写真はカギカズラ Uncaria rhynchophylla の横に伸びた枝です。 常緑性のアカネ科で、南方系のため本州では分布が限られていますが、11月7日に大阪府南部の犬鳴山で実施された堺植物同好会の観察会では、たくさん見られました。 谷を見下ろす場所から見ると、頂が本種に覆われた高木も多く見られ、林業では嫌がられる存在であることも納得できました。
本種は和名のように葉の付け根に鉤(かぎ)があり、幼植物では茎は立ち上がっていますが、次第にこの鉤を他のものに引っ掛けるようにして這い上がっていきます。 属名もuncus(鈎)に由来しますし、種小名も「くちばし形の葉の」という意味で、これも鉤のことを意味しているのでしょう。 なお、この鉤は生薬として鎮痙剤や鎮痛剤として用いられるようです。
ところで、この鉤のつき方には興味深い特徴があり、横に伸びた枝では鉤はいずれも下にでていますが、数に注目すると、上の写真の①では2つ、②では1つ、③では2つ、④では1つと、212121・・・を繰り返しています。 このようになる理由を考えてみました。
上は茎から新しい葉が出た所を斜め下から撮っています。 写真の①と③はAの葉の托葉で、②と④はBの葉の托葉でしょう。 鉤は葉の付け根のすぐ上から出ています。 位置からして、この鉤は葉腋から伸びた短枝が変化したものでしょう。
下は上の写真に続く茎頂側の葉の付け根付近です。 葉は上と同じようについているように見えますが・・・
Bの葉が茎のどこについているかに注目です。 Bの葉は写真の黄色い円で囲んだ所で茎についています。 つまりカギカズラの葉は十字対生についていて、つまり茎の左右に葉を広げた次の節では茎の上下に葉がつくのですが、この上下につく葉は光を効率的に受けるために葉柄が曲がって左右に葉を広げるようになるのだと考えられます。 上の写真の場合では、Aの托葉は①と②で、③と④がBの托葉です。 くどいようですが、①と③の間や②と④の間からは葉は出ていません。 鉤はBの葉腋から伸びた短枝が変化したものです。
鉤は葉の光合成の邪魔にならないように下に向かって伸びはじめるようです。 ですから、本来は上に向かって伸びるはずのAの葉の葉腋から伸びるはずの短枝(これも上に向かって伸びはじめるはず)は伸長を抑制されているのでしょう。 よく見ると伸長を抑制された短枝らしき小さな膨らみがAの葉腋にあります(上の写真の下向きの矢印)。
本種の花の時期は6~7月で、残念ながら花を見ることはできませんでしたが、果実はあちこちについていました。 上がその果実(蒴果)です。 花と比較すると、長く突き出た花柱は無くなり、子房が中にあるガク筒は膨らんでいますが、ガク裂片が残り、花時の姿を容易に思い描くことができます。
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