2014-07-15

アオギリ(花から種子へ)

 アオギリはアオイ科(従来の分類ではアオギリ科)の落葉高木です。 和名は、太くなってもいつまでも幹が緑のままであるところからでしょう。 奄美大島以南に自生する木で、よく街路樹などに植えられています。

アオギリの花は、大阪では7月上旬に見られます。 上は長居植物園で撮ったものです。

アオギリは雌雄異花で、1本の木に雄花と雌花が混じって咲きます(上の写真)。

上が雄花です。 ガクは5裂しています。 アオギリ属の花には花弁はありません。 花糸は合生し、その先に葯が球状に集まってついています。

上が雌花です。 ガクが5裂し、裂片が反曲しているのは雄花と変わりません。 メシベは長く伸びた柄の先に1つつきます。 メシベの子房の周囲には、退化したオシベの葯が張り付いています。
 花も変わっていますが、メシベの子房はこの後、とてもおもしろい変化を見せてくれます。

花が古くなると、ガクの内側は赤っぽい色になります。 これは雄花でも同じです。 注目したいのは雌花の子房の部分です。 上の写真では、子房に溝ができかかっています。

これから後の説明が容易になるように、ここで「心皮」について書いておきます。
 花は複数の葉が生殖用に変化したもので、メシベも、植物の種類によって枚数は異なりますが、1~数枚の葉が変化して作られていると考えられます。 このメシベを作っている葉を「心皮」といいます。
 7月中下旬になると、上の写真のような状態が見られます。 ガクは縮れてきています。 子房だった部分は溝ができて分離しようとしています。 つまり花の時には融合していた心皮が独立しようとしています。 そして・・・

上も7月中下旬の状態です。 上の花では心皮が完全に分離しています。 下方には遅れて咲いた雄花があります。
 アオギリの花の心皮は5枚で形成されていますが、受粉していない心皮は生長しません。

上は7月31日(2012年)に撮ったものです。 花の時期には5mmほどの長さしかなかった子房は、それぞれの心皮に分かれて成長し、写真では7cmほどになっています。 この心皮の断面を見たのが下の写真です。

心皮の内側では種子が大きくなっています。 心皮は葉が変化したものだと上に書きましたが、上の写真は、1枚の葉を筒状に丸めて縁をくっつけ、その葉の縁に種子がくっついている姿だと見ることができます。

7月下旬から8月になると、生長した心皮は、やがてその先端から開出しはじめます(上の写真)。

開ききった心皮は舟状となります(上の写真)。 種子は縁にくっつけたままです。

上は8月下旬に撮ったものですが、種子も完成に近づき、全体が褐色になってきています。
 秋が深まると、この舟状になった心皮は、種子をつけたまま地面に落ち、風が吹けば地上を転げ、種子を遠くに運びます。
 アオギリでは、種子散布のために、心皮が元の葉に近い姿に戻る植物だと言えるでしょう。

 ところで、アオギリの漢名は梧桐。 中国の想像の鳥である鳳凰は、この木にしか止まらないと言われています。 鳳凰の本源は、干ばつに悩む古代の華北の人たちに雨の恩恵をもたらす台風であると言われています。 梧桐は、台風が近づくとその大きな葉をゆすり、降雨を予告する霊能を持った木であったのでしょうか。
 中国ではこのよく知られた梧桐について、昔から「梧桐一葉落つ」という言葉を、ささいな現象から物事の今後を予想する意味で用いてきました。 ところが日本では、坪内逍遙の戯曲「桐一葉」のように、梧桐がいつのまにか全く違う植物の桐(キリ)に変わってしまいました。