2026-07-09

クモノスホコリ


 写真はアミホコリ科のクモノスホコリ Cribraria cancellata でしょう。 たくさんの子実体が朽木上に見られました。
 上の写真では、まだたくさんの胞子が残っていて少し分かりにくいのですが、胞子嚢(子嚢)の表面にはスポーク状の肋があり、胞子が抜け落ちると、この肋がよく目立ちます。 種小名の cancelatus はラテン語で「格子状の」を意味し、この子嚢の形態に由来します。

(2026.6.30. 京都御苑)

 

2026-07-08

カラフトヒシャクゴケ?


 写真は、7月3日~5日に京都の梅小路公園で開催された「苔類だけのコケ展」で、会場の顕微鏡を使って撮影したコケですが、下の葉の写真などを見ると、カラフトヒシャクゴケ Scapania irrigua のようにもみえます。

 葉の縁は鋸歯状です。 腹片は卵形で、幅は長さの3/4以上あります。 腹片の腹縁基部は、ほとんど下延していません。 キールは明瞭で、やや弓形に凹んでいます。

 上は腹片の細胞です。 尼川・服部(1953)の記載と比較すると、カラフトヒシャクゴケにしては厚壁で、細胞の大きさは測定できていないのですが、少し小さいのかもしれません。

2026-07-07

フクロクラマゴケモドキ属の1種

 上は道盛氏がニュージーランドで観察されたコケで、毎月第4火曜日にZoomを使って行われている岡山コケの会関西支部の「コケサロン」で紹介されました。 腹片が袋状になった腹片に刺状のものがあるなど、これまで見たことが無いコケだったので、AIに質問するなど、いろいろ調べてみました。
 Gemini(Google の AI)と何度もやりとりをした結果、最終的には「LEPIDOLAENACEAE(フクロクラマゴケモドキ科)の Gackstroemia weindorferi などの Gackstroemia属の植物である可能性が極めて高い」ということになりました。 
 Copilot(Microsoft の AI) に写真を見せると、「 苔類(コケ植物)ではなく、蘚類でもなく、「苔ではない」可能性が非常に高いです。」と答えてくれました。 しかし、ニュージーランド産の LEPIDOLAENACEAE と思われることを伝えると、Lepidolaena menziesii の可能性が高いとのことでした。 ただし LEPIDOLAENACEAE(科名)と Lepidolaena(属名)を正しく区別できているのかは疑問です。
 Gemini も Copilot も、文字の記載を間違った解釈で写真の特徴と結びつけている可能性が高いように思います。
 AI が出す回答は、そのまま信じられません。 AIは学習した結果から推論することは得意ですが、学習の元になるデータが少ない場合は、うまく推論できません。 また、今回のやりとりでは、古い論文と新しい論文を軽重をつけず同列にみているように思いました。 学術用語を日本語に訳す時にも、訳の根拠になるデータをどうしているのかも問題です。

 AI との会話?の後もいろいろ調べた結果、私は写真のコケはLEPIDOLAENACEAE(フクロクラマゴケモドキ科)の Lepidolaena(フクロクラマゴケモドキ属)の1種だと思います。 ニュージーランドのコケ図鑑があれば、種名まで分かるのでしょうが・・・。 以下、このことに関して、もう少し調べたことなどを書いておきます。
 最初写真を見た時、私はヤスデゴケ科かヒメウルシゴケ科だろうと思いました。 しかしクラマゴケモドキ科も、腹葉も腹片も発達しています。 LEPIDOLAENACEAE(フクロクラマゴケモドキ科 )は、主に南半球の温帯地域(ニュージーランド、オーストラリア、南米南部など)を中心に多様化しているグループで、日本語の科名は、クラマゴケモドキ科に似て腹片(や腹葉)が袋状になっていることに由来するようです。 ちなみに lepid- はギリシャ語の「鱗」で、-laena/-laenus は形態的特徴を示す名詞語尾として使われますので、Lepidolaena は「鱗片状の構造をもつもの」という意味になります。
 平凡社の図鑑では LEPIDOLAENACEAE は「サワラゴケ科」となっていて、この科にはサワラゴケ Neotrichocolea bissetiiイヌムクムクゴケ Trichocoleopsis sacculata が分類されています。 サワラゴケは4~5回羽状に分枝しますが、第3、4番目の枝の葉の最腹側の裂片が袋状になっています。 イヌムクムクゴケは葉の最腹側の裂片が内曲して袋状になっています。 たしかにサワラゴケもイヌムクムクゴケも葉の一部が袋状になっているのですが、背片と腹片に分かれていません。
 そしてその後の分子系統解析の結果、サワラゴケ属(Neotrichocolea)やイヌムクムクゴケ属(Trichocoleopsis)はテガタゴケ目(PTILIDIALES)のサワラゴケ科(NEOTRICHOCOLEACEAE)(片桐・古木、2018)として LEPIDOLAENACEAE から分離され、残った LEPIDOLAENACEAE (日本に分布する種は無い)に新しく「フクロクラマゴケモドキ科」の名称が充てられたたようです。

