2026-03-20

シキミ

 写真はシキミ Illicium anisatum です。 シキミはマツブサ科の常緑性小高木~高木で、宮城・石川県以西に分布します。 本種には独特の香りがあり、葉も透かすと油点が見え、傷つけると抹香に似た匂いを出します。 独特の香りがあることや、有毒植物であることが邪気を払う力があると考えられていたようで、仏事に広く用いられています。 なお、神事にはふつうサカキが用いられていますが、平安時代以前には神事にも本種が盛んに用いられていたと考えられています(Wikipedia)。
 上は3月中旬の撮影ですが、花は3月~5月に咲きます。 上の写真の下方にツボミが写っていますが、ガクらしいものは見えません。

 上は花を後ろ側から撮っています。 花被片は螺旋状についています。 ガク片と花弁の明瞭な分化は見られませんが、花の基部に近いものはやや幅広くて短い楕円形で、内側のものは細長い線状長楕円形です。

 本種の花は雌性先熟です。 上には2輪の花が写っていますが、左上の花は雌期で、細い柱頭が八方に広がり受粉できる状態になっているのですが、写真が少し小さいので、下に同時期の花の中央部を載せました。 そして写真中央に写っている花は雄期で、柱頭は集まって束になってしまい、オシベは花粉を出しています。

 上は雌期の花の中央部です。 らせん状についているオシベは若くて伸びきっておらず、メシベの柱頭は八方に広がって花粉を待っています。

 上は花後です。花被片もオシベも受粉できなかったメシベも落ちてしまっています。 メシベは離生心皮からなり、7~10個が1輪についています。

 上は9月下旬の撮影です。 上の写真では7つの袋果が側面で合着しています。 写真のいちばん奥は果実になれず、きれいな輪状になっていませんが、ふつう8個ほどの袋果が側面で合着します。
 この果実が特に毒性が強いのですが、同じ属のトウシキミ Illicium verum(日本には自生していない)は毒成分を含まず、果実は八角、八角茴香(はっかくういきょう)、大茴香(だいういきょう)、スターアニスとよばれ、香辛料や生薬として利用されるため、誤って利用される心配があります。 そのためもあって、シキミの果実は、植物としては唯一毒物及び劇物取締法により劇物に指定されています。

 上は10月中旬の撮影です。 果実は裂開し、種子が見えています。 この種子もヒトには有毒だと思うのですが、ヤマガラやヒメネズミはこの種子を食用としていますし、安芸の宮島のサルは、この種子を食べているようです(Wikipedia)。

 果皮は木質化し、感想によって幅が狭まり、種子をはじき飛ばします。 上は種子が全て押し出された後の姿です。

2026-02-20

ニワツノゴケ

 ニワツノゴケ Phaeoceros carolinianus がありました(上の写真:2026年2月11日に兵庫県宝塚市平井にて撮影)。 ちょうど胞子体の伸びはじめたところだったので、この状況での細部を観察しました。

 ツノゴケ類の造精器・造卵器は葉状体内部で作られます。 本種は雌雄同種で、この時期、胞子の出る孔(この下には造精器が存在)や、まだ胞子体が顔を見せていない包膜が見られました(上の写真)。

 上は造精器の所で切った葉状体の断面です。 造精器は造精器腔と呼ばれる腔所にあり、柄があります。 なお、本種の葉状体内部には、ナガサキツノゴケなどのような細胞間隙はありません。 葉状体内部の細胞は薄壁で、各細胞に1つずつ葉緑体があります。
 下は別の所の断面で、もう少し拡大しています。

 上の写真では精子の出口がよく分かります。 この造精器腔にも2個の造精器が入っていたのですが、1個は断面作成時に失われてしまいました。

 上は盛り上がった苞膜の断面です。 中に小さな胞子体がありました。 ツノゴケ類の胞子体には蒴柄がありませんが、上の写真では蒴と足が確認できます。 基部分裂組織で細胞分裂を繰り返し、蒴が次第に伸びていきます。
 下は胞子体がもう少し成長し、苞膜の外に少し出てきています。

