2020-06-14

キリの葉の皿状器官など


 上はキリ Paulownia tomentosa の花です。 上の写真の葉は広がり始めたばかりでまだ小さいのですが、大きな葉を広げて盛んに光合成を行うために生長が速く、軽く狂いの少ない良質の材がとれることで知られています。
 一般に生長の速い木の葉には、食害を防ぐ物質が少ないように思います。 そのキリで食害を防ぐおもしろいしくみをみつけました。


 上は葉身の葉柄に近い部分を斜め上から見ています。 深皿状のものが写っていますが、「皿状器官」と呼ばれているもので、液体が盛られているものも、空の皿状器官も見られます。 大きさは大きいもので皿の直径が 0.4mm ほどです。
 下は真上から見た皿状器官です。


 キリの葉の表面にこんなものがあることはアリが教えてくれました。 キリの葉のあちこちでクロヤマアリがうろうろしています。 しばらくみていると、立ち止まって何かをしています。 その部分をよく見て見つけたのが皿状器官でした(下の写真)。


 皿状器官は、キリのどの葉にもあり、特に葉身の基部に多いのですが、少数は葉面全体に散在しているようです。
 皿状器官については、東京工業大学・辛島研究室のHP(こちら)に解説されています。

 強い顎やギ酸などを持つアリの集団は、他の昆虫にとっては恐ろしい存在です。 葉を食害されたり吸汁されたりすることを防ぐボディガードとしてアリを利用する植物はいろいろあります。 葉に蜜腺を持つ植物も少なくありません(例えばナタマメなどのマメ科、カキなど、このブログでもあちこちに載せています)。 これらの植物はアリに餌を用意することによって、アリに餌のある葉を守ってもらおうとしています。 キリの皿状器官も、アリを葉に留まらせるための餌のようで、上記辛島研究室のHPによれば、糖を含む液体が皿状器官から分泌されるようです。
 このHPによれば、キリは皿状器官以外にも、腺毛や樹枝状毛でも防衛に努めているようです。 腺毛は粘性の高い液体で、樹枝状毛は絡まることで、植物に害を与える虫たちの活動を妨害しているのでしょう。 2~3枚目の写真には葉脈の上に生えている樹枝状毛が写っていますし、4枚目の写真にはアリの後ろの葉縁に腺毛が写っています。


 上は皿状器官に来ていたスズキクサカゲロウです。 クサカゲロウの仲間の成虫は花粉やアブラムシの甘露を主食としています。 ボディガードのアリを呼ぶためにキリが準備した皿状器官の糖を掠め取っているのでしょう。

(1枚目の写真は4月24日に、その他の写真は5月24日に、いずれも大阪城公園で撮影しています。)

※ 上は、Part1の 2014.6.2.の記事を、一部修正のうえ、こちらに引っ越しさせたものです。