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2025-11-29

ヒメハネゴケ

 写真はヒメハネゴケ Plagiochila porelloides だと思います。 SJさんが今年の7月20日に剣山の標高1800m付近の湿岩上で採集された標本を、11月26日のオカモスの顕微鏡観察会で分けていただきました。 北海道~四国の、おもに亜高山帯以上に分布します。
 採集から少し時間が経っていますので緑色が薄くなっていますが、本来の色も淡緑色~黄緑色です。 なお、本種は平凡社では P. satoi となっています。

 上は背面から撮っています。 葉は重なり、背縁は外曲し、その基部は少し下延しています。 茎頂には花被がついています。 茎は褐色~黄褐色です。

 上は腹面から撮っています。 ハネゴケ型分枝をしていますが、分枝は多くありません。 葉の腹縁基部はほとんど下延していません。
 今回は腹葉は確認できませんでしたが、井上(1958)によると、痕跡的で糸状の腹葉がある場合もあるようです。

 葉は長さと幅がほぼ等しく、縁には小さな低い歯があります(上の写真)。 なお、この歯が長いものがあり、井上(1958)では P. satoi forma japonomontana とされています。
 ビッタはありません。

 上は葉の中部の細胞です。 小さいが顕著なトリゴンがあります。 時間が経っていますので、油体は消えています。

【参考文献】
井上 浩:日本及び台湾のハネゴケ科(Ⅰ).服部植物研究所報告第19号.1958.

2025-11-11

チチブハネゴケ

 写真はチチブハネゴケ Plagiochila flexuosa でしょう。 三重県松阪市で採集されたものをいただきました。 関東以西の暖帯~温帯の湿度の高い渓谷の岩上に育つコケです。
 上の写真の植物体の長さは約8cm(スケールは1目盛が1㎜)、他の茎を見ても分枝はほとんどありません。

 上は腹面から撮っています。 葉は矩形で、長さは幅の2倍以上あり、背縁は直線状で、腹縁はやや膨らみ、葉先に5個以上の歯をつけている葉が多く見られます。

 稀に上のようなハネゴケ型分枝(茎の側面からの有襟分枝)が見られます。


 上の2枚は葉です。 背縁は茎に長く下延しているのですが、切れてしまい、その部分まで取り出すことはできませんでした。

 上は葉先です。

 小さな腹葉があります(上の写真)。

 上は葉身細胞です。 細胞壁に波状の中間肥厚は見られません。

2025-08-28

ヒゲハネゴケ


  写真はヒゲハネゴケ Plagiochila gracilis だと思います。 Sさんが剣山の標高1500m付近の岩上で採集されたものを、8月26日に行われたオカモス関西の顕微鏡観察会で分けていただいたもので、生態写真はありません。 分布は平凡社では全国のブナ帯となっています。
 植物体は褐色みを帯び、まばらに分枝しています。


 葉を含めた茎の幅は約2cm、葉は長楕円状で長さが幅の1.5倍以下、縁には大きく不規則な三角形状の歯が数個あります。

 背縁基部は長く下延しています(上の写真の黄色の矢印)。

 葉縁の歯は基部が2~3細胞幅で、2~3細胞の高さがあります(上の写真)。

 上は葉身細胞です。 細胞壁は褐色でトリゴンは大きく、油体は微粒の集合です。

2024-12-31

蒴をつけたコハネゴケ

 


 コハネゴケ Plagiochila sciophila が蒴をつけていました(上の写真)。

 多くの花被は蒴柄に巻き付いて形が不明ですが、上の花被は形がよくわかります。 花被は扇形で、口部は広く、長い披針形の鋸歯があります。 これが苞葉ではなく花被であることを示すため、下に顕微鏡写真も載せておきます。

 上は花被近くの葉を取り去って撮影しています。

 上は弾糸です。

 上は胞子です。

(2024.12.11. 京都市 貴船)

