2019-11-29

コゴメタチヒダゴケ


 写真はコゴメタチヒダゴケ Orthotrichum amabile です。 これも笠井氏に教えていただいた場所にあったコケで、花崗岩の上にありました。
 なお、上記学名の和名は、平凡社の図鑑などでは、コゴメタチヒダゴケの学名は O. erbescens となっていますが、Orthotrichum(タチヒダゴケ属)の分類は再編成されており(Suzuki,2014)、主に高木の枝に見られるこの学名の種にはアカタチヒダゴケの和名が与えられています。
 ちなみに、両者は酷似しているようですが、一番顕著な違いである蒴歯の長さ(今回は蒴が未熟で蒴歯の観察はできませんでした)以外にも、蒴の基部の様子、葉身細胞の細胞壁の厚さなどでも見分けられそうです(詳細は上記の Suzuki,2014 をご覧ください)。


 よく見られるタチヒダゴケよりずっと小さく、葉の長さは1.5~2mmほどです。


 葉の幅は下部から上部まで、ほとんど変わりません。 タチヒダゴケの葉より明るく見えます。


 上は葉身細胞です。

 以下は蒴に関してです。


 手前の葉を取り除き、蒴柄が見えるようにしてみました。 帽の先端には数本の毛があります。


 上は蒴の断面です。 蒴は基部で急に狭くなって蒴柄に移行しています。 なお、 O. erbescens (旧和名コゴメタチヒダゴケ、現アカタチヒダゴケ)は蒴基部からに徐々に蒴柄に移行します。
 蒴歯が見えるかと淡い期待を持っていましたが、やはり若すぎたようです。


 平凡社の図鑑のタチヒダゴケ属の検索表は、蒴壁の気孔が沈生か表生かから始まります。 上は蒴の表面を撮影したものですが、写真の左に穴のようなものが見えます。 下の写真は上と同じ場所ですが、顕微鏡の調節ねじを操作してこの穴の下にピントを持ってくると・・・


 凹んだ下にピントを合わせると、気孔が見えます。 つまり本種の気孔は沈生です。
 ちなみに、2枚の写真を、色の濃さを調節して重ね合わせると、下のようになります。


(2019.11.21. 滋賀県高島市)

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