2025-03-18

アツブサゴケモドキ

 写真はアツブサゴケモドキ Palamocladium leskeoides でしょう。垂直に近い岩から垂れ下がっていました。

 上は乾いた状態で、下は同じ枝の湿った状態です。 湿ると枝の曲がりは伸びますが、葉の開き方はほとんど変化しません。

 葉は密生していて、茎はほとんど見えません。


 上の2枚の写真は葉です(茎葉と枝葉でほとんど違いはありません)。 葉は長さ 1.5~2㎜、三角状披針形で、深い縦じわがあります

 上は葉先です。 中肋は葉先近くに達しているのですが、葉先近くではやや不明瞭です。

 翼部には短い細胞が集まり、暗くみえます(上の写真)。 葉縁には全周に細かい歯があります。

 葉身細胞は長楕円形~線形でやや厚壁、長さは 30~50μmです(上の写真)。

(2025.2.12. 西宮名塩~武田尾の廃線敷)

◎ アツブサゴケモドキはこちらにも載せています。 またこちらには胞子体をつけた本種を載せています。

2025-03-16

顕微鏡の光源にCOBライトを使ってみました

 私の使っている顕微鏡はかなり古いもので、光源はハロゲンランプです。 ハロゲンランプは電球の一種ですから、熱は出るし寿命も短いので、LEDに変えたいと思っています。 しかし顕微鏡の光源を変換するためのLED光源は、需要が限られていることもあって、かなり高価です。 下にLEDライトを置くことも考えましたが、うまく置けるようなものは見つけられません。 そのうちに自作でもしようかと思いながらハロゲンランプを使い続けています。 が・・・ 

 ダイソーで上のような COB LED を使ったライトをみつけました。 写真右下がライト、左が入っていた箱で、大きさが分かるように右上に10円硬貨を置きました。 値段は消費税込みで330円、顕微鏡の光源に使えるかもしれないと、購入して確かめることにしました。
 COBとは Chip On Board の頭文字で、基板(ボード)の上に多くの LEDチップを直接並べた構造を意味します。 上の写真のものでは6×5個のLEDチップが並んでいました。
 上のライトは充電式ですのでとても薄く、顕微鏡光源の位置に簡単に置けます。 一般に、COB LED は発光面が広く広範囲を照らすことができる反面、遠距離への照射には不向きとされていますが、顕微鏡の光源からレンズまでの距離なら問題ありません。 明るさも、もう少し明るい方が良いのですが、40×10でも、どうにか使えます。



 上は、いつもと同じように明るさやコントラストなどの補正をしていますが、ハロゲンランプに代えて上記のCOBライトを光源にして撮ったツクシナギゴケモドキ(2025.3.8.採集)の葉とその細胞の写真です。 同じ顕微鏡で撮ったハロゲンランプを使ったこちらの写真と比較しても、見劣りしません。
 ただ、330円で理想的な顕微鏡光源が入手できるなら話がうますぎます。 この文は、私のように光源が LEDでない顕微鏡や、反射鏡だけで光源の無い顕微鏡を使っている人の参考になればと思って書いていますが、顕微鏡光源として使うには、いろいろと欠点もあります。 以下、私が感じた欠点を箇条書きにしました。

  1. 上にも書いたように、私の顕微鏡は LEDが無かった時代の古い顕微鏡ですが、当時の顕微鏡としては高級品で、絞りなどは細かい調整が可能です。 上の写真も対物レンズによって絞りの上下の位置を大きく変えて撮っていますが、この調整が面倒です。 また、絞りの位置を上下に移動できない顕微鏡ではどのように写るのか、分かりません。
  2. LEDが奥にあるのではなく表面に出ていますから、横から見ても眩しいのが困ります。 製品の注意書きにも「人の目に照らしたり、向けたりしない。人の目に障害を与えるおそれがあります。」と書かれています。
  3. 顕微鏡を覗いている時は問題ないのですが、カメラで撮ろうとすると、人の目より明暗の変化を敏感にとらえることができるのか、カメラモニター上ではちらつきます。 写真にするとちらつきの縞は写らないと思いますが、これもシャッター速度やカメラの種類によっては違いがあるかもしれません。
  4. DC5V、0.7A以下で充電する必要があります。 スマホの充電器では電流が強すぎます。 オリンパスのTGシリーズの充電器は使えますが、Type-Cケーブルを準備する必要があります。 これらが無い場合は充電器を別途購入する必要があります。
  5. 内臓バッテリーは小さく、点灯時間は通常の使用で1時間半です。 ブースター機能が内蔵されていて、さらに強く光らせることもできますが、この場合の点灯時間は1時間です。 点灯しながらの充電はできない仕様のようですので、長時間の顕微鏡観察には数個準備しておく必要があります(といっても、3個購入しても 1,000円未満ですけどね)。

