2月上旬のオオジャゴケ |
美味しくない理由として、食害を防ぐためだとよく言われている。 小さな体で生長もゆっくりしているコケは、体内に美味しくない物質を蓄えることで身を守っているというわけだ。 しかしこの説は、進化的に考えると矛盾しているように思う。
陸上の植物は緑藻の一種から進化した。 コケはこの最初の陸上植物に近いものとされているが、その頃の陸上には動物はいなかった。 消費者である動物は、生産者である植物が存在しないと存在できない。
食べる者がいないのに食害を防ぐ必要は無い。 物質を体内で合成するにはそれなりのエネルギーが必要となる。 エネルギーを浪費して無駄な物質を作る生物が生存競争で生き残れるだろうか。
植物が最初に陸上に出現したのは約5億年前と考えられるが、陸上に適した生き方をいろいろ模索する中で、比較的早期に蘚苔類と維管束植物に分かれたと考えられている。 それから現在に至るまで、蘚苔類と維管束植物は、それぞれ独自の進化の道筋をたどった。
生産者が行う生産は光合成による。 光合成に必要なものは二酸化炭素と水と光である。 大きな流れとして、維管束植物は維管束を通して水を上まで持ち上げることが可能になり、他の植物より上に葉を広げて有利に光合成をしようと、体を大きくする方向に進化した。
生産者である植物が陸上に出現した後に上陸した消費者は何を餌とするだろうか。 餌とするものは、たくさんあって容易に得られるものの方が良い。 どんどん食べてどんどん生長し、どんどん子孫を残す種が栄える。 そして現在の地球上で最もたくさんの葉を茂らせている植物は被子植物である。
進化の過程で、昆虫などはにおいや触感などで食べる植物が遺伝的にプログラミングされた。 そして我々は「味覚」という食べ物を選択する“道具”を手に入れた。 たくさん食べるには、食べる意欲も必要となる。 身の回りにたくさんあり、栄養となる植物に「美味しい」という感覚を持つことができるように進化した動物は生存上有利になるだろう。
蘚苔類も独自の進化の道筋で、被子植物とは異なった物質を持つようになった。 その物質とは、陸上の強い紫外線の害を防ぐ物質、寒期に細胞内に氷の結晶ができないようにする物質、乾燥を防ぐ物質、光合成産物を貯蔵する役割をする物質など、蘚苔類の生活に必要な物質である。 そして、これらの物質は我々に「美味しい」という感覚を生じさせる物質とは異なっていた、ただそれだけのことではないだろうか。
(注意) 上の文章は何の科学的根拠もありません。 単なる思考の遊びです。
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