2017-09-30

コウヤツリアブ


 写真はコウヤツリアブ Anthrax aygula です。 執拗に手にとまろうとしていました。 (写真は私の手ではありません。) 成虫が餌としているのは花の蜜や花粉などですので、刺されて血を吸われるなどの心配はなさそうです。 たぶん汗の塩類がほしかったのでしょう。
 幼虫はさまざまなハチの幼虫に寄生して育ちます。


(2017.9.26. 堺自然ふれあいの森)

2017-09-29

ホウオウゴケ


 写真はホウオウゴケ科のホウオウゴケ  Fissidens nobilis です。 渓流近くの湿った岩上に群落を作っていました。 水の滴る場所で、葉が濡れています。



 胞子体は古いものしか残っていませんでした。



 葉の上部の葉縁には大きな不規則な歯牙があります。 中肋は葉先近くに届いています。 下は上翼と腹翼が接する部分です。


 腹翼は2枚の“翼”からなっていて、上の写真では、その2枚の“翼”の間に気泡が入り込んでいます。 ちなみに、属名の Fissidens はラテン語の fissilis(割れる) と dens(歯) に由来していて、歯のような葉が割れている(腹葉の部分)ところからのようです。
 また、ホウオウゴケでは、葉の全周にわたって葉縁が暗く縁取られています。 こちらでは、葉の断面を作って、葉縁が黒く縁取られる理由や、上記の腹葉が2枚の“翼”からなっている様子などを載せています。

(2017.9.23. 和泉市 槇尾山

◎ ホウオウゴケはこちらにも載せています。

2017-09-28

オオスミヤスデゴケ


 マメヅタに混じって育つ苔、腹面を見ると・・・



 腹片は袋状、腹葉は顕著で、ヤスデゴケ属です。 平凡社の図鑑の検索表をたどっていくとカゴシマヤスデゴケに落ちそうなのですが、苔類に詳しいM氏によると、オオスミヤスデゴケ Frullania osumiensis だろうということです。 両者は腹葉の切れ込みが浅いなど、互いによく似てはいるのですが、上の写真の腹葉に張り出している部分があります。 カゴシマの腹葉はほとんどの場合全縁で、腹片の形態も微妙に異なるようです。


 上は葉身細胞です。 ヤスデゴケ属の油体は楕円体で微粒の集合です。

(2017.9.13. 京都市 西芳寺川)

2017-09-27

ナガコガネグモ

2016.9.17. 堺自然ふれあいの森

 上はショウリョウバッタを捕らえたナガコガネグモ Argiope bruennichi のメスです。 和名のように細長い体をしています。
 ところが・・・

2017.9.23. 大阪府和泉市 槇尾山

 上の写真のクモも、1枚目の写真のクモと比べて、体の模様も、ジグザグのリボン状の隠れ帯も同じで、ナガコガネグモに間違いありませんが、そんなに細長い体ではありません。
 おそらく成熟して卵をたくさん持って腹部の幅が広くなっているのでしょう。

2017-09-25

マルボシヒラタヤドリバエ



 上はマルボシヒラタヤドリバエ Gymnosoma rotundata(別名 マルボシヒラタハナバエ)のオスです。 写真は休憩中ですが、イタドリの花の蜜を吸いに来ていました。
 和名の「マルボシ」は腹部背面の丸い模様からでしょう。 また、「ヤドリバエ」の名前のとおりの寄生バエで、幼虫はシラホシカメムシ類や、チャバネアオカメムシなどの果樹に害を及ぼすカメムシ類に寄生します。


 上はメスです。 オスの胸部背面は前半が黄金色ですが、メスの胸部背面は肩部を除いて黒一色です。


 上もメスです。 ピントがあまいのですが、体の掃除中で、ちょうど口吻を伸ばしているところが撮れたので、載せておきます。

(2017.9.23. 和泉市 槇尾山)

2017-09-24

ジャバウルシゴケ


 上は、表面が濡れていて、フラッシュの光が反射してしまい、いい写真ではありませんが、ジャバウルシゴケ Jubula hutchinsiae ssp. javanica のようです。


 岩にぴったりくっついていたので、岩から剥がす時にかなり傷めてしまいましたが、上は腹面から腹片にピントを合わせて撮っています。 背片は先端が尖っています。 腹葉は深く2裂し、この腹葉と紛らわしいのですが、小さな細い三角形の腹葉があります。


 上は顕微鏡で撮った4枚の写真を深度合成したものです。 腹葉の裂片の先も腹片の先も歯のように尖っていますし、腹葉も腹片も側縁は所々張り出していて、変化の余地がありそうな姿をしています。
 前に載せたジャバウルシゴケの腹片は鐘型をしていて(こちら)、上のような尖った三角形ではありませんでした。 今回観察したジャバウルシゴケには鐘型の腹片は無いのか探してみると・・・


