2022-08-22

タマガヤツリとヒゲナガヤチバエの関係は?

 

 タマガヤツリ Cyperus difforis は、全体が柔らかい湿地に生えるカヤツリグサ科の1年草です。 花茎の先端には3枚ほどの長い苞葉があり、そこに数個の花序がつきます。

 タマガヤツリの名前は、小穂が玉のような形に集まっているからです。 花序には数cmほどの柄があるものや、ほとんど柄の無いものもあります。

 小穂は咲き始めは淡緑色です、種子が熟すにしたがって暗紫褐色を帯びてきます。 上の写真では種子の熟したものから順に落ちはじめています。

 このタマガヤツリにヒゲナガヤチバエ Sepedon aenescens がいました。

 上の写真では小穂に邪魔されて口吻の全体がはっきり見えていませんが、太い口吻を伸ばしていました。 かなり小穂に執着している様子でしたので、何かを食べているのでしょう。

 写真を撮っていて、誤って飛ばれてしまったのですが、なんと私の手に着地し、口吻を伸ばしていました(上の写真)。 そっとタマガヤツリに乗り移らせて、写真撮影を継続。 そんなに飛翔力が無いのか、タマガヤツリが気に入っているのか、とにかくカメラを近づけても、全く平気です。



 ヒゲナガヤチバエはヤチバエ科に分類されていています。 「ヤチ」とは「谷地」で、ヤチバエ科の幼虫は貝類を餌としています。 ヒゲナガヤチバエの幼虫もヒメモノアラガイなどの淡水産巻貝を食べているようで、成虫も水辺からそんなには離れないようです。
 永冨昭・櫛下町鉦敏「ヒゲナガヤチバエの生活史」(昆蟲33(1)1965)によれば、成虫は貝の死体やアリマキの分泌物などをなめて餌としているとのことですが、今回はタマガヤツリの花序に口吻を伸ばしていました。
 植物が分泌する蜜は昆虫共通のエネルギー源になります。 しかしタマガヤツリは風媒花ですから、蜜は期待できないはずです。 また、タマガヤツリのあちこちにアリマキがいたとは思えません。 いったい何を食べているのでしょうか。 餌になりそうなものといえば、花粉や未熟な種子の液状の胚乳しか思いつきません。 ヒゲナガヤチバエはそんなものも餌にするのでしょうか。

(2013.8.23. 長居植物園)

※ 冬に撮った体色の異なるヒゲナガヤチバエはこちらに載せています。

 ※ 上は Part1の 2013.8.25-26に載せていた記事を、まとめなおしたものです。


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