数十年前と現在とでは、時間や空間といったものの本質に対する理解は大きく変わっています。 前に記事にした『なぜ重力は存在するのか』ではこれらの最新の発展については軽く触れられていただけですが、最近耳にすることも多くなったマルチバース(多元宇宙論)について、私の聞きかじりの知識を整理する意味で、まとめておきたいと思います。
現在の物理学では、電子などの極小の物質についての研究や応用は量子力学で扱い、量子力学の効果がほとんど無視できるマクロの世界は一般相対性理論で扱われています。 現実問題として量子力学と一般相対性理論(重力も扱える)が同時に重要になってくる場面はほとんどありません。 しかし同じ自然界で量子力学と重力が同時に働いているのも事実で、量子力学と重力とを統合する何らかの理論が存在しているはずです。
量子力学と重力とを統合できる可能性のある理論として最有力候補とされているのが、1970年代に提唱された「超弦理論(超ひも理論)」です(『なぜ重力は存在するのか』より)。
超弦理論からはさまざまな新しい概念が導かれているのですが、その1つがマルチバースです。 マルチバースでは、我々の宇宙とは異なる宇宙がとてもたくさんあり、我々の宇宙はそのうちの1つにすぎないとされています。 我々の宇宙から他の宇宙の内部を観察することは理論的に不可能です。
超弦理論から導かれる「我々の宇宙と異なる宇宙」では、素粒子の性質が我々の宇宙とは全く異なっています。 我々の宇宙の素粒子は、互いに引きあって集まり原子を作ることができ、さまざまな原子は寄り集まって多様な分子を形成し、多様な分子が組み合わさって生命の誕生にまで至っています。 このような素粒子を持つ我々の宇宙は、都合よすぎる不思議な宇宙とも言えます。 そんな都合よすぎる不思議な宇宙は神の存在無しには考えられないとする人もいます。 この点について、もう少し考えてみます。
地球は、太陽からの距離が液体の水が存在できる距離であるなど、さまざまな条件が生命の進化にとても都合よくできた星で、このような都合の良すぎに不思議さを感じるかもしれません。 しかし天体の観測で多くの恒星にも多くの惑星があることが分かり、それぞれの惑星は少しずつ異なる特徴があります。 この特徴の違いに基づいて配列すると、連続的に並ぶでしょう。 その連続のうちのたまたまの1点が地球だとすれば、不思議さは無くなります。 宇宙についても同じことが言えて、少しずつ異なるとてもたくさんの宇宙があり、我々の宇宙はそのうちの1つだと考えると、不思議ではなくなります。
2025-02-06
マルチバース
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