以下は Part1の 2012.9.22.と 2012.11.22.との記事を合わせた引っ越し記事です。
ハチの進化を見た場合、原始的なハチの幼虫の餌は、葉を食べるハバチの仲間や、材を食べるキバチの仲間など、植物組織です。
キバチ科は針葉樹を利用するキバチ亜科と広葉樹を利用するヒラアシキバチ亜科に分けられます。 ヒラアシキバチ Tremex longicollis(ヒラアシキバチ亜科)は、卵を枯れたエノキの辺材部に産み付け、幼虫は辺材を食べて育ち、材の中で羽化した成虫は幹に穴を開けて出てきます。
上がヒラアシキバチです。 アシナガバチやスズメバチなどの狩蜂の顔の獰猛さは感じられず、穏やかな顔に思えました。 そんなヒラアシキバチの産卵に出会いました。
硬い木に産卵管を差し込むのですから、たいへんなようです。 体を左右にねじりながら、徐々に産卵管を幹に差し込んでいきます(上の写真:2012.9.22.枚岡公園にて撮影)。
上の2枚の上の写真で、腹部腹面の中央付近から出て木に差し込まれている黒いものが産卵管で、腹部の端から後ろに突き出ているのは、産卵管をしまっておく産卵管鞘です。
産卵の様子を見ていると、産卵管はゆっくりと錐をもむように差し込まれていきます。 産卵管を差し込んだ所からは白っぽい木屑がこぼれ出ています。
当日は何頭かのヒラアシキバチの産卵を見ましたが、そのうちの1頭は羽化したばかりのようで、体には木屑がついていて、まだ飛び立つこともできないようでした。 しばらく見ていると、そのヒラアシキバチが産卵管を幹に差し込みはじめましたが、周囲にはオス(産卵管鞘は無いはずです)らしき姿は見当たりませんでした。 ヒラアシキバチは産雌性単為生殖を行っているとされています。 ところが・・・
2012年11月10日、ヒラアシキバチが産卵している木で、よく似ているが、頭部が黒く産卵管の無いハチがいました。 気温が低いためか、飛び立つ気配はありません。 オスではないかと思い、持ち帰って撮影したのが上の2枚の写真です。
後日、大阪市立自然史博物館のM学芸員にこの蜂をお見せしたところ、ヒラアシキバチと同じ属に数種いるが、この時期なのでヒラアシキバチだろうということでした。 ヒラアシキバチの発生する木全体をネットで包むなど、徹底した調査をすると、ごくたまにオスが見つかることがあるが、ごく少数なので、生殖活動には関係していないのではないか、ということでした。 ハチはM学芸員にお渡ししました。
ところで、ヒラアシキバチが産卵している枯れたエノキには、産卵管が差し込まれたままちぎれた腹部があちこちにたくさん残されています(下の写真)。
古いものでは産卵管だけが残っている場合もありますが、新しいもののほとんどが、産卵管の位置から後ろが残されています。 たぶん差し込んだ産卵管は簡単には抜けないので、産卵途中で捕食者に襲われたのでしょう。
このヒラアシキバチが産卵していた枯れたエノキにはミダレアミタケ Cerrena unicolor(下の写真)が生えています。
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ミダレアミタケ 2013.6.27.枚岡公園 |
ヒラアシキバチの産卵管の付け根には1対の菌嚢(きんのう)があり、その中にはミダレアミタケの胞子が入っています。 菌嚢の近くにはミューカスと呼ばれる粘液の入った袋もあり、ヒラアシキバチの産卵時には、この粘液と菌嚢に貯えた胞子とが混ざり、木に接種されるしくみになっています。 胞子から発芽したミダレアミタケの菌糸は材を分解し、ヒラアシキバチの幼虫が利用しやすくしてくれます。 蜂と菌の共生です。
このミダレアミタケは、枯木内にいるヒラアシキバチの幼虫に寄生するオナガコバチを紹介したブログ(こちら)の4枚目の写真にも写っています。
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