2022-12-22

ヒメフタマタゴケ

 

 写真はヒメフタマタゴケ Metzgeria decipiens だと思います。 小枝についていたのを腹面から撮っています。 よく見るヤマトフタマタゴケより明るい印象を受けました。
 以下の太字の部分は同定時に重視した本種の特徴です。

 葉状体の縁や中肋部の腹面には多くの毛が見られ、腹面全体にも毛が散生しています。

 毛のある膨らみは胞子体を保護しているシュートカリプトラです(詳しくはヤマトフタマタゴケのこちらを見てください)。 上の写真では造精器のある小さな膨らみのようなものも見えますが、本種は雌雄異株で、これらの膨らみは虫の営みに関するものか何かだと思います。

 上の写真のように、一部の葉状体の縁には無性芽がついていました。 ヤマトフタマタゴケがこのような無性芽をつけることはありません。
 葉状体の縁の毛も写っていますが、毛は単生です。

 中肋部の腹面には毛が左右2列に並んでいます(上の写真)。 この毛は腹鱗片に相当する粘液毛です(フタマタゴケ科の特徴)。
 同じように葉状体の縁に無性芽をつけるコモチフタマタゴケの葉状体の先端は細くなりますが、本種の葉状体の先端は円頭です。
 翼部の幅も同定の1要素です。 上の写真で、葉状体のいちばん幅の狭い所の翼部は8細胞幅です。

 葉状体の幅は一定ではなく、上は本種の葉状体の最も幅が広いように見えた所です。 上の写真の翼部は約18細胞幅です。 平凡社では本種の翼部は8~12細胞幅となっています。

 上は葉状体の断面で、中肋部から急に1細胞層の翼部になっています(フタマタゴケ科の特徴)。 中肋部は表皮細胞が大きく、内部細胞は小さく厚壁です(フタマタゴケ属の特徴)。 本種の中肋部腹面の表皮細胞は2細胞幅です。

(2022.12.6. 大分県 深耶馬渓うつくし谷)

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