2025-07-20

エゾオナガバチとオオホシオナガバチの産卵

 大阪市立自然史博物館で特別展「昆虫MANIAC」展が開催中です(2025年7月12日~9月23日)。 下はその中で展示されているエゾオナガバチの拡大模型です。 

 上の模型の赤い矢印で示した針金状のものは何でしょうか。
 このハチに関しては、ブログの Part1の2012.6.3.の記事にしていましたので、この機会に少し加筆訂正してこちらに引っ越しさせることにしました。 写真は2012.6.2.に大阪の枚岡公園で撮影したものです。

 1枚目の模型の写真と似た上の写真、立ち枯れたエノキの幹に産卵に来ていたエゾオナガバチ Megarhyssa jezoensis てす。 オナガバチの仲間(ヒメバチ科オナガバチ亜科)は長い産卵管を持ち、これを木の幹に差し込み、幹の中で材を食べて育っているキバチの幼虫に卵を産みつける寄生蜂です。
 この木には同じオナガバチの仲間のオオホシオナガバチ M. praecellens も来ていました。 両者は体の大きさも生活の様子もほとんど変わりませんので、以下同様に扱い、その産卵の様子を紹介したいと思います。
 なお、この枯れたエノキではヒラアシキバチが育っていますので、これらオナガバチのターゲットはヒラアシキバチの幼虫の可能性が高いように思います。

 上はオオホシオナガバチで、産卵管を幹に差し込む前の状態です。 触角で幹をトントンと叩くような行動をとっています。 この行動で幹に潜むキバチの幼虫の位置を探っているのだと言われています。 硬い木の幹を触角でたたいてキバチの幼虫の位置が分かるとは驚きですが、ちゃんとキバチの幼虫に寄生できているのですから、位置が分かっているのでしょうね。

オオホシオナガバチ

 産卵管を差し込む位置が決まったら、腹部の端を高く持ち上げ、産卵管の先端を目的の位置にセットします(上の写真)。
 このまま腹部の端をゆっくりと押し下げ、産卵管を幹に挿入していくのですが・・・

エゾオナガバチ

 幹に挿入される前の産卵管は、その左右を産卵管鞘とよばれるもので保護されています。 産卵管鞘は幹に入っていきませんから、産卵管が幹に挿入されるにつれて、産卵管鞘は産卵管から離れ、左右に分かれてループ状に取り残されることになります。 最初の模型の赤い矢印は、この産卵管鞘です。
 産卵管を挿入する速度は、硬い材に挿入していくのですから、本当にゆっくりですが、こんな細い産卵管が挿入できるというのは驚きです。
 上の写真で、産卵管はaからd・eを経て幹の中に挿入されています。 もう大部分の産卵管は幹の中にあります。 そして、この産卵管を保護していた産卵管鞘は、aからb・cを経てdで産卵管といっしょになり、eで終っています。 つまり、木の幹の中にある産卵管の長さは、
   (産卵管鞘の長さ=産卵管の長さ)-(差し込まれていない産卵管の長さ)
  =(a-b-c-d-e の長さ)-(a-d-e の長さ)
 ということになります。

こちら(Part1)には産卵行動の見られる時期やオオホシオナガバチのオスなどを載せています。 Part1は閲覧に時間がかかる状態が続いていますので、そのうちこれも引っ越しさせるつもりではいますが、いつになるか分かりませんので、とりあえずお知らせしておきます。

 

2025-07-19

ベッコウクモバチ

 6月下旬、写真のハチが多数飛び交っていました。 なかなかとまってくれませんし、とまっても、カメラを近づけると、すぐに飛び立ってしまいます。 やっと撮ったのが上の写真です。 雰囲気的には羽化したオスがメスを探しているのではないかと思います。

 オスだろうと思い検索してみると、ベッコウクモバチ Cyphononyx fulvognathus がよく似ているようです。 クモ類を狩って幼虫のエサにするハチのようです。 メスは頭部も胸部ももう少し明るく、触角の先も黒くならないようです。

 ナミモンクモバチのメスやキオビクモバチのメスなどよく似た体色の蜂もいますが、これらの蜂との区別点は、ベッコウクモバチの前伸腹節には強い横皺があることです。 しかし、この部分は閉じた翅に隠されていて、よく分かりません。 上の写真の黄色の矢印の横皺がそれだと思うのですが、どうでしょうか。

 ところで、展翅され、きれいに整形されたハチの図鑑を見ると、クモバチ科やアナバチ科など、特定のグループのハチの触角は全てカールしています。 これがこれらの蜂を他の蜂から見分けるポイントだと思っていたのですが、フィールドで見ると、そんな蜂はいません。 どうやら柔軟に曲げることのできる触角が、死後に収縮の強い側に曲げられてしまうようです。

(2013.6.27. 枚岡公園)
※ 上はPart1の 2013.7.11.からの引っ越し記事です。


 

2025-07-18

アミバゴケ

 上はタマゴバムチゴケと今回取り上げるアミバゴケ Anastrophyllum michauxii との混生です。 本種は前者より細く、前者の葉先が少し下を向いているのに対し、本種の葉は背側に偏向しています。

 上は仮根の存在から分かるように、腹面が見える角度から撮っています。 腹葉はありません。 葉は茎に横ぎみの斜めにつき、広く開出し、背側に偏向しています。

 葉の形やその付き方を見るとミゾゴケ科のようにも思えますが、ミゾゴケ科であれば、上のような大きな花被はつけません。

 葉は1/4まで2裂し、裂片は三角形で鋭頭です(上の写真)。

 葉身細胞は厚壁で、大きなトリゴンがあります(上の写真)。 平凡社には表面はベルカ状とありますが、顕微鏡を使い目では確認できてもカメラにはうまく写らない程度のわずかなベルカでした。

 花被は円筒形で、雌苞葉は全縁です(上の写真)。

(2024.9.7. 北八ヶ岳)

 本種は低温になると赤色が強くなります。 こちらには同じ北八ヶ岳で10月上旬に撮った無性芽をつけた状態を載せています。

 

2025-07-17

訂正のおしらせ

 2021年8月3日に載せていたシモフリゴケの仲間のコケを、「コエノスナゴケ?」として大幅に書き換えました。

エビガライチゴ

 エビガライチゴ Rubus phoenicolasius の実が熟しはじめていました。 熟したものを食べてみると、野生ですので硬い種子はありますが、味は嫌味が無く、おいしかったです。

 未熟な果実はガクに包まれて保護されていますが、ガクの表面には腺毛がビッシリ生えています。 エビガライチゴの名前は、このガクの様子がエビの殻のようにみえるところからと言われています。

 エビガライチゴはつる状に成長する落葉低木で、葉は3~5の小葉からなる複葉です。 上の写真の右下に白っぽい小葉の裏が見えていますが、エビガライチゴにはウラジロイチゴという別名があります。 茎や葉柄などにも赤紫色の腺毛が密生していて、それに混じって鋭い刺が生えています。 下は茎と葉柄の一部を拡大したものです。