写真はヒメフウロ Geranium robertianum です。 葉と茎は長い毛に覆われています。 対生する葉は深く3裂-5裂し、茎と葉の端が赤みを帯びます。
本種は山地帯の日当たりのよい石灰岩地質に生える一年草または越年草で、伊吹山、鈴鹿山脈北部の霊仙山などの養老山地北部や、四国剣山の一部地域のみに分布します。 上の2枚は、2010年7月31日に伊吹山山頂で撮った写真ですが、昨年(2025年)8月18日に行った時には、シカの影響だと思いますが、ずいぶん少なくなっていました。
世界的に見れば、本種はアジア、ヨーロッパ、北アメリカなどの北半球の温帯域に広く分布しています。 日本では、この外国産由来のものが山野草として販売され(注1)、それが逃げ出してあちこちで野生化しています。
上は大阪府と和歌山県の境にある紀見峠付近で 2026.5.17.に撮ったものですが、道路沿いにたくさん見られました。 本来が石灰岩地質を好む植物ですから、セメント好きなのかもしれません。
本種は花の色やオシベの数など、種内変異の幅が広いようです。 逸脱種と伊吹山などで見られる自生種とは生育環境も異なるのですが、逸脱種や海外から侵入した植物は、日本の種類と同種であっても、違う形質を示すことがよくあるようです。
下野・姉川(2023)によれば、日本には少なくとも2外来系統が侵入しており,1系統は主に北海道・東北を中心とした冷涼な地域に,もう1系統は東北以南の温暖な地域に分布しているようです。 また、外来系統と在来系統間には稔性のある雑種種子ができるようです。
遺伝的な違いを守るため、逸脱したヒメフウロをブルーリスト(地域本来の生態系や自然環境に影響を及ぼすおそれのある外来種をまとめたリスト)に指定している自治体もあります。
本種には「シオヤキソウ」という別名があります。 10数名の参加による上記の紀見峠での観察会では、本種の茂る間を歩き回るだけで、焼いた塩のようなにおいが漂っていました。
(注1) オランダフウロ属など、本種と別属の園芸種が「姫フウロ」という名で販売されていることもあります。
【文献】
下野嘉子・姉川盤音:絶滅危惧種ヒメフウロにおける在来および外来系統間の生育特性の比較および交雑可能性の評価.然保護助成基金助成成果報告書 32 (2023).

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