2021-01-18

鳥媒花・コウモリ媒花 -カエンボクを中心に-

 昨日(17日)、コケ展の撤去作業に「咲くやこの花館」に行ったついでに温室内をひとまわり。カエンボクがみごとに咲いていました。

 カエンボク Spathodea campanulata は西アフリカ原産の常緑高木で、ジャカランダ、ホウオウボクとあわせ世界三大花木と称され、世界中の熱帯域に街路樹や庭園木などとして、よく植栽もされています。 咲くやこの花館のカエンボクは若木で、まだ 1.5mほどの高さですが、上向きに咲く花を見るのには適した高さでした。

 このような大きな赤い花は、よく見る花としてはハイビスカスがありますが、日本に自生している植物には見当たりません。 このことについて、すこし整理してみました。
 人の目にも目立つ花は、本来は花粉媒介者を呼ぶために咲きます。 日本における代表的な花粉媒介者は昆虫ですが、昆虫の眼は赤い色が見えません。 そのような理由で、日本の自生植物の多くは昆虫に適したサイズの赤色以外の色の花を咲かせます。
 日本自生の赤い花で思い浮かぶのはヤブツバキですが、この花は鳥媒花です。 鳥の硬い嘴が当たっても大丈夫なようにガクはたいへん丈夫にできています。

 上に書いた赤い大きな花を咲かせるハイビスカスはどうでしょうか。
 ハイビスカス(Hibiscus)というのは属名で、多くの種があります。 園芸店などでもよく販売されているハイビスカスはブッソウゲ Hibiscus rosa-sinensis を品種改良したものが多いようで、原種の原産地は不明のようです。

 上は咲くやこの花館で撮った Hibiscus clay (ハイビスカス・クレイ)です。 ハワイのカウアイ島に自生しているハイビスカスですが、絶滅危惧種になっています。
 注目したいのは花の基部で、大きなガク筒ですっぽり保護されています。 やはり鳥媒花なのでしょう。 なお、その下に少し見えているちいさなガク片のようなものは苞です。

 上は Hibiscus insularis(ヒビスクス・インスラリス)です。 やはり咲くやこの花館での撮影です。 オーストラリアの原産地であったノーフォーク島では持ち込まれた家畜によって絶滅し、フィリップ島にわずかに残るだけで、世界で最も貴重な植物のひとつとされています。
 花の基部は、やはり頑丈そうなガク筒によって保護されています。 このようにしてみると、ハイビスカス属の多くも鳥媒花のようです。

 話をカエンボクに戻します。

 上はカエンボクの1つの花に注目し、斜め前から撮った写真です。 花の基部に見える褐色で上向きに反り返った細長いものがガクで、花時にはガクの背面が基部まで割れ、そこから“垂れ下がった腹”を持ったような花が出ています。 この“垂れ下がった腹”には、雨や露に由来する水が溜まると思われます。 ガクに注目すると、ツボミの時はがっちり内部を保護しているでしょうが、花時には鳥の硬い嘴に耐えるつくりになっているとは思えません。 解説板には「コウモリによる送粉に適しています。」と書かれていました(下の写真)。

 コウモリは暗い所を飛び回り虫を捕らえる種ばかりではありません。 暖かい所には昼行性のコウモリもたくさんいます。(こちらには西表島で撮ったヤエヤマオオコウモリの写真を載せています。) 昼行性のコウモリは果実食のものが多いのですが、花の蜜も求めるでしょうし、カエンボクの花に溜まった水はいい吸水源になるでしょう。 昼行性のコウモリは、赤い色も識別できるでしょうし、舌で舐めるコウモリに対しては堅いガクで花の基部を保護する必要は無いのでしょう。


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