この図鑑は、異なる拡大率の大きな写真に特徴があり、上でもそのことが紹介されています。 たしかに小さなコケの特徴を示すには、大きな写真が必要で、アマゾンのカスタマーレビューでも、拡大した写真に感動、苔の魅力が詰まっている、拡大写真で楽しめる、拡大されていてわかりやすい、などの感想が寄せられています(2019.8.17.現在)。
この本の出版に関して、著者としては次のようなことを考えていました。
最近のコケブームを反映して、様々なコケ関連本が出版され、図鑑もたくさん出版されていることもあり、この本では ① 図鑑としての機能 はもちろんですが、それに併せて、② 写真集的にコケの魅力を楽しんでもらうことと、③ 本全体を通してコケ植物の解説書としての機能を持たせたいと考えました。
本をパラパラと見ていただくと、②については理解していただけるでしょうし、最初に書いたように、一定の評価をいただいていると思います。 また、コケテラリウムも、見て楽しんでいただいたり自作の参考になることに加え、いろいろなコケの大きさを比較することにも役立ちます。
③については、少し読み込んでいただかないと理解していただけないと思いますが、種の解説に絡めてコケ植物の特性を紹介したり、コラムでは、コケ植物の組織、分布、生態、生殖について書いています。 また、ある程度コケについての知識が増えると、体系的な理解が必要となり、分類的な知識が求められます。
本書では、本の後ろに「五十音順さくいん」の他に「分類順さくいん」をつけています。 たったの2ページですが、このようなページを設けている本は少ないはずです。
このページは、ある程度コケについての知識を身につけた人には、積極的に使ってほしいと思います。 同じ科に分類されているコケには共通点があり、コケの理解に役立ちます。 また、科の配列は進化の道筋に沿って並べてあるので、種の解説と科の位置とを対比することで、コケの進化の道筋を読み解くヒントにもなります。 一例として胞子体の変化を見ていくと、スギゴケ科以下で柄のある胞子体となり(ミズゴケ科の胞子体には柄が無い)、胞子体のつく位置は、茎の頂から、ヒノキゴケ科やタチヒダゴケ科の移行段階を経て、腋生に変化していることがわかります。
ただこの「分類順さくいん」で少し残念だったのは、「科」のさらに上位段階である「目」を、行数の関係で入れられなかったことです。 「目」がわかれば、進化の過程がさらによくわかるでしょうし、「目」以上の関係は「コケ植物系統樹ポスター」で分かります。
そこで本書を購入していただいた方のアフターケアを兼ねて、本書に掲載されている科が何目になるのかの一覧表を下に載せておきます。
コケ植物の分類(目と「コケの国のふしぎ図鑑」掲載の科)
【ツノゴケ類】
ツノゴケ目ツノゴケ科
ツノゴケモドキ目
ツノゴケモドキ科
【苔類】
コマチゴケ目コマチゴケ科
ウスバゼニゴケ目
ウスバゼニゴケ科
ゼニゴケ目
ミカヅキゼニゴケ科
ゼニゴケ科
ジンガサゴケ科
ヤワラゼニゴケ科
ジャゴケ科
ウキゴケ科
ケゼニゴケ科
ミズゼニゴケ目
ミズゼニゴケ科
ウロコゼニゴケ目
マキノゴケ科
クモノスゴケ目
クモノスゴケ科
フタマタゴケ目
フタマタゴケ科
クラマゴケモドキ目
クラマゴケモドキ科
ヤスデゴケ科
クサリゴケ科
ツボミゴケ目
ムクムクゴケ科
ムチゴケ科
ウロコゴケ科
ハネゴケ科
ヤバネゴケ科
ヒシャクゴケ科
ツボミゴケ科
【蘚類】
ミズゴケ目ミズゴケ科
スギゴケ目
スギゴケ科
キセルゴケ目
キセルゴケ科
イクビゴケ目
イクビゴケ科
ヒョウタンゴケ目
ヒョウタンゴケ科
エビゴケ目
エビゴケ科
ギボウシゴケ目
ギボウシゴケ科
シッポゴケ目
ホウオウゴケ科
キンシゴケ科
ブルッフゴケ科
ヒナノハイゴケ科
ヒカリゴケ科
ヤスジゴケ科
シッポゴケ科
シラガゴケ科
センボンゴケ目
センボンゴケ科
オオツボゴケ目
オオツボゴケ科
ヒジキゴケ目
ヒジキゴケ科
タマゴケ目
タマゴケ科
マゴケ目
ハリガネゴケ科
チョウチンゴケ科
ヒノキゴケ目
ヒノキゴケ科
タチヒダゴケ目
タチヒダゴケ科
クジャクゴケ目
クジャクゴケ科
アブラゴケ目
ホソバツガゴケ科
アブラゴケ科
ハイゴケ目
コウヤノマンネングサ科
ヤナギゴケ科
ウスグロゴケ科
シノブゴケ科
アオギヌゴケ科
コゴメゴケ科
ハイゴケ科
イワダレゴケ科
ツヤゴケ科
コモチイトゴケ科
ナガハシゴケ科
ヒラゴケ科
キヌイトゴケ科
(それぞれの科にどのような種が属しているかは、「コケの国のふしぎ図鑑」をご覧ください。)
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