口環も紛れて写っています。

山下悟撮影(2026.5.2.)をトリミング

 蒴が洋梨形で傾き著しく非相称で蒴口が斜めにつくのはヒョウタンゴケ属の特徴です。


 外蒴歯はねじれ、先端がくっつくのも、ヒョウタンゴケ属の特徴です。

 上は蒴歯を蒴の内側から撮った写真です。 外蒴歯の1/4ほどの長さしかない内蒴歯が、外蒴歯の内側に重なるように存在しています。 このような短い内蒴歯が存在するのは、本種とオニヒョウタンゴケに見られる特徴です。

 上は外蒴歯の一部です。 オニヒョウタンゴケであれば、上の写真に見られる横線が飛び出るということです。

 蒴の頸部にはたくさんの気孔が見られました。

 上は蒴から外れた蓋です。

 帽には長い嘴があります(上の写真)。

【参考資料】
木口博史・澤田満.2020.Funaria flavicans Michx.(トガリバヒョウタンゴケ,新称)は日本にも産する.蘚苔類研究12(5).
竹内史・山口富美夫.2026.トガリバヒョウタンゴケ(Funaria flavicans)広島でも見つかる.蘚苔類研究13(8).