 

2026-06-29

ユウレイグモ

 下は Part1の2013.2.5.からこちらに引っ越しさせた記事です。 


  ユウレイグモ科にも何種類かいるのですが、写真はユウレイグモ科のなかでは日本の野外で最も普通なユウレイグモ  Pholcidae crypticolens だと思います。 枯れたヤツデの葉にいました。

 ユウレイグモ科の眼の配列はかわっています。 多くのクモの単眼は8個あるのですが、ユウレイグモ科では3個の単眼が集まって左右に配置し、その間に1対の個眼が離れて位置します(上の写真)。 ユウレイグモの仲間には、この中央の1対の単眼が無くなっていて、6眼になってしまっているものもいます。

 ユウレイグモの名前は、脚がたいへん細く長く、体がフワフワと浮いているように見えるからでしょう。
 暖かい時期には、網の中央に下向きにぶら下がっていて、危険が迫った場合などには、網をとても激しく揺さぶる行動をとることが知られています。 寒い時期は、この行動が見られず残念ですが、動きが鈍くて写真に撮りやすいことは喜ぶべきなのでしょうね。

 ユウレイグモの頭胸部は、ほぼ長さと幅が同じです。 頭胸部の模様には個体差があるように思います。 腹部背面には矢筈状の模様があります。

(2013.2.5. 堺市 泉北ニュータウン 茶山公園)

2026-06-27

アサイトゴケ

 水を被る岩上で育つ写真のコケ、アサイトゴケ Pseudoleskeopsis zippelii だと思います。

 枝は斜上し、長さ1㎝程度、蒴柄の長さは約 1.5cmでした。 蒴は傾き、非相称です。 胞子体をつけて、配偶体は弱りぎみのようです。

 雌苞葉は葉の2倍よどの長さです(上の写真)。


 枝葉は広卵形で凹み、中肋は太く、葉先近くに達しています(上の2枚の写真)。 翼部の細胞は、あまり分化していません。

 上は葉の中央部の、下は葉の基部近くの葉身細胞です。

 平凡社には「背面上端に目立たない突起がある」と書かれていますが、今回は確認できませんでした。

 上は蒴の縦断面です。

 蒴歯は2列で、内外蒴歯はほぼ同長、間毛があります(上の写真)。

 蒴の頸部には気孔があります(上の写真)。

 上は胞子です。

(2026.6.17. 貝塚市 秋山川遊歩道)

◎ アサイトゴケはこちらこちらにも載せています。

2026-06-23

花被のあるイボヒメクサリゴケ

 岩上のイボヒメクサリゴケ Cololejeunea macounii が、たくさんの花被をつけていました(2026.6.17. 貝塚市 秋山川遊歩道)。 上の写真で、いくつかの花被を赤い円で囲みましたが、円で囲っていない花被もたくさんあります。


 花被は倒卵形で、葉と同様に密に先の丸いパピラに覆われています。 写真では横からしか撮れず、うまく表現できていませんが、花被は5稜であることを確認しています。

 上は花被をつけていない枝先です。 背片は重なり、卵形で円頭です。 腹片の基部は凸面状です。

 上は葉です。 腹片は卵形で、背片の約1/2長です。

 腹片の歯は、第1歯は2細胞で金槌形、第2歯は数細胞からなる狭三角形で、先は尖っています(上の写真)。

 背片の各細胞には先の丸い大きなパピラが1つあります(上の写真)。

 上は葉身細胞で、細胞壁にピントを合わせるとパピラは分からなくなります。

◎ イボヒメクサリゴケはこちらこちらにも載せています。

 