 以上、ダイソーで330円で購入できるCOBライトが顕微鏡の光源として使用できるかを検証したレポートでした。 このライトは、裏面に立てるための脚もついていますし、磁石もついていますので、スチール製の何かにくっつけて使うこともできます。 また、三脚用の穴もありますので、ミニ三脚につけて使うこともできますし、カラビナもついています。 工夫次第でいろいろな使い方ができそうです。

2025-03-14

マルグンバイ


 写真はマルグンバイ Acalypta sauteri です。 コケ群落を調べていてみつけました。 体長は約2㎜です。
 グンバイムシ科の昆虫はふつう軍配のような形の体なのですが、マルグンバイ属はグンバイムシ科の中では珍しく、あまり軍配形ではありません。
 私が昔昆虫に熱心だった頃、グンバイムシの写真もたくさん撮っていたのですが、本種も見てみたい種の1つでした。 その頃はマルグンバイ属は3種が知られていたのですが、この文を書くのに調べてみたところ、相馬純(2025)(下記参考資料)ではマルグンバイ属は9種になっていました。
 

 マルグンバイ属でよく見られる種に、本種とミヤモトマルグンバイがあるのですが、本種では翅の縁の膜質部が1列であるのに対し、ミヤモトでは2列になっている部分があります。 いずれも湿ったコケ群落にいるのですが、上記の9種は、いずれもコケ群落にいるのでしょうか。
 グンバイムシの多くは特定の植物に依存しています。 本種も特定のコケに依存しているのか興味あるところですが、今回いたのは多種のコケが混生している所でした。 また、活動が低下している時期ですから、群落に潜り込んで越冬していたのなら、吸汁しているコケから離れていた可能性もあります。

 上は腹面から撮っています。 針状の口器が見えますが、これをコケに刺して吸汁するのでしょう。

(2025.3.8. 滋賀県野洲市)

【参考資料】
相馬 純,2025:日本産グンバイムシ科標本写真集
https://sites.google.com/view/junsouma/japanese-tingidae

2025-03-13

オオホウキゴケ

 写真はオオホウキゴケ Solenostoma infuscum でしょう。 本種はしばしば写真のように赤くなります。 湿った岩上にありました。

 上を覆われている部分は緑色です。 葉は斜めに瓦状についています。

 葉は卵状舌形で円頭です(上の写真)。

 葉身細胞はトリゴンが大きく、油体は球形~楕円形で、微粒の集合です(上の写真)。

(2025.3.8. 滋賀県野洲市)

こちらには蒴をつけた本種を載せています。

2025-03-12

ノコギリコオイゴケ

 ノコギリコオイゴケ Diplophyllum serrulatum が花被をたくさんつけていました(以下の生態写真を含め、全て 2025.3.8.に滋賀県野洲市で撮影)。

 花被の高さは1~1.5㎜でした。
※ この花被の中で育った胞子体が伸びた様子はこちらに載せています。

 上は花被の口の様子です。

 ノコギリコオイゴケも見かけはいろいろ変化します。 上はミドリコケビョウタケに寄生されたためか、元気の無い状態、下は葉を密につけた状態です。

 上は葉の重なりが強く、背片と腹片が見分けにくい状態です。 そのこともあって、以下は上の写真の葉を何枚か調べた結果です。 なお、こちらでは茎についた状態の葉を、もう少し詳しく観察しています。




 上のように並べてみると、背片と腹片の大きさの比にも、腹片の先の様子にも、鎌状に曲がる程度にも、変異が見られます。

 上は腹片中央の細胞です。