2019-03-29
造精器をつけたハリガネゴケ
陽の光を遮るものの無い流紋岩の上に、赤褐色になったハリガネゴケ Rosulabryum capillare の群落がありました(上の写真)。 よく見ると、黄色の矢印で示した所などあちこちで、葉に守られるように粒状のものが見られます。 持ち帰り、観察し易くするために周囲の葉を少し落として拡大すると・・・
上から見て粒状に見えたのは、バナナのように細長い造精器でした。 周囲には雄苞葉や側糸もたくさん見えます。
◎ 上は生育環境の関係で葉の赤色が強く出ていますが、造精器の苞葉が緑色の場合をこちらに載せています。
上は光学顕微鏡で見た造精器と側糸です。 造精器の上端から何か出ているようで・・・
倍率を400倍に上げて観察すると、精子がクルクル回っている精細胞がありました(上の写真:トリミングしています)。
順序が逆になりましたが、ハリガネゴケであることの確認のため、葉を1枚載せておきます(上の写真)。
(2019.3.13. 兵庫県三田市・有馬富士公園)
◎ ハリガネゴケの葉や胞子体などの形態的な特徴はこちらに載せています。
2019-03-25
コウライイチイゴケ
写真はコウライイチイゴケ Taxiphyllum alternans です。 雨が降るとすぐ冠水するような環境にありました。 周囲の枯草なども泥を被っています。 環境省絶滅危惧Ⅰ類になっていますが、あまり蘚苔類の調査が行われないような環境に育つためのようで、そんなに珍しいコケでも無さそうです(例えばこちら)。
茎は不規則に分枝しています。 比較的大型のコケで、枝は葉を含めて幅2~5mm、枝葉の長さは2~4mmです。
上は枝葉です。 中央が凹んでいるため、カバーグラスをかけると上のような皺ができてしまいます。 枝葉の多くは、上のように左右非相称で、中肋は二叉しています。
翼部の細胞は矩形で、数は多くありません(上の写真)。
葉身細胞は線形で、長さ 90~130μmです。
植物体が大形で茎も芽も厚く、光が通りませんが、偽毛葉は三角形です(上の写真)。
(2019.3.13. 兵庫県三田市)
2019-03-20
ヤリノホゴケ
この私のブログにまだ載っていないからと、ヤリノホゴケ Calliergonella cuspidata をいただきました。 湿地などの土上に生えるヤナギゴケ科のコケということです。
葉はあまり展開せず、特に枝先では葉は覆瓦状に枝を覆い、まっすぐに尖ります。 和名はこの様子が槍のように見えることからのようです。
上は茎葉です。 2叉する中肋は短く、欠くこともよくあります。 上の写真でも葉先が2つに裂けていますが、葉先が裂けやすいようで、カバーグラスの重みでほとんどの葉の葉先が裂けてしまいました。
上は翼部付近です。 葉身細胞は線形で、翼細胞は方形です。 上の写真の左下の大きく薄壁で透明な細胞は、葉を剥がす時についてきた茎の表皮細胞でしょう。
上は葉の中央部付近の葉身細胞です。 細胞の長さは65~85μmほどです。
2019-03-19
キヌゴケ
木の幹についていた黄緑色のコケ、キヌゴケ Pylaisiella brotheri のようでした。 たしかに絹のような光沢があります。
2~3mmの枝をたくさん出し、枝葉は卵状披針形です。 蒴は卵形で直立、蒴柄は上の写真では6mmほど、平凡社の図鑑では5~8mmとなっています。
上は茎葉で、長さは1mmほどでした。 最広部は基部近くにあり、先はやや急に細く尖り、少し鎌形に曲がっています。 多くの茎葉を見ると、短く2叉した中肋があるのですが、上の写真では、はっきりしません。
翼部では方形の細胞が葉縁に沿って縦に30前後並んでいます。 下は翼部の拡大です。
翼部の方形の細胞は中肋方向に向かって次第に線形の細胞へと移行していきます。
上は葉の中央付近の葉身細胞で、長さは40~60μmほどです。
枝原基には1~2細胞列の偽毛葉が見られました(上の写真)。
上は蒴歯の見えている蒴(左)と蓋のついた蒴(右)で、ちょうど蓋の外れる時期だったようです。 蓋には短い嘴があります。
上は蒴歯を蒴の内側から、下は蒴の外側から撮ったものです。 外蒴歯は16本で、内蒴歯は外蒴歯の歯の裏側に付着すると言われているのですが、よく分かりません。 いずれにせよ、内蒴歯の歯突起は先端を除き外蒴歯に付着しています。
(2019.3.13. 兵庫県三田市・有馬富士公園)
◎ こちらには帽のある蒴をつけた時期の本種を載せています。
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