2023-06-03

トガリイタチゴケ

 

Leucodon(イタチゴケ属)も似たものが多く(平凡社では日本産11種)、分類が難しいのですが、写真はトガリイタチゴケ Leucodon nipponicus ではないかと思います。 上は2023.5.12.に愛知県設楽町の標高800m付近の伐採木についていたもので、本種の分布は静岡県以西です。

 上は1mm方眼紙の上に置いていますから、二次茎の長さは3cm前後で、4~5cmあるイタチゴケ(以下イタチ)より小形ですし、イタチのように上部で枝を出す様子は見られません。

 上は乾いた状態ですが、二次茎の先は鋭頭です。 イタチの二次茎の先は鈍頭です。

 葉には縦ひだがあり、イタチよりほんの少し小形です(上の写真)。 赤い円は下の写真の赤い円と同じ汚れです。

 本種の翼部の細胞は、葉の基部では方形ですが、葉縁に沿ってせり上がり、次第に丸みを帯びて少し細長くなりますが、葉の中央近くの葉縁まで広がります。 上の写真でも、まだ葉縁に翼細胞が見られます。

 上は葉の基部で、翼細胞は方形です。

 葉先近くの細胞は厚壁です(上の写真)。

 上は葉の上部の葉身細胞で、長さは 30μm前後です。 イタチの葉身細胞は 40~50μmの長さがあります。

 上は二次茎の横断面で、下は上の赤い四角の部分の拡大です。

 あまりはっきりしませんが、中心束はあるように思います。

2023-06-02

ハイヒモゴケ

 写真はハイヒモゴケ Meteorium subpolytrichum です。 倒木上を這う茎から上方に多くの枝が出ています。 黒く見える枝は、本種の古い葉が黒くなるためです。

 枝は不規則な羽状に出ています。 茎や枝はひも状です。

 葉は覆瓦状についています。 スケールの数字の単位はmmです。

 葉は長さ 2.5mm、舌形で、基部は幅広く、翼部は耳状に張り出し、葉先は急に毛状に尖っています。 中肋は葉の中部より上にまで伸びています。

 上は耳状に張り出した部分です。 翼部ははっきりしません。

 上は葉身細胞で、中央に1個のパピラがあります。

(2023.5.12. 愛知県設楽町 標高800m付近)

◎ ハイヒモゴケはこちらにも載せています。

2023-06-01

フクラゴケ

 写真はフクラゴケ Eumyurium sinicum (別名ナワゴケ)です。 倒木上にありました。

 細い一次茎から立ち上がる二次茎は、葉を覆瓦状に密につけています。

 上は舟形に深く凹んだ二次茎の葉を、カバーグラスで押さえないようにして、水中に浮いた状態で深度合成しています。 葉には明瞭な縦ひだがあります。 葉先は急に細くなって尖っているのですが、その葉先は、上の写真では途中で折れてなくなっていますので、下に改めて載せておきます。

 葉先の細くなっている部分の長さは、葉によって異なりますが、長い場合は葉全体の2/5ほどの長さにもなります。

 上は葉がどのように凹んでいるかを知るために作成した葉の横断面です。

 葉の基部は褐色になっています(上の写真)。 翼部には少数の方形の細胞があるのですが、上の写真では、はっきりしません。

 葉身細胞は厚壁で、くびれがあります(上の写真)。

(2023.5.12. 愛知県設楽町 標高800m付近)

◎ フクラゴケはこちらにも載せています。

2023-05-31

蒴のあるクビレケビラゴケ

 

 樹幹に蒴のあるクビレケビラゴケ Radula constricta が育っていました。

 背片は広卵形で円頭、葉縁には無性芽がついています。 腹片は上の写真ではよく分からないので、深度合成したのが下の写真です。

 腹片はほぼ方形で、上部の角はやや尖っています。 茎側の縁はやや耳状になりますが、茎を超えることはありません。

 上は背片の葉身細胞です。

 上は花被の基部近くから出ている枝を取り去って撮っています。 裂けた蒴には弾糸がたくさん残っていて、糸くずのように見えています。

 上は弾糸です。

 上は茎の横断面です。 表皮細胞と内部の細胞とはほとんど違いがありません。

(2023.5.13. 愛知県設楽町 標高1200m付近)

◎ クビレケビラゴケはこちらこちらにも載せています。

2023-05-30

ケシゲリゴケ

 写真はケシゲリゴケ Nipponolejeunea pilifera です。 樹幹の小さなこぶについていました。

 よく見ると、あちこちの葉先に長毛があります。

 長毛は背片の葉先にあるだけではなく、腹片の歯も長毛状になっている場合がしばしば見られます 腹葉は茎径の4~6倍幅です。

 上は葉(背片と腹片)です。 Nipponolejeunea(ケシゲリゴケ属)は、平凡社ではクサリゴケ科に分類されていますが、現在ではヒメウルシゴケ科にされています。たしかに全体の姿はクサリゴケ科に似ているのですが、ヒメウルシゴケ科らしい形態として、蒴の形質と共に、葉の茎への付着線が短いことが挙げられます。 上の写真に茎への付着線の両端を赤い線で示しておきました。

 腹片は切頭で2歯があります(上の写真)。 歯はいつでも長毛状であるわけではありません。

 上は背片の葉身細胞です。 平凡社では、本種の葉身細胞は薄壁でトリゴンが大きいとなっていますが、上の写真ではそのようにはなっていません。 だからといって、ケシゲリゴケ以外の種は考えられません。 似た種に同属のタカネシゲリゴケがあるのですが、これは分布が亜高山帯以上ですし、次に書く腹葉の形も違います。 生育環境などによって、本種の細胞にはこれくらいの変異があると理解すべきだと思います。

 腹葉は広卵形で、1/5~1/4まで狭く2裂しています(上の写真)。

(2023.5.13. 愛知県設楽町 標高1200m付近)

こちらには蒴をつけた本種を載せています。