2019-12-12

ヒメスズゴケ


 上は古木の樹幹についているコケの様子です。 ラセンゴケフルノコゴケなどに混じって、細長いひも状に垂れ下がっているのは、蒴が無くよく分かりませんが、ヒメスズゴケ Forsstroemia cryphaeoides のようです。


 上は乾いた状態です。 一次茎は樹幹を這っているはずで、写真は二次茎と枝ということになるでしょう。 葉は茎や枝にくっついていますが縮れてはいません。


 湿らせて軟らかくなった状態で、分枝の様子を見るために枝を広げてみました(上の写真)。 細くなった枝の枝分かれはほとんどありません。


 上は太い枝についていた枝葉です。 中肋は微妙で、葉先に届いているようにも見えますが、中肋を形成しているのは細長い細胞と見るなら、中肋は葉長の 3/4ほどの長さです。 葉先付近には低い鋸歯が見られます。 翼部は分化していません。


 上は葉の中央部から少し葉先寄りの葉身細胞です。

(2019.12.11. 大阪府高槻市大字川久保)

2019-12-11

コゴケ属の一種とツチノウエノハリゴケ

 笠井氏に案内していただいた田にあった下の写真のコケ、ツチノウエノハリゴケだろうと載せたのですが・・・


 残念ながら胞子体はみつかりませんでした。


 葉の長さは1~1.5mmほどで、乾くと巻き込んできます。


 上は大小2枚の葉ではなく、小さいのは葉の欠片で、葉を剥がす時についてきてしまいました。 この大きさになると、ピンセットでの操作も思うようにいきません。 葉は線状披針形です。


 上は葉先付近を背面から撮っています。 中肋は線形の細胞からなり、葉の背面に張り出して先端は葉先から飛び出しています。


 上は葉の中央部~上部の葉身細胞です。 細胞は方形~広楕円形で、各細胞には数個の背の低い小さなパピラがあります。

(以上の写真は、2019.11.21.に滋賀県高島市で採集したものです。)


 この記事を見ていただいた笠井氏から、上に載せたものは、蒴も無く、これだけでは種名までは無理だが、コゴケ属の一種(Weissia sp. ) だろうとの連絡をいただきました。(日本産のコゴケ属は9種ほどが知られています。)
 そして、同じ場所で採集されたツチノウエノハリゴケの写真を送っていただいたうえ、加工して公開用に使っても良いとの許可までいただきました。




 上の3枚が、笠井氏に送っていただいたツチノウエノハリゴケ Uleobryum naganoi の6枚の写真のうちの3枚(1枚の葉、葉先付近、葉の中央部から少し上)を、このブログにいつも載せている形に加工したものです。
 私の撮ったコゴケ属の一種と比較すると、ルーペレベルではとてもよく似ているのですが、顕微鏡で葉の細胞を比較すると、大きくはっきりしたパピラがありますし、葉先の様子も少し異なるようです。
 なお、ツチノウエノハリゴケの蒴は茎頂につき,球形で、蒴柄はほとんど無いとのことです。

(最終校正:2019.12.12.)


2019-12-10

アゼゴケの造精器


 蒴をつけたアゼゴケ Physcomitrium sphaericum がいちめんに広がっている田がありました。 水切りで土が動かされたせいでしょうか、いろんな生長段階の蒴が見られます。 そんななかで、上の写真の黄色い円で囲んだ所は、株の中心に褐色の小さな粒々が見えます。 このような株があちこちに点在していました。 このうちの1つを拡大すると・・・



 よく見ると、褐色のものの上に透明に近い球状のものがあるように見えます(上の写真)。 そこでこの部分の縦断面を作ってみました(下の写真)。


 形からすると、褐色の棍棒状のものは胞子を出し終えた造精器でしょう。 そして、上から見て透明に近い球形のものには長い柄がついています。 これは・・・
 多くの場合、蘚類の造精器や造卵器は側糸(paraphysis)と呼ばれる組織と混生します。 この側糸はふつう1列の細胞からなる糸状ですが、アゼゴケの場合はこの終末が球状に膨れているのではないでしょうか。
 蘚類の造精器や造卵器は苞葉に守られていることが多いのですが、上の写真では苞葉が見あたらず、代わりに側糸の先端が膨れて保護の役割をしているように見えます。 また、この仲間は雌雄同株のはずですから、造卵器との関係も観察してみたいところです。
 ところで、この仲間の属名 Physcomitrium は、ギリシャ語の physce(空気袋)と mitrium(帽子)に由来しているようです。 この「空気袋の帽子」とは、上記の側糸の端が膨れて生殖器の上を覆っている姿ではないでしょうか。 このあたりのことをいろいろ調べてみたのですが、みつけられませんでした。 どなたか情報をお持ちでしたら、教えていただきたいと思います。

(2019.11.21. 滋賀県高島市)

◎ 若い蒴を持った本種の様子はこちらに、また本種の蒴や胞子の様子はこちらに載せています。

2019-12-09

ウニバヒシャクゴケ


 写真はウニバヒシャクゴケ Scapania ciliata です。 岩の崖から水平方向に飛び出していました。 茎頂に花被をつけています。



 腹片が背片よりも大きいのはヒシャクゴケ科の特徴ですが、その腹片は2mm前後の長さです。


 葉縁には毛状の歯が密生しています。 葉身部分は細かな点がいっぱいで、細胞の輪郭が分からなくなっていますが・・・


 上のように拡大すれば、細胞の輪郭が見えてきます。 トリゴンは小さく、細胞の表面には著しいいぼ状ベルカがあります。 下は上と同じ所ですが・・・


 細胞の見えている状態からピントをほんの少しずらすと、ベルカばかりが目立ち、細胞の輪郭が見えなくなります。 上の写真では下の方にほんの少し細胞の輪郭が見えているだけです。


 上は葉縁の毛状の歯の拡大です。


 花被にも毛状の歯があります(上の写真)。 この花被を破いてみると・・・


 胞子体がここまで育っていました。 本種は雌雄同株で、雄苞葉は葉と同形同大で、花被がつく茎の下部につく、というので探してみたのですが、分かりませんでした。 胞子体がここまで生長している時期では遅すぎるのかもしれません。

(2019.11.17. 大阪府和泉市 側川渓)

◎ ウニバヒシャクゴケはこちらにも載せています。

2019-12-08

ササオカゴケ


 写真はササオカゴケ Sasaokaea aomoriensis です。 笠井氏に案内していただいた水の残る休耕田で、多くの雑草に隠されるようにして群落を形成していました。


 大型のコケで、羽状に分枝し、葉は平らについています。


 上の写真ではできるだけ汚れていない茎の先の方を選んだからなのか、茎葉は少し小形になっているようです。 平凡社の図鑑では茎葉の長さは3~4mmとなっています。


 上は茎葉で、鎌状に曲がっています。 上の写真では葉先が消失していますが、中肋は葉長の4/5ほどの長さです。 なお、数本の細長いものは、混入した毛葉です。


 葉身細胞は線形で、長さは 40~70μmです(上の写真)。


 上は毛葉です。


 茎の横断面で、表皮細胞は小さく、中心束はわずかに分化しています。

(2019.11.21. 滋賀県高島市)

◎ ササオカゴケはこちらにも載せています。