2026-06-22

胞子体のあるシロクサリゴケ

 シロクサリゴケ Cheilolejeunea xanthocarpa の胞子体を確認できました(上の写真:2026.6.17. 貝塚市 秋山川遊歩道の樹幹)。

 花被は5稜です。 なお、写真下のスケールの最小目盛は 0.1mmです。

 上は胞子体です。 古くなっているので、大きさが分かるだけですが・・・。

 上は葉(側葉)です。 腹面から撮った全体の様子はこちらに載せていますので、今回は省きます。

 上は腹葉です。

 上は背片の葉身細胞です。 油体は大きく、ブドウ房状です。

2026-06-19

「第3回 苔類(たいるい)だけのコケ展」のおしらせ


 京都市で行われる大規模なコケ展、秋の京都府立植物園でのコケ展は蘚類中心に紹介し、今回は苔類(たいるい)に絞った全国的にも珍しいコケ展で、昨年も好評を得ました。
 苔類全般について広く紹介しますが、その中でも重点的に取り上げるテーマを決め、昨年はクラマゴケ科でしたが、今年はクサリゴケ科とヒシャクゴケ科を取り上げます。
 「蘚類と苔類はどう違うの?」という人から、「科」の概念をつかみたい人、苔類の多様性やおもしろさを深く味わいたい人、顕微鏡(自由に使っていただけます)で観察したい人など、多くの人に楽しんでいただきたいと思います。
 会場をお借りする費用が必要になりますので、コケ展としては少し高額になりますが、その分、満足していただける内容にするつもりです。

期間:7月3日(金)~5日(日)
  9:00~17:00(最終日は 16:00 まで)
会場:京都市 梅小路公園内「緑の館」1Fイベント室
    京都市下京区観喜寺町
交通:JR「梅小路京都西」駅下車すぐ / JR「京都」駅から西へ徒歩25分
入場料:(高校生以上)600円

3日間とも、下記のミニツアーを実施します。
 10:00~11:30 庭園(朱雀の庭)でコケ観察
 13:30~15:00 展示場内で展示解説
各ミニツアーの参加費:300円
参加申し込みは、当日会場で受け付けます。
庭園でのコケ観察会には、庭園入場券(小学生以上200円)が必要です。

詳しくは京都市都市緑化協会のHPをご覧ください。
 


2026-06-18

植村修二さんの講演会

 私も役員の一人である堺植物同好会で、下のような講演会を実施します。 小学生の頃から植物の観察と研究に熱心に取り組まれてきた植村さんの、迫力ある講演が楽しみです。 


 

2026-06-04

観察会と講演会のおしらせ

 日本蘚苔類学会大阪大会が8月7~9日に開催されますが、その関連行事として、下のような観察会と講演会が行われます。
 コケ植物を含め、生きものの世界は複雑に絡み合っていますが、今回の観察会と講演会は、ゲッチョ先生をはじめ、いろいろな分野の専門家が集まりますので、中身の濃い会になるのは間違いないでしょう。
 自然の豊かな所で、交通の便は少し悪いのですが、車で来られる方には広い駐車場があります。
 特にコケに関心のある人は、1日目はコケと他の生物との関係を考え、2日目は室内でコケについて学び、3日目はフィールドでのコケ観察という2泊3日(8月7日~9日)のプランがお勧めです。 夜も楽しいですよ!

 



2026-05-30

コアミメギボウシゴケ

 写真はコアミメギボウシゴケ Grimmia brachydictyon でしょう。 岩上に広がっていました。 上は乾いた状態、下は上と同じ標本を同じ倍率で撮った湿った状態です。

 葉の長さは1~2㎜で、あちこちの葉先に無性芽の塊がついています。

 上は葉先に無性芽をつけた葉です。 葉縁は中部で多層、下部では1細胞層です。


 上の2枚は葉先です。 葉は弱く折り畳まれていますが、葉の上部が溝状になることはありません。

 上は葉身細胞です。 細胞壁は厚く、横壁と縦壁はほぼ同じ厚さです。

 上は葉の横断面で、中肋背面に翼があります。

 葉身細胞は平らで、中部の葉縁は2細胞層です(上の写真)。

(2026.5.16. 京都市)

◎ コアミメギボウシゴケはこちらにも載せています。

2026-05-28

ナガヒツジゴケ

 公園の遊歩道脇に、トヤマシノブゴケ、コツボゴケ、コバノチョウチンゴケ、ジンガサゴケ、ヒメタチゴケなどに混じって、ナガヒツジゴケ Brachythecium buchananii がありました。

 茎は這い、不規則な羽状に多くの枝を出しています(上の写真)。 ただし・・・

 上のような長く伸びた枝だけを見ると、ひも状で、枝分かれが少ないように思ってしまいます。

 上は茎葉で、深い縦じわがあります。 中肋は葉の中部または葉長の2/3くらいで終わっています。

 上は葉身細胞です。

(2026.5.16. 京都市)

◎ ナガヒツジゴケはこちらこちらにも載せています。