 胎座と思われる部分がはっきりしてきたようです。 胎座で配偶体から胞子体へ栄養が送られます。
 下は上の赤い四角で囲った所の拡大です。

 切片が厚く、奥の組織まで写っているため、境界がはっきりしませんが(私のハンドセクションではこれが限度です)、胞子体内部に分化が起こり始めています。 胞子は胞原組織の細胞が減数分裂して作られます。 なお、弾糸も胞原組織から作られますが、減数分裂は起こりません。

 ツノゴケ類の蒴の表皮には気孔が見られます。 上は 15㎜ほどの長さになった蒴のほぼ中央の気孔です。
 ツノゴケ類や蘚類の気孔は、被子植物の気孔のように開閉調節は行いません。 胞子体が若いうちは閉じたままで、胞子が成熟すると開いて蒴の内部の水分を逃がして乾燥させることで、胞子を飛散させるための蒴の開裂に関係すると言われています。
 上の写真の気孔は少し開きかけているようです。

 以下、葉状体についても少し見ておきます。

 ツノゴケ類はシアノバクテリアと共生します。 上の写真の中央と左にある円い塊が共生腔に住むシアノバクテリアの塊です。

 上は仮根です。 苔類同様、ツノゴケ類の仮根は1細胞です。

こちらにはニワツノゴケの開裂した蒴や胞子などを載せています。 またこちらにはよく伸びた胞子体をつけた本種や胞子体をつけていない姿などを載せています。

2026-02-16

ホウキゴケ

 Fさんが屋久島から持ち帰られたコケを少し分けていただきました。 上はそのうちの1種で、ホウキゴケ Solenostoma comatum です。 採集されたのは2月7日のようですが、ちょうど胞子体が伸び出す時期だったようで、たくさん胞子体がついていました。
 葉を含めた茎の幅は2~4㎜、葉は長い舌形で、円頭(~亜切頭)です。

 上は腹面から撮っています。 赤褐色の仮根が茎から出ています。 仮根は多いのですが、束になったり、茎に沿って流下したりしていません。

 上は葉身細胞で、トリゴンは小さく、薄壁です。 油体は2~4個の楕円体~うじ虫形のものと小さなものが混じっています。 なお、小さな油体が見られないことも、しばしばあるようです。

 葉身細胞の表面には著しいベルカ(微小突起)が見られます。 上の写真のように葉緑体や油体が無くなった細胞を見ると、よく分かります。

 ペリギニウムはよく発達しています。 本来は断面を作って確認すべきですが、最内側の雌苞葉が造卵器の位置より上についていることは、外見からも想像できます。
 花被はねじれず、3稜です。 上の写真では分かりにくいのですが、左右(写真では上下)と手前に稜が張り出しています。

 上は花被の先端です。

 上は開裂した蒴です。 私は、ソロイゴケ科の胞子体は蒴柄の太さに比較して蒴の裂片が比較的小さいという印象を持っているのですが、どうでしょうか。

 上は蒴壁を内側から撮っています。

 上は胞子と弾糸です。

 上は茎の断面です。

2026-02-15

ミズスギモドキ

 上の写真、いろいろなコケが混じっていますが、いちばんたくさん写っているのはミズスギモドキ Aerobryopsis subdivergens でしょう。

 1枚目の写真では分かりにくいのですが、黒くなった古い部分は長く伸びています。 上の写真も、もっと長かったのですが湿っていたこともあって、切れてしまいました。 平凡社では、茎はときに30cm以上に達するとあります。

 葉は扁平についています。 葉は薄く透明感があります。


 葉を茎から外すと、上の2枚の写真のように、しばしば片方の基部が折れ曲がっています。 葉が茎にどのようについているのか見たかったのですが、葉が密に重なっているうえに破れやすく、確認できませんでした。
 中肋は葉長の3/4前後の長さです。

 上は葉先です。 葉先の細胞にはパピラはありませんが・・・

 葉の中央部の葉身細胞は長い菱形~六角形で、中央に1個のパピラがあります。 細胞壁は厚く、よく見ると所々にくびれがあります。
 葉縁にはほぼ全周に細かい歯があります。

 翼部の細胞は矩形~方形です(上の写真)。

(2026.2.11. 兵庫県宝塚市切畑)

こちらには崖から垂れ下がった本種を載せています。

2026-02-12

訂正のおしらせ

 2021年11月5日にイボタチヒダゴケとして載せていた記事を、タチバヒダゴケに変更しました。