 ほんのわずかですが、鐘型の腹片もありました(上の写真)。


 上は葉身細胞です。 トリゴンは小さく、油体は紡錘形~楕円形をしていて、微粒の集まりだと思われますが、粒子が細かすぎるのか、均一に見えます。

(2017.9.13. 京都市 西芳寺川)

2017-09-23

ヒメクジャクゴケの群落をフォーカスブラケットモードで


 深度合成は群落を撮る場合にも使えます。 上はヒメクジャクゴケ Hypopterygium japonicum の群落ですが、TG-5のフォーカスブラケットモード(注1)で撮った20枚の写真をCombineZPで深度合成して作成しました。 作成した写真は4000×3000で、そのまま載せてもよかったのですが、あまりにも大きすぎるかと思い、ここでは1600×1200にしています。 PCの大きな画面をお持ちの方は拡大してご覧ください。 隅々までピントが合っているのがお分かりいただけるでしょう。
 1600×1200で見ていただくには、写真上でクリックし、写真だけが表示された状態の写真上で右クリックし、「画像だけを表示」を選択し、表示された画像上でさらにクリックすると、本来の大きさの写真をスクロールバーを使って見ていただけるようになります。
 元に戻る場合はブラウザの「戻る」ボタンを使用してください。


 この写真を見て、どのような感想をお持ちでしょうか。 下の写真と比較してみてください。


 上は深度合成に使った20枚の写真のうちの1枚ですが、自然と左方のヒメクジャクゴケに注目することになると思います。
 良い写真とは余計なものを削ぎ落とし、いかに“主役”を引き立たせるかだと言われています。 “主役”をはっきりさせることで、その“主役”をしっかり見ることになります。 “主役”がはっきりしない写真は散漫な印象を与えてしまいます。
 フォーカスブラケットには、このように、ピントを少しずつずらした写真を撮っておいて、そのうちのいちばん気に入った写真を選ぶという活用方法もありますし、たくさんの写真のうちの数枚だけを選んで深度合成するという方法も可能です。

 上の2枚の写真、ヒメクジャクゴケの群落というものをしっかり見ようとするのか、ヒメクジャクゴケそのものをしっかり見ようとするのかで、どちらが良い写真かが決まってくるのではないでしょうか。 どんな場合でも隅々までしっかりピントの合った写真がいい写真だとは限らないと思います。
 撮る側からすると、要は何を撮りたいのか、写真で何を伝えたいのかを明確にすることでしょう。 何を撮りたいのかという「意志」が先にあり、その次に、それを撮るにはどうすればいいのかという「方法」があるのだと思います。

(ヒメクジャクゴケは 2017.9.23.に大阪府和泉市の槇尾山で撮りました)

◎ ヒメクジャクゴケの細部のつくりはこちらに載せています。

(注1)【 TG-5 のフォーカスブラケットに関して】
 フォーカスブラケットとはピントを少しずつずらせて連続して撮影する機能です。 TG-5 では顕微鏡モードのサブモードで FokusBKT を選択し、MENUボタンを押して撮影メニュー2の「Fokus BKT」を On にすると、1度のシャッターで何枚の写真を撮るのか(撮影枚数)と、ピントをどれくらいずらして撮っていくのか(フォーカスステップ)を、それぞれ3段階から選択できます。

2017-09-22

コミミゴケ


 前回のシゲリゴケに続いてのマメヅタの葉についているコケ、今回はコミミゴケ Lejeunea compacta です。 枝分かれが少なく、細長い紐状になって這っています。 重なって連なっている葉は三角形に近い形をしています。


 上は腹面から見ています。 腹片は背片の1/2ほどの長さがあります。 腹葉は存在するのですが、茎と重なり、ピントも合っていないので、上の写真ではその存在がほとんど分かりません。


 背片、腹片、腹葉の様子が分かる写真を撮ろうとしたのですが、ゴミが多い試料で、上のような写真しか撮れませんでした。 この写真ではよく分からないので、上の写真を解説した図(ゴミや気泡は書いていません)を下に載せておきます。


 仮根は束になって腹葉の付け根付近から出ています。 背片よりも大きな腹葉の先端は1/2~1/3まで2裂しています。 撮る角度にもよるのでしょうが、上の図では腹葉の丸みが感じられませんので、下に腹葉を真上から撮った写真(これもゴミが多いですが・・・)を載せておきます。


 腹葉の側縁は全縁です。 腹葉の基部にはピントが合っていませんが(ピントが合ってもゴミで見えませんが)、基部の両端は茎に耳状についているようです。


 上は葉身細胞です。 油体は円形~楕円形です。

(2017.9.13. 西芳寺川)