こちらではコハネゴケの配偶体について、こちらでは主に造精器について書いています。

2024-09-15

タカネハネゴケ

 写真はタカネハネゴケ Plagiochila semidecurrens のようです。 朽木の上で育っていました。 上の写真のように葉が垂れ下がるのが本種の特徴の1つだと聞きました。

 葉は背片が強く外曲しています。

 葉縁に歯がありますが、背縁の歯は小さく少数です。

 葉の基部にはビッタ状の細長い細胞があります(上の写真)。


 上は葉身細胞です。 大きなトリゴンがあります。

 上は茎の横断面です。 ハネゴケ属の茎は皮層細胞が厚壁で、髄細胞とは明瞭に異なります。

(2024.9.7. 北八ヶ岳)

◎ タカネハネゴケはこちらにも載せていますが、枝分かれの様子などが異なります。 生育環境によるものでしょうか。

2022-10-03

タカネハネゴケ(アラスカハネゴケ)

 

 北八ヶ岳で見た写真のコケ(2022.9.5.撮影)、以下の観察を基に平凡社の図鑑の検索表をたどれば、タカネハネゴケに落ちました。 しかし、タカネハネゴケの変種に、アラスカハネゴケ Plagiochila semidecurrens var. alaskana があり、母種との違いがよく分かりませんので、上のようなタイトルにしました。

 茎は枝分かれが少なく、長く伸びています。

 上は腹面から撮っています。 腹縁基部はほとんど外曲していません。 葉は長さ約 2.5mm、幅 1.5~2mmで、長さは幅の 1.5倍以下です。

 上は背面から見ています。 背縁が外曲している葉が多くあります。 葉縁にはやや規則的に細い歯がついています。 この歯の数は基本種より少ないようです。

 葉の基部にはビッタ状の細長い細胞があります(上の写真)。 葉縁の歯は背縁にはあまりありません。

 上は葉縁の歯です。

 上は葉身細胞です。 明瞭なトリゴンがあります。

◎ タカネハネゴケはこちらにも載せています。


2021-06-02

変異の大きいマルバハネゴケ

 マルバハネゴケ Plagiochila ovalifolia は変異の大きいコケです。 これまで3回載せていますが(150704 180426 190221)、これらはいずれも岩から垂れ下がり、分枝もほどんどありませんでした。
 今回はこれまでとは少し異なった印象だった2つの場合を紹介します。 

【 2021.5.23.に奈良県宇陀市で見たマルバハネゴケ 】 

 林下の小さな渓流沿いの岩上に育っていました。

 雄苞葉が赤く染まっている雄花序もあり、なかには枝先が伸び続け普通葉をつけているものもありました(上の写真)。

 多くはありませんが、あちこちで分枝しています。 ハネゴケ科の分類では分枝のしかたも同定のポイントの1つになりますので、調べてみました。

 上の写真の枝は、茎の髄由来で、茎の表皮を突き破って出てくるため、破られた表皮が枝の襟のようになって見えます(ハネゴケ型分枝)。

 上の分枝では襟が見られません。 平凡社の図鑑のハネゴケ属の検索表ではヤスデゴケ型の分枝の有無がEの分岐になります。 ヤスデゴケ型分枝は腹片になる細胞が枝に変化したものですが、それでもなさそうです。

 葉の大きさも様々ですが、葉の形も卵形から円形に近いものまであります。

 上の葉は、長さと幅がほぼ同じです。

 葉身細胞は、トリゴンが小さく、表面は平滑です。

【2021.4.15.に兵庫県養父市の天滝渓谷で見たマルバハネゴケ?】

 遊歩道の脇の比較的日当たりの良い岩上に育っていました。


 この姿を見ればマルバハネゴケしか思いつかないのですが、かなりの大きさです。

 葉身細胞を見ても、最初のマルバハネゴケとは違って、細胞は丸く、トリゴンが大きく、ベルカがあります。