写真はアイバゴケ Plicanthus birmensis またはトゲアイバゴケ P. hirtellus だと思います。 平凡社などでは別種として扱われていますが、分布も重なることが多く、中間的な植物体も多いことなどから、同一種だろうとされています(下記参考文献)。
属名も平凡社の Chandonanthus から変更されています。 ちなみに、Plica は折り目を、 anthus は花を意味しますが、たぶん花被が多稜であることからだと思います。
写真の植物体は、毎月第4火曜日に開かれているオカモス関西の顕微鏡観察会にK氏が持参されたコケで、7月20日に大台ヶ原のふもとで採集されたものです。 本州(宮城県以南)、四国、九州に広く分布していますが、産地は限られています。
植物体は緑褐色です。 葉は基部まで不等に3裂していて大中小の3枚の葉があるのとほとんど変わらず、それが重なってついているため、実体双眼顕微鏡で見ても、どのようになっているのか、よく分かりません。 仮根はあまりありません。
上は葉(やや左下)と腹葉(右上)です。 葉は上記のように不等に3裂していて、もっとも大きいのが背側の裂片です。 葉も腹葉も葉縁に細長い歯があります。
葉身細胞は矩形で、壁が波状に肥厚し、トリゴンが大きく、油体は球形で微粒の集合です(上の写真)。 顕微鏡ではどうにか細胞表面のベルカが確認できるのですが、それとわかる写真は、私の顕微鏡とカメラでは無理でした。
【参考文献】
天本匡宥・西畑和輝・井上侑哉・山口富美夫:日本産アイバゴケ属2種の分類学的研究.蘚苔類研究 12(3), 2020.
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