◎ コミミゴケはこちらにも載せています。


2017-09-21

ヤノトガリハナバチ




 写真はハキリバチ科のヤノトガリハナバチ Coelioxys yanonis のメスだろうと思います。 キツネノマゴの花に来ていました。
 労働寄生するハチで、寄主としてはスミスハキリバチが記録されています。

食事を終えてひと休み

(2017.9.8. 堺自然ふれあいの森)

2017-09-20

シゲリゴケ


 上はマメヅタの葉についているシゲリゴケ Cheilolejeunea imbricata です。 これでも葉上苔類としては大型の方になるでしょう。


 上は1枚目の写真のシゲリゴケをマメヅタから剥がし、腹面(マメヅタにくっついていた側)から撮ったもので、背片、腹片、腹葉が確認できます。 背片は卵形です。 腹片は背片のほぼ1/2の長さで、矩形です。 ゴミの少ない新しく伸びた所を撮っていますので、下に書く腹片の歯牙は明瞭にはなっていません。



 上の2枚の写真は腹片です。 腹片には歯牙がみられます。


 上は歯牙の拡大です。


 上は腹葉です。 腹葉は幅が茎径の2~2.5倍で、側縁は全縁、1/3~1/2まで狭く2裂しています。
 仮根は腹葉の付け根付近から出ています。



 シゲリコケの茎の上部の(若い)葉の腹片の基部には単細胞のスチルスが見られます(上の写真の赤い円で囲ったところ)。 スチルス(stylus)は「柱状細胞」とも呼ばれ、上の写真のようにある種の苔類の腹片の基部に見られる糸状のものです。
 シゲリゴケのスチルスは、通常は腹葉に隠される位置にあり、腹葉を取り去るなどの工夫をしないと観察できないのですが、茎が傾いて少し斜め横から観察できるプレパラートがたまたまできて、腹葉に邪魔されずに観察する事ができました。


 上は葉身細胞です。 大型でブドウ房状の油体が各細胞に1~2個見られます。

(2017.9.13. 京都市 西芳寺川)

◎ シゲリゴケの腹面を反射光で撮った写真(深度合成しています)はこちらに載せています。

2017-09-19

ムモントックリバチを TG-5 のプロキャプチャーモードで

 オリンパスのカメラ TG-5 にプロキャプチャーという機能がつきました。 これは、シャッターボタン半押しで連続撮影を開始し、カメラ内に記憶し続け、シャッターボタンを全押しした時に記憶していた撮影画像をSDカードに記録するというものです。 カメラ内に記憶している画像はどんどん新しいものに置き換わっていきますから、シャッターボタン全押しする直前の過去が撮れるという機能です。 この機能が無いカメラでは、虫が飛び立つ瞬間や果実がはじける瞬間などは、その瞬間を撮るつもりでシャッターを切っても遅れてしまい、大がかりなセンサーを使用するなど特別な工夫をしないと、撮ることはほとんど不可能です。
 どれくらい過去が撮れるかというと、同じオリンパスの OM-D E-M1 MarkⅡ では 14枚の過去の画像を記録できるのですが、TG-5 の小さなボディでは限度があり、シャッター全押しの 0.5秒前からの画像を、撮影条件にもよりますが、4枚ほどの写真として記録してくれます。(シャッター全押し後の 0.5秒間の写真も4枚ほど撮ってくれます。)
 たったの 0.5秒前からしか撮れませんが、「今だ!」と思ってからシャッターボタンを押すまでのタイムラグは 0.2~0.4秒ですから、これでも「今だ!」という瞬間が撮れるわけです。 フラッシュは機能しないので明るい条件でしか使えませんが、持ち運びに便利な小さな TG-5 にこんな機能がついたことは、私にとってはうれしいことです。

 下の2枚は、オミナエシの花に来ていたムモントックリバチ Eumenes rubronotatus rubronotatus を TG-5 のプロキャプチャーモードで撮ったものです。 どちらも顔が向こう向きで良い写真とは言えませんが、とりあえずは TG-5 のプロキャプチャーモードの説明まで。



(2017.9.8. 堺自然ふれあいの森)

2017-09-18

ヒメクサリゴケ



 スギの枯れた枝葉についているヒメクサリゴケ Cololejeunea longifolia です。 2枚目の写真は1枚目の赤い四角の部分の拡大です。


 上は別のスギの枯葉についていたヒメクサリゴケです。 なお、ヒメクサリゴケはスギの枯葉につくとは限りません。 昨年見たものは湿岩にびっしりとついていました。


 背片は細長く、長さは幅の3倍ほどあります。


 腹片中央にある歯牙は1~2細胞です。 なお、腹葉は見当たりませんでした。


 葉身細胞は薄壁で、よく見ると中間肥厚しています。

(2017.9.13. 京都市 西芳寺川)

こちらには造卵器や造精器をつけた本種を載せています。 またこちらには本種の仲間に見られる無性芽を載せています。