ジャゴケは胞子が完成すると、胞子をできるだけ遠くへ飛ばすためでしょうか、雌器托を急に長く伸ばし、胞子を散布します。 そろそろあちこちで長く伸びた雌器托(こちら)を見ることができるでしょう。
上は5日前に高槻市で撮った、まだ雌器托の柄が伸びきっていないジャゴケ(オオジャゴケかな?)です。 柄を切るには適した時期だと思い、断面を作ってみました。
上がその雌器托柄の断面です。 「C」の字が肥厚して中央に孔が空いたように見えますが、この孔が外部とつながっていて外からは溝のように見える所は、実際には腹面(=地面側)になります。 下は上の一部の拡大です。
表皮は孔の縁につながっています。 この孔には仮根が詰まっていたはずです。 孔の中を上下に走る仮根は、薄い断面を作る過程で短い断片となり、抜け落ちてしまったようです。 なぜそんなことが言えるかというと・・・
上はジャゴケの葉状体を腹面から撮っていますが、分かり易くするため、仮根の束を少し写真の下方へ引き下ろしています。 仮根束の一部が雌器托の柄の中へと続いています。
下は上と同じ試料ですが、雌器托の柄の断面を正面から見ています。
「孔」は仮根の束で埋められているのが分かります。
ジャゴケの精細胞はできるだけ広く飛散するためか、時期になれば雄器床から15~20cmほどの高さにまで噴出されるそうですが(見たいものです)、雌株の上またはその近くに落ちた精細胞は、上記の仮根束の毛管現象により、雌器托の傘の裏にある造卵器のすぐ近くにまで運ばれるのでしょう。
もちろん精細胞は長く伸びた雌器托の柄の中を運ばれるわけではありません。 もっと早くに受精は完了しているでしょう。 上で書いたのは、長く伸びた雌器托の柄でも、精細胞が運ばれる道筋を確認できるということです。
なお、このような外部から見える溝につながる仮根束の通る孔は、ゼニゴケ科では2つですが(こちら)、ジャゴケ科ではこれまで見てきたように1つです。
上は雌器托の傘の先端近くの断面です。 胞子体の断面がたくさん見えていますが、白く見えているのが仮根束で、仮根束はここまで続いています。
◎ この胞子体の中にあった胞子と弾糸はこちらに載せています。
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