2019-11-12

ニシノオオアカウキクサ?とアナベナ


 上はオオアカウキクサの仲間です。 在来のオオアカウキクサ Azolla japonica は国の絶滅危惧種に指定されていますが、外来種が数種入ってきています。 特に、アメリカオオアカウキクサ A. cristata は特定外来生物に指定されています。 なお、和名の「アカ」は寒くなると紅紫色に染まってくるからです。
 写真のものは、正確には胞子のうを見ないと同定できないのですが、以下の観察結果から、ラテンアメリカ原産のニシノオオアカウキクサ A. filiculoides ではないかと思います。


 拡大するとなかなかの美しさです。


 上は1枚の葉です。 葉の表面には突起があり、葉縁に近い細胞は葉緑体を持っていません。


 上は葉の断面です。


 葉の表面の突起は1細胞です(上の写真)。 特定外来生物に指定されているアメリカオオアカウキクサの突起は2細胞以上ですが、アイオオアカウキクサと呼ばれる本種との雑種をつくり、これは1細胞の突起に2細胞の突起が混ざります。


 アカウキクサの仲間はシアノバクテリアの一種であるアナベナ(Anabaena)と共生しています。 アナベナはオオアカウキクサの葉のあちこちの空洞に入っているのですが、葉の切片をつくる時に空洞をつぶしてしまったのか、観察し易い所にありました。 上の写真の右側に写っている青緑色のものがアナベナです。
 アナベナは細胞が一列につながった群体を形成していますが、原核生物ですので、細胞の大きさは、ほぼ葉緑体と同じです。 群体の所々に、異形細胞と呼ばれる少し大きな細胞が見られますが、この細胞は窒素同化に特化しています。 つまりアナベナは空気中の窒素をアンモニアに変える事ができます。 このため、このアナベナを持つアカウキクサの仲間は、田畑に漉き込んで緑肥として利用できる反面、栄養分の少ない水でもよく増える事ができるため、水面を覆い尽くし、水中に光が届かなくなったり水温を低下させることで水田や生態系に悪影響を及ぼすこともあります。


 上はもう少し拡大率を上げたアナベナです。

(2019.11.8. 京都市左京区)

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