2019-11-01
タチヒラゴケ
蒴をつけた写真のコケ、ヒラゴケ科であることはすぐ分かりますが、調べてみるとタチヒラゴケ Homaliadelphus targionianus でした。
本種は平凡社の図鑑では「日本では石灰岩上に生える。」と書かれていますが、育っていたのは樹幹の地面から1.5mほどの所です。 保育社の図鑑では「日本では普通石灰岩上に生える。」と「普通」が入っていますから、稀には石灰岩以外の所でも育っているのでしょう。
平凡社の図鑑では、茎は葉を含めて幅2~3mm、蒴柄は長さ4~6mmとなっていますから、全体的に少し小さくなっています。
葉は扁平について密に重なっていますので、葉の基部付近は他の葉に隠れて表面からは見えません。 しかし上になっている葉を取り除き、隠れていた葉の基部を見ると、上の写真のように、葉の基部の後ろの縁が小舌片となり、耳状に内側に折れ曲がっています。 ヒラゴケ科でこのような小舌片を持つ葉は、本種の変種ヒメタチヒラゴケでも見られるのですが、もっと小さく、葉はほぼ円形とのことです。
上は1枚の葉です。 葉の細胞の形は、以下の4枚の写真に示すように、場所によって違っています。(倍率は4枚とも同じです。)
葉縁近くの細胞は小さく、方形~矩形です(上の写真)。
上は葉の中央付近の細胞で、楕円形です。
上は葉の基部近くで、細胞は菱形です。 下に小舌片が見えています。
上は小舌片の細胞です。
蒴はまだ帽をつけていて若かったのですが、蓋も取って蒴歯を蒴の内側から観察しました(上の写真)。 平凡社の図鑑には、「外蒴歯は披針形、内蒴歯は断片になり、ときに外蒴歯に付着する。」とあります。 上の写真でも、褐色みを帯びた丸い未熟な胞子と思われるものの他に、白っぽい断片化した内蒴歯と思われるものが写っています。
(2019.10.30. 奈良市春日野町)
◎ タチヒラゴケはこちらにも載せています。
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