2019-11-24

カゲロウゴケ


 上はカゲロウゴケ Ephemerum spinulosum です。 写真の右下には蒴をつけている植物体も数個写っています。
 笠井氏に案内していただいて滋賀県高島市の田で撮影できたコケですが、とても小さく、たとえ大きな群落があったとしても、探し方が分からない段階では、いくら探しても見過ごしてしまうことでしょう。


 蒴をつけた植物体を1つ取り出して撮ってみました(上の写真)。 写真の右上は蒴についていた帽です。 蒴柄はとても短く、蒴はほぼ球形です。


 上は帽が取れかかっている蒴をつけた植物体です。 いくら小さいコケといっても透過光で撮ると黒ツブレしている部分が多いのですが、全体の大きさを示すためにスケールをつけて載せておきます。


 上は1枚の葉で、縁には明瞭な小歯があります。 深度合成していますので、フラットな写真になり、中肋は判別できませんが・・・


 中肋は盛り上がった細胞の列として、葉の全長にあります。


 上は土を十分落としきれていない状態の植物体の基部近くで、右下には葉が写っていますが、写真の中央付近に写っているのは原糸体です。 カゲロウゴケは原糸体の生育が旺盛で、配偶体は土上を密に覆う原糸体のマットに基部が埋まるようにして作られます。
 今回観察した蒴も未熟でしたが、多くの場合、蒴は秋から冬にかけて見られ、短期間のうちに胞子を成熟させ、植物体は原糸体と共に消滅するようです。 属名と同じ語源と思われる英語の ephemeral は「つかの間の」という意味ですが、和名もはかない一生を終える昆虫のカゲロウにちなんでつけられています(下記参考文献)。


 上は原糸体です。 原糸体だけを見て種名を同定するのは無理ですが、枝分かれの様子や採集した場所から、たぶんカゲロウゴケの原糸体でしょう。

(2019.11.21. 滋賀県高島市)

(参考文献)
岩月善之助:Ephemerum(カゲロウゴケ属・新称)は日本にも産する.日本蘚苔類学会会報2(4),1978.


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