下は 2007.7.29.に撮影し、Part1の当日に載せた記事です。 人気のあった記事ですが、最近どういうわけか Part1へのアクセスがとても時間がかかるので、こちらへ引っ越しさせました。(文は少し変更してあります。)
クマゼミでなくてもいいのですが、セミの抜け殻の割れ目から見えている白い糸状のものは何かという質問をいただきましたので、今日はセミの抜け殻について。
上の写真は真横から撮っていますので、脱皮時の割れ目がよく写っていませんが、背中側から白い糸の束のようなものが伸びていて、断ち切られたようになっています。 皆さんはこれは何だと思われますか?
これに答える前に、予備知識を2つ持っていてほしいと思います。
① 「体表」について
ご存知のように、昆虫は外骨格です。 つまり、私たちの体の内部にあるような骨はなく、体表が硬くなっていて体の形を保っています。 でもこれでは成長できませんから、硬くなった「体表」を脱ぎ捨てます。 これが「脱皮」ですね。 上の写真、透明な眼の表面も、きれいに脱いでいます。
今、簡単に「体表」と表現しましたが、案外難しいものです。 皆さんは自分の体の表面が分かりますか?
鼻の頭から出発して、口を開けて、指で体の表面を下になぞってみてください。 口の中の表面は体内ですか? 体表ですか?
胃カメラをのんだとき、胃カメラはどこに触れてどこを通るのでしょうか? 「体の表面」を突き破って「体内」に入っていくのでしょうか?
昆虫の体の体表はどこまででしょう?
② 昆虫の呼吸器について
昆虫はもちろん呼吸しています。 でも、肺はありません。 じっと見ていても胸が膨れたりへこんだりしていません。
じつは昆虫は“呼吸用の口”を、食事する口とは別に、体のあちこちにたくさん用意していて、「気門」(空気の出入り口、つまり門)と呼ばれています。 気門から取り込まれた空気は、気門から伸びる「気管」(空気の通る管)を通って、体の内部にまで運ばれ、体液とガス交換します。
昆虫のような小さな体では、酸素や二酸化炭素の拡散に任せておくだけで、十分です。 血液で体の隅々まで酸素を運ぼうとすれば、血液を流すエネルギーを消耗するだけです。
セミの抜け殻に見られる“白い糸”は何か、もうお分かりの人も多いと思いますが、確認していきましょう。
下の写真は、上の写真の抜け殻をハサミで左右に分け、内部を撮ったものです。 “白い糸”は、体のあちこちから、成虫の出た方向に向かって伸びています。
“白い糸”の“出発点”はどこでしょうか? このままでは分かりにくいのですが、“白い糸”は触れると、簡単にポキポキと折れてしまいます(上の写真も、あちこち折れかかっています)。
そこで、抜け殻を熱湯で柔かくして、“白い糸”をほぐして写したのが下の写真です。 “白い糸”の出発点が分かり易いように、抜け殻を逆さにし、腹側がよく写るようにしています。
“白い糸”のスタート位置は、気門のある場所です。 腹部を例に、もう一度、抜け殻の外側から見てみましょう(下の写真)。 白く写っているのが気門です(他にも光の反射で白くなっているところもありますが・・・)。
もうお分かりだと思います。 白い糸は、気管の内側の「表面」です。 セミは気管という管の内側の表面まで、きれいに脱皮しているのです。
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