写真はオカムラケビラゴケ Radula okamurana でしょう。 茎の先がひも状になって立ち上がり、その先に小さな葉をつけています。 11月15日の貝塚市でのオカモス関西の観察会で、枝分かれした木の股で育っていました。
上はひも状になっていない茎を背面から、下は同じ茎を腹面から撮っています。スケールの最小目盛は 0.1㎜です。
本種はヒメケビラゴケとよく似ていますが、本種の方が少し大形で、よく分枝し、葉は密生し、葉の頂端が内曲します。 また、腹片はより長大で横によく伸び、基部は茎を覆って膨らみ、頂端が三角形になって突出する傾向があります。 また、茎の先端部が起き上がって伸び、ひも状になる性質は、山田(1994)によると、ヒメケビラゴケには見られない性質です。
分布は、平凡社によれば、ヒメケビラゴケが宮城県以南であるのに対し、本種は三重県以西となっています。
上は這う茎が立ち上がる所をカバーグラスで押さえて平らにして撮った写真です。 立ち上がった茎では、鱗片状になった小さな葉が茎に圧着しています。
この鱗片状の葉ですが、上の写真を見ると、鱗片状の葉は色の濃い部分と透明に近い部分からなっているようにみえます。 私は以前、これは腹片と小さくなった背片だと思っていました。 しかし最初の写真やこちらの反射光で見た写真を見ると、この鱗片状の葉は葉先が尖っています。 背片はこのように尖らないでしょう。
山田(1994)や平凡社は、この鱗片状の葉は背片が落ちて残った腹片であるとしています。 上の写真の2つの部分の違いは、腹片の基部と頂端部の違いのように思います。
立ち上がった茎では、葉の性質が変わるようで、腹片は少し形が変化して茎に圧着し、背片は小さく円くなり、すぐに落ちてしまいますが、立ち上がった茎の先端の作られたばかりの新しい葉にだけ背片も残っているのだと思います。 上の写真の黄色の矢印で示した所では、ちょうど這う茎から立ち上がる茎への境で、背片の形質もその中間を示し、小さく円くなっていますが、落ちずに残っているのではないでしょうか。
山田(1994)にも平凡社にも、この落ちた背片については書かれていませんが、無性生殖に使われるのだろうと思います。
上は立ち上がる茎を伸ばし始めた状態だと思います。 茎の先には、できたばかりの小さな葉を含めて数枚の葉が重なるようについています。 まもなく離れるであろう背片の葉縁付近の一部の細胞は長く伸びはじめています。 仮根に分化していくのでしょうか。
上は落ちた背片と思われるものです。
本種の葉身細胞などはこれまで何度も載せているので、今回は省きます。 なお、こちらには花被などに守られた若い胞子体(胚)などを、こちらには開裂した蒴などを載せています。
【参考文献】
山田 耕作:オカムラケビラゴケとヒメケビラゴケについて.日本蘚苔類学会会報6(4),1994.






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