2019-06-17

ミヤマシッポゴケ



 上はミヤマシッポゴケ Dicranoloma cylindrothecium でしょう。 樹幹に育っていました。 周囲には地衣類も多く、葉は開いているのですが、とても乾いている感じがして、触るとゴワゴワしていました。


 拡大すると、ほとんど全ての葉の上部が無くなっています。 上部が残っているように見える葉でも、顕微鏡で確認すると、ほとんどの葉の先端は失われていました。 時期や環境にもよるのかもしれませんが、かなり折れ易い葉のようです。
 葉腋には褐色の仮根が見えています。


 葉先がほとんど欠けていない葉の長さは7mmほどあります。


 上は葉の基部付近です。 中肋は細く、葉の下部の幅の最も広い所では、中肋の幅は葉の幅の1/15以下です。 葉身細胞は細い矩形で、翼細胞は方形です。


 翼部と中肋との間には、壁にくびれのある細長い細胞が並びます(上の写真)。


 上は葉の上部を背面から見た顕微鏡写真で、中肋にピントを合わせています。 葉縁の上半には小歯がありますが、中肋にも歯があります。


 上は葉の上部と下部の横断面です。 葉は1層の細胞からなっていますが、注目したいのは中肋の断面で・・・


 上は(葉の上部の)中肋付近の断面を偏光で撮影したものです。 中肋は一様な細胞からなっていて、ステライドははっきりしません。

(2019.5.25. 京都府 芦生研究林

◎ ミヤマシッポゴケと思われるコケはこちらにも載せていますが、色も雰囲気も異なります。 生育環境による違いなのか、別種なのか・・・


2019-06-16

オニヒツジゴケ?


 土の斜面に、上の写真のような光沢のある大型のコケがありました。 ちなみに、上の写真の下方に写っているのはマルバハネゴケです。


 茎は長く這っています。


 上は枝葉で、先が長く尖り、中肋は1本で、葉の中部以上に達しています。 上の写真では葉の基部と葉先が褐色がかっていますが、これは葉が大きいために顕微鏡の中心部と周辺部で光源の色が違っているためで、ほんとうは葉の中央部と同じ色です。


 翼細胞はあまり分化していません。 以上のことから、アオギヌゴケ科のコケのようです。


 上は葉の背面から見た中肋の先端部で、先端は1個の歯で終わっています。


 上は茎の断面です。 下は同じ場所を、細胞壁を明瞭にするために偏光で撮ったものです。


 茎には中心束があります。 また、3枚目の写真には、葉縁の細かい歯が写っており、4枚目の写真からは、葉基部はほとんど下延していないことが分かります。 以上の観察から、このコケはツルハシゴケ属( Eurhynchium )のように思います。
 以下、平凡社の図鑑のこの属の検索表で種の同定にチャレンジですが、平凡社の図鑑のツルハシゴケ属の解説には、「変異が大きく同定はむずかしい。」と書かれています。


 枝葉は丸くついて扁平にはなっていません。


 植物体は大きく、茎葉は2mm前後の長さです。 また、3枚目の写真のように、枝葉は披針形~卵状披針形で、先は鋭頭~細く長く尖っています。
 以上の特徴から、このコケは、オニヒツジゴケ E. eustegium または キノクニツルハシゴケ E. squarrifolium のようです。 平凡社の検索表によれば、前者は枝葉が茎葉より大きく、後者は枝葉が茎葉より小さいとなっています。


 枝葉の大きさはいろいろですが、茎葉より大きな枝葉があります。


 上は葉の中央付近の葉身細胞です。 長さはキノクニツルハシゴケに近いのですが、幅からするとオニヒツジゴケのようです。
 以上の観察結果からはどちらか迷うところですが、キノクニツルハシゴケの可能性の高いコケをこちらに載せていて、それとは形態的にいろいろ異なる点がありますので、オニヒツジゴケではないかと思いますが、ツルハシゴケ属である確信も無いので、とりあえず「?」付きのタイトルにしておきます。

(2019.6.12. 神戸市北区 道場)

2019-06-10

ゴボウゾウムシ

 ノアザミにゴボウゾウムシ Larinus latissimus シがいました(上の写真)。
 ゾウムシとは、狭義にはゾウムシ科やオサゾウムシ科などに分類され、象の鼻のように、口先(吻)が長く伸びた甲虫です。 この長く伸びた口吻で植物組織を穿孔し、そこに産卵します。 幼虫・成虫共に植物食です。 種類はたいへん多いのですが、小さな種類が多く、注意しないと見落としてしまいます。 しかし一方で、少し拡大してみると、そのユニークな形態に惹かれる人も多いようです。
 でも、なぜノアザミに“ゴボウ”ゾウムシがいたのでしょうか。
 じつは、ゴボウ Arctium lappa はアザミの仲間( Cirsium属 )と同じキク科に属し、花の様子も似ています。 畑でゴボウを作っていても、花の咲く頃までゴボウを収穫せずに置いておくことはまず無いでしょうから、花を見た人は少ないでしょう。 ちょうどゴボウの花を見つけましたので、下に載せておきます。


2019-06-07

サワフタギ


 サワフタギ(別名ルリミノウシコロシ) Symplocos sawafutagi はハイノキ科の落葉低木です。 写真は京都大学の芦生研究林内で咲いていたもので、まだツボミが多く咲きはじめで、傷んだ花が無くて美しい花を楽しめました。
 和名は、湿り気のある所によく育つので、沢を覆うところからでしょう。 別名の「ルリミ」は瑠璃色の美しい果実をつけるからで(こちら)、「ウシコロシ」は枝をウシの鼻輪に使用したためだと言われています。


 今年伸びた枝(=葉がついている)の先に円錐花序をつけています。


 花冠は5深裂していて、ほとんど離弁花のようです。オシベは花冠より長くて多数あり、基部は融合しています。


 上の写真の中央の葉は裏を見ています。 葉の縁には先が内曲した細鋸歯があります。 葉先は急に短く尖り、基部はくさび状に細くなっています。 葉脈は葉の裏面に膨れ出て毛が生えています。 葉の表面にもまばらに圧毛があってザラザラしています。


 上はタマバエの1種が作った虫えい、サワフタギツボミフクレフシです。 寄生されているツボミはあちこちに見られました。



 上はサワフタギやタンナサワフタギを食餌植物とするシロシタホタルガの幼虫です。 とまっている成虫を見ると、ホタルガに似た白い帯(位置はホタルガより少し翅の中央より)が目立ちますが、名前のとおり、後翅は白色です。

(2019.5.26. 芦生研究林)

2019-05-22

エゾキンモウゴケ


 写真はエゾキンモウゴケ Ulota japonica のようです。 カラフトキンモウゴケにそっくりですが、帽の毛は少ないようです。 いただいたコケで、樹幹についていたらしいのですが、産地を聞くのを忘れていました。
 写真は4月上旬の状態です。 撮影は済ませていたのですが、いろいろと忙しく、ブログに上げるために整理するのが今日になってしまいました。



 上は乾いた状態で、カラフトキンモウゴケなら葉が著しく捲縮しますが、ゆるく巻いているだけです。


 葉の基部はカラフトキンモウゴケのように広くはなりません(上の写真)。


 葉身細胞は丸みを帯びて厚壁で、パピラがあります(上の写真)。

◎ エゾキンモウゴケはこちらにも載せています。