2022-08-06

キツネゴケ(雌株)

 上の写真のコケ、判断しかねるところがあって、SNS上で質問し、観察しなおした結果は、キツネゴケ Rigodiadelphus  robustus だったようです。

 本種は高地の樹上に育つコケで、今回は、秋田県・鳥海山の5合目、標高 1,150m付近の比較的新しい倒木上で育っていました(上の写真)。

 分枝は不規則で、蒴は長卵形で直立しています。 当初、上の写真の長く伸びているのが茎で、そこから出ている短いものが枝だと思っていました。
 平凡社の図鑑には、「茎には小さな狭三角形の毛葉があり,(以下 略)」と書かれています。 ところが、いくら探しても毛葉がみつかりません。
 頭を冷やして、本種は大形のコケですし、上の写真全体が枝ではないかと考え、もっと太い茎らしいところを探すと・・・。

 上の写真の赤い円で囲った所が茎の毛様だと思います。 上の写真にはスケールをつけていませんが、右端に茶色くなった葉が写っていますので、おおよその大きさは分かると思います。

 上は湿った状態で、上記内容からして、写っている葉は全て枝葉でしょう。 枝葉の長さは2~3mmです。

 乾いた状態でも葉は縮れず、茎や枝に接します(上の写真)。

 枝葉は披針形で、先端は毛状に細く尖っています(上の写真)。 中肋は太いままで葉先近くまで伸びていますが、葉先には達していません。 葉縁の中部は狭く反曲する傾向にあるようです。 上の写真で翼部は少し色濃く写っていますが、葉縁に沿ってかなり上まで上がってきています。
 上の写真の葉では縦皺ははっきりしませんが・・・

 上のように下部に縦皺のみられる葉も多くありました。

 葉の枝についている様子を観察すると、基部は狭く茎に下延しています(上の写真)。

 翼部の細胞は短く方形、厚壁です(上の写真)。

 葉身細胞は狭六角形~線形で、長さは 15~50μmでした。 細胞壁の厚さは一定ではなく、所々にくびれも見られます。

 上は葉の基部近くの中肋寄りの細胞です。 長さは長くなり、細胞壁のくびれが多くなっています。

 上は蒴歯を蒴の内側から撮っています。 ウスグロゴケ科の蒴歯は2列で、この蒴歯を観察した時には1列しかないと思い、ウスグロゴケ科であることを疑ったのですが、調べなおして手前にピントを持ってくると、下の写真のような歯突起が無く基礎膜だけの内蒴歯が確認できました。 つまり上の写真は外蒴歯でしょう。
 外蒴歯の上部は密にパピラに覆われていて、下部でも少なくなるものの、パピラは存在します。

 上が一層の細胞からなる基礎膜のみの内蒴歯です。


 上は蒴の外側から撮っています。 口環はありません。

◎ 本種は雌雄異株です。 造精器をつけた雄株をこちらに載せています。


0 件のコメント: