岩上にある写真の細長いコケは、イトコミミゴケ Lejeunea parva でしょう。 10月8日に神戸市の道場町にある千苅浄水場で実施されたオカモス関西のコケ観察会で見られました。
本種の分類されているクサリゴケ科は、腹片がポケット状になっていて、多くは小形のコケです。 クサリゴケ科は、系統的にはかなり進化したグループで、多くの種に分化し、現在の地球環境下で栄えています。 具体的に数値で示すと、片桐・古木(2018)の日本産タイ類・ツノゴケ類チェックリストではクサリゴケ科は 23属133種となっていて、種数の多さでは苔類の中でクサリゴケ科が突出しています。 これらのことからも、コケ植物は下等な植物で大きくなれないのではなく、少なくともあるグループでは小さくなるように進化してきていると言えるのではないでしょうか。
小さなコケなので、以下は顕微鏡での観察です。
枝分かれは少なく、葉を含めた茎の幅は 0.3~0.4㎜です。 上は腹面から撮っています。腹葉はピントがずれていて、ぼんやりとしか写っていません。 背片は丸みを帯びた三角形、腹片は背片の1/2ほどの長さです。
上は腹面を斜め上から見下ろす角度で撮っています。 本種の背片は湿ると背方に偏向します。 腹葉の基部から仮根が出ています。
下は上の緑色の線の部分で切った断面です。
茎の髄細胞の数は、切り方がまずくはっきりしませんが、9~11個でしょう。 Lejeunea(クサリゴケ属)の茎の髄細胞の数は植物体の大きさを示す指標となり、平凡社の検索表では、3~5個、約7個、10~12個の3段階に分かれています。 Lejeuneaの多くの種は約7個のグループに入り、本種も約7個なのですが・・・。 採集したうちのいちばん大きくみえる茎を切ったからでしょうか。
上は腹葉です。 腹葉は茎径の約2倍長で、長さと幅がほぼ同じ、2/5までV字形に2裂し、裂片は狭三角形です。
腹片を拡大しました(上の写真)。 歯牙細胞は長楕円形です。
上は表皮細胞で、ベルカ(verruca:細胞の表面にある微小突起)があります。
◎ イトコミミゴケはこちらやこちらにも載